トヨタ自動車は2022年9月23日夜、ロシアのサンクトペテルブルク工場(以下、TMR-SP)での生産事業を終了すると発表した。トヨタは、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻後、3月4日よりTMR-SPでの工場稼働および完成車輸入事業を停止。これまで工場ラインの保全事業などを日々続けてきたが、ここにきて大きな決断をしたことになる。
文/ベストカーWeb編集部、画像/TOYOTA
■プーチン大統領も視察した重要拠点
「先が見通せないなか、私たちはステークホルダーを守っていくために、現地・現物・現実を見て、日々悩みながら、いろいろな判断・決断をしています。すべての方々から賛同を得られるとは思っていません。しかし、決断の時期は必ずきます。そんなとき、ステークホルダーの皆さまから賛同を得て、共感されることが私たちの決断・行動の一つの指標になっていくと思います。」
上記は2022年6月に開催された、トヨタ自動車株主総会での豊田章男社長の言葉。国産自動車メーカーのなかで、ロシア国内におけるもっとも巨大な事業所を持つトヨタは、ロシアによるウクライナ侵攻以降、その事業の動向が注目を集めていた。
今回、その「決断」が実施された。トヨタがロシアの乗用車生産事業から事実上撤退するということで、トヨタにとってはもちろん、ロシアの産業界、雇用、内需まで含めて大きな影響があり、より直接的にいえば「ロシア経済への打撃」となりそうだ。
トヨタのロシア・サンクトペテルブルク工場は2007年12月にラインオフ式を実施。総投資額は約50億ルーブル(当時の為替で約220億円)、敷地面積は約224ha(約68万坪)で従業員数は2007年時点で約600名、2016年には約1900名まで増えている。ロシア国内向けにカムリとRAV4を生産しており、年間10万台規模の生産能力を持つ。
ラインオフ式にはロシア政府からナビウリナ経済発展貿易大臣、サンクトペテルブルク市マトビエンコ知事らが出席、プーチン大統領も視察に訪れており、それだけロシア経済にとって重要な工業拠点だった。
今回、ロシア工場の生産事業終了にあたり、トヨタは以下の公式発言をリリース。
「トヨタは、世界中のステークホルダーの皆様に支えられながら、自動車事業を展開しています。「トヨタ」のブランドは創業以来、80年以上にわたって築き上げてきたものです。トヨタの価値観、トヨタの名を冠した製品は私たちが守り、次世代に継承し続けなくてはなりません。トヨタの価値観と製品は、われわれそのものであると考えています。
しかし、半年が経過しても生産再開の可能性は見い出せず、このままではトヨタが目指す製品づくりができないこと、また、現在の状況が続けば、ともにいいクルマづくりを目指してきたロシアの従業員に対して十分な支援ができなくなることから、ロシアでの生産活動を終了すること以外に選択肢がないと判断しました。」
ロシアによるウクライナ侵攻は、日々刻々と深刻さを増している。プーチン大統領は9月21日、ロシア国民に向けて30万人規模の「部分的な動員令」の発動を宣言した。
こうした情勢を受けて、トヨタは生産工場の閉鎖を決定。「(ロシア国内のトヨタ)従業員に対しては、最大限の支援を提供する計画です。モスクワの拠点は規模を縮小したうえで再編成し、ロシアにおいてトヨタ、レクサスにお乗りいただいているお客様に対し、安全と安心を確保するための体制を維持します。」ともコメントしている。
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