2023年9月21日、日本自動車工業会は、都内で記者向けに会見を実施。開催まで約1か月となったジャパンモビリティショー2023の概要などについて説明したが、その中で記者から日野自動車に関して質問が飛んだ(まあ…その質問をしたのは当サイトの記者だったわけだが…)。すると豊田章男自工会会長(トヨタ会長)および片山正則副会長(いすゞ社長)から、非常に踏み込んだ回答があったので、ここで整理して紹介します。
文/ベストカーWeb編集部、写真/日本自動車工業会、AdobeStock@JHVEPhoto
■「競争のための協調」が必要な日本の商用車の世界
日本自動車工業会は、豊田章男氏の会長就任以降「各社の競争と協調を戦略的に切り分けよう」という考えを進めてきた。「各メーカーそれぞれ競争して”いいクルマ”を作り続けるのはとても大切だが、そのいっぽうで、各メーカーが力を合わせて協調していく領域も推し進めて、日本自動車界全体の課題と難局を乗り越えてゆくことも大切だ、そしてこの協調領域については、自工会がやれることがたくさんある」という動きだ。
この動きは、たとえば直近でいうと2023年5月に発表された、トヨタ、スズキ、ダイハツの3社合同開発による「BEVシステムを搭載した商用軽バン電気自動車」の発表がある。広島G7サミットでも展示され、小型商用車部門の大きな変革を感じさせる動きだった。
CJPT(Commercial Japan Partnership Technologies株式会社)とは、まさに「競争も大事だけど争ってばかりいる場合じゃない、一緒に開発したほうがいいところもたくさんある!!」という思想を体現した組織で、いすゞ、日野、トヨタ、スズキ、ダイハツが商用車領域における共同事業を推し進めるための座組み。
自工会が旗を振って呼びかけ、CJPTがこの企画を立てなければ、3社合同で「日本のラストワンマイルを担う小型商用バンの電動化」を開発することは難しかっただろうし、業界全体の歩みが大きく遅れていたかもしれない。特に、軽バンの世界でのスズキとダイハツの共同開発は「大きな一歩」として日本自動車史に残るだろう。
そのいっぽうで、上述のCJPTはひとつ懸念も抱えていた。2021年3月の創設以来のメンバーである日野自動車が、2022年8月に判明した認証試験不正問題により除名処分を受けていることだ。
以下は、2022年8月、日野除名時のニュースリリースからの一部引用。
「CJPTは2021年4月の設立以降、CASEの普及を加速させることにより、カーボンニュートラル社会実現に貢献すると共に、ドライバーや作業者の皆様の負担を軽減するため、パートナーの皆様と現場での取り組みを進めてまいりました。今回、日野が起こした不正行為は、CJPTが共有する想いや目指す道とは相いれないものであり、このまま日野を含めて活動を進めることは、お客様や社会の皆様からの理解を得ることができないのではないかと、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)の豊田章男社長(当時)からも投げかけがあり、CJPT内での議論を経て、今回の結論にいたりました。」
上述のとおり、CJPTは、日本における「これからの商用車領域での協調」の象徴的な存在である。そこから日野が外されたわけだ。
たしかに日野自動車がおこした認証不正問題は大型トラック業界を激震させ、業界をあげての大問題として取りざたされた。なにしろ調査によると、日野によるエンジン不正は2003年(平成15年)から起きており、対象車種は約56万台、エンジン生産機種14機のうち12機が生産停止することになった。
除名処分から1年、日野は国土交通省から不適合機種の型式認定取り消し処分と是正命令を受け、社内調査と体質改善に取り組み、執行体制を見直して、再度型式認定を取得、ユーザーに対する補償も発表し、粛々と実行してきた。
こうした前提を踏まえて(長かった!)、前述の自工会会見にて、記者から以下の質問が出たわけだ。
「足元では、物流業界の2024年問題(編集部注/自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する、輸送業界におけるドライバーの人手不足問題。「日本の物流が崩壊するのでは…」と言われている)への対応が迫っています。自工会としては、大型トラックの分野で、どのように協調を進めてゆくお考えでしょうか。1年前にCJPTから除名された日野自動車への対応も踏まえてお答えいただけると幸いです。」
コメント
コメントの使い方ダイハツ工業が不正やらかしたがCJPT除名ならなかったから、日野自動車もいずれCJPT復帰すると予測してた。
日野自動車好きなので嬉しい、ってかこれまでライバルだった会社全てが結託しなければならない程の事が起こってるんだな自動車業界って。
本日の案件での核心部分をつく素晴らしい質問。
それに対する真摯な回答。
物流業界で働く私にとって嬉しい話でした。
それにしても協業と競争…いいスローガンです♪