■マツダのロータリーHVがトヨタ次期MR2に載る未来
基本になるのは、スモールに用意されたロータリーと、ラージに用意されたディーゼル6気筒のICEである。スモールの中核を担うのはロータリーユニットを発電専用に使うシリーズハイブリッドであり、駆動は100%モーターである。
このシステムは、かなり理想的なマルチパスウェイプラットフォームだ。ロータリーを下ろしてバッテリー容量を増やせばBEVになるし、雑食性の高いロータリーは合成燃料や水素への対応力も高い。将来どの方向へ進もうと対応できる。
一方ラージの主力は、マツダ得意のディーゼルユニットを用いたマイルドハイブリッドだ。果たしてマイルドハイブリッドでどの程度の燃費が出せるのかという危惧を打ち払ったことには大いに敬意を表したい。WLTCで21km/Lというスペックは、長年燃費のチャンピオンとして君臨してきたトヨタTHS IIと比べても遜色ない。クラウンクロスオーバーの2.5L、THS II搭載モデルはWLTCで22.4km/L。2.4Lのデュアルブーストハイブリッドはハイオク仕様で15.7km/Lである。
燃費はCO2排出量に直結するので、少なくともハイブリッド戦線においてマツダは第一線級のパワートレーンを手に入れたことになる。しかもロータリー同様、ディーゼルはICEとして高い雑食性を持ち、合成燃料への対応が容易である点も見逃せない。
こうして手堅い事業戦略を見せてきたマツダだが、冒険的なモデルも手掛けている。ジャパンモビリティショーで発表されたMAZDA ICONIC SPは、新時代のハイブリッドスポーツの形を示唆するものになっていた。分類上のシステムとしてみれば「シリーズハイブリッド式のPHEV」であり、MX-30 R-EV同様、ユーザーの運用上は「ほとんどBEV」として走行するだろう。
駆動はモーターなので、クルマの基本はほぼBEVである。システム出力は370ps、パワーウェイトレシオ3.9kg/ps、車両重量1450kgというスペックは、どこから見ても本格的スポーツカーのものだ。
さらにアルミダイキャストのXバックボーンフレームに2ローター発電機を、従来のICEでは不可能なほど奥に押し込んでみせた。コンパクトなロータリーとトランスミッションがないメリットを重量配分に活かしたシステムである。
問題はこれを量産して、設備投資を回収できるかどうかだが、おそらくそこにはトヨタとのアライアンスが効いてくるのだと思う。たとえば、Xバックボーンを前後逆に使えば、ミドシップのハイブリッドスポーツができあがる。
仮にトヨタがこれを電動化時代の新型MR2として販売するのであれば、投資回収の目処が一気に好転する。
そもそもロータリーのレンジエクステンダーシステムはトヨタから見て魅力的であり、さまざまなクルマに搭載が可能になる。スバルが86/BRZやbZ4X/ソルテラでアライアンスを活かした商品をラインナップしたのと同様、マツダもアライアンスを活かした商品展開ができる可能性が広がる。
■スバル水平対向4気筒HVの鍵を握るのは「燃費」
スバルはどうか。実はスバルはかなりの秘密主義で、おそらく裏側ではさまざまな手を打っていると思われるのだが、それを説明しない。かろうじて発表したのはBEVの製造ラインに投資するという話だけである。
しかしこれまで述べてきたとおり、昨今の流れを見る限り当分はICE系の車両で稼ぎながら、需要を睨んでBEVの投入を進めていく形にならざるを得ないはず。ICE系というのは荒っぽく言えばHEVである。スバルがどのようなHEVで販売を支えていくかが発表されるまで、全体図が見えてこない。
販売台数の少ないスバルが、今からHEVを新規開発しても、開発費の回収が難しいことは想像できる。
常識的に考えて、おそらくはトヨタのTHS IIの供給を受け、これをスバルのフラット4と組み合わせて使うのだと思う。実際北米では少量ながらそういうモデルの販売実績もある。
問題はそのフラット4のHEVがどの程度の燃費を達成できるかである。20km/Lを超えてくるのであればスバルにも勝機が出てくるのだが、果たしてどうなるか。
マツダにしてもスバルにしても、こうした巨額資本が求められる大変革期を単独で生き残っていくことは難しい。ゆえに、トヨタアライアンスに加盟したのだろう。
BEVはもちろんだが、HEVにもバッテリーは必要だ。つまりバッテリー原材料を確保しておかないと、この先に進めない。
おそらくそこはアライアンスを活かした共同調達の方向に向かっていくのではないかと思う。協調領域と競争領域をしっかり区別し、独自性の高い競争領域で、マツダらしさ、スバルらしさをしっかり主張して行くことが大事だ。
個性も独自性もない会社は、アライアンスにとって必要がない。
両社にはさらなる個性的な技術開発が求められて行くだろう。
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