欧州車のホイールってすぐ黒くなってしまう印象がありませんか?
アウトバーンなど超高速域からでも安全にクルマを止めるためのブレーキだからとか、いろいろと説がありますが、そんなブレーキダストが実はあることの原因になっているようです。
ブレーキシステムの開発をするボッシュが開発したある新製品が、その問題の解決に働きそうです。
文:ベストカーWeb編集部/写真:BOSCH、Shutterstock.com
■安定したブレーキ制動の代償は大気汚染!?
高速道路での移動が多いオーナーにとってドイツ車をはじめとする欧州車の安定感は魅力的。
ガッシリとした車体剛性、ふらつかない足回り、しっかりと身体をホールドするシートなど魅力はたくさんある。しかし忘れてならないのは高速度域からクルマを安全に停止させるブレーキでもある。
欧州車、特にドイツ車でホイールが汚れやすいのは、ドイツ車が採用するブレーキパッド、ブレーキローターの材質の影響でもある。
欧州車はアウトバーンや、郊外での法定速度が80km/h以上での一般道路での制動力が必要なのだ。
そんな欧州車は安定して止まれることにブレーキの性能を振っていることもあり、ブレーキパッドの磨材とブレーキディスクを国産車以上に擦り減らして制動力を確保している。
だからホイールの汚れについてはきれい好きな日本のオーナーには悩みとして残っている。
しかしブレーキダストの問題は、オーナーの洗車の手間が増えるということよりも深刻な問題があると、世界最大級の自動車パーツサプライヤーのボッシュが発表した。それが大気汚染だ。
道路上で排出されるPM(粒子状物質)のなんと32%がブレーキとタイヤに起因しているというではないか。細かく見てみると32%の約半数がブレーキの粉じんとされる。
そんな状況を鑑みて、毎年2000万個のブレーキディスクを生産する、自動車部品の大型サプライヤーボッシュとその子会社が立ち上がったようだ。
ドイツの担当者は「新しい製品は”ブレーキディスク2.0″ともいうべきものです」と断言しているのだからすんごい。
■ネーミングがオシャレな「iDisc」とはいかなるものか!?
ボッシュ(正確には子会社のBuderus Guss)が開発したのが「iDisc」というブレーキディスク。
Appleがよく商標を取っていなかったな、と妙なところに編集担当は感心してしまったが、このブレーキディスクがなかなか凄い。前述した大気汚染の要因になっているブレーキ粉じんの発生が、従来品に比べてなんと90%も削減できるという。90%といえば目に見えてダストの減りがわかるレベルだろう。
その秘密は「タングステン カーバイド コーティング」と呼ばれるもの。日本語でいえば「炭化タングステン被膜」なのだが、この被膜を一般的な鉄のブレーキディスクにコーティングする。
一般的にタングステンカーバイドは対摩耗性などに優れる性質を持つことから、ブレーキディスクへの応用ができるのだろう。
そうすることで数々のメリットが生まれるようだ。まずブレーキパッドの減りが圧倒的に少なくなる。
これはiDiscの表面がコーティングによって強度があがり、ブレーキディスクの寿命が延びるのだ。ボッシュによると約2倍の製品寿命になるという。
さらにはセラミックブレーキと同様にフェードへの耐性が強くなるという。スーパーカーに採用されるカーボンセラミックなどのブレーキローターは、カーボンなどの材質をプレスして焼き上げる。
しかしこのiDiscは鋳鉄の普通のブレーキローターに、コーティングをするだけだからコスト面でも有利なのである。重量を気にしない一般乗用車ならiDiscの魅力も増えそうだ。
そんな凄いことばかりのiDisc。ネックなのは価格。一般的な鋳鉄製のブレーキローターの3倍となるそうだ。
価格が3倍で、製品寿命が2倍、そしてブレーキの制動力はセラミックブレーキ並みの安定した制動が保てて、さらには環境に優しい。
メーカーからするとコスト面でのお悩みはつきないだろうが、このブレーキディスクを採用したクルマがいつ市販されるのか楽しみである。
ちなみに今年の11月から欧州メーカー向けに量産が始まっている(メーカーは非公表だけど)。うーん、ダストが少なく安定した制動を保てるのなら、国産車への採用も待ち遠しいな〜。
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