全高が低く、あまり派手ではないのが売り上げを落とした原因か?
クルマにとってデザインが重要なのは当然だが、実用重視とされるミニバンでも、マイナーチェンジによる形状変更が売れ行きを大きく左右する。
背の高いミニバンでは、外観の見え方、特にフロントマスクの形状がこれほど重要なのだ。オデッセイの売れ行きがアルファード&ヴェルファイアに比べて少ない理由も、同じところにある。
アルファード&ヴェルファイアとオデッセイの外観を見比べて、最も違いを感じるのがフロントマスクだ。
アルファード&ヴェルファイアは全高が1935mm(2WD)で、オデッセイは売れ筋のアブソルートが1685mm(2WD)に収まる。250mm背が低く、しかもフロントマスクのデザインが大人しい。これが売れ行きに大きな影響を与えたと思う。
■ボディサイズ比較
●オデッセイ:全長4840×全幅1820×全高1685(アブソルート)~1695mm、ホイールベース:2900mm
●アルファード:全長4945×全幅1850×全高1950mm、ホイールベース:3000mm
クルマの動力性能で考えると、必要な最低地上高と室内高が得られれば、全高と床の高さは低いほど良い。
天井と床が下がれば、乗降性が向上して、重心も下がるから走行安定性と乗り心地でも有利だ。空気抵抗が減って車両重量も軽くなり、動力性能や燃費も含めて車両全体の機能と性能が高まる。逆に背を高くして得られる機能的なメリットは1つもない。
そのためにホンダは長年にわたって低床プラットフォームに取り組み、オデッセイは車内全体の床がフラットな背の高いミニバンの構造を採用したうえで、床の位置を低く抑えた。その結果、1325mmの室内高を確保しながら、全高を1700mm以下に抑えている。
アルファードは低床ではないが乗員の見晴らしと乗降性を優先させた
ところがアルファード&ヴェルファイアは、現行型でプラットフォームを刷新しながら、床の位置をあえてほとんど下げなかった。外観を立派に見せて、なおかつ乗員の周囲を見晴らせる感覚を重視したからだ。
低床設計にして天井も下げれば、乗降性、走行安定性、乗り心地、動力性能、燃費などを幅広く向上させられたのに、きわめて情緒的な背の高い外観デザインと、乗員の見晴らしを優先させた。その結果、売れ行きを伸ばすことができた。
このアルファード&ヴェルファイアの成功は、トヨタ車が売れる本質を突いている。極端な表現をすると、売れ行きを伸ばせるのであれば、走行性能や乗降性など多くの機能を犠牲にしても、デザインを優先させるのがトヨタのやり方だ。
この「売れること」いい換えれば「儲かること」を前提した優先順位の付け方は、他メーカーでは真似できないトヨタ流だろう。
最近はプリウスのように、主力車種なのに外観がいまひとつ受けない商品も登場しているが、かつてのトヨタはデザインの失敗がほとんどなかった。
ミニバンのアルファード&ヴェルファイア、ヴォクシー系3姉妹車、シエンタは、このデザインにおけるコントロールがとても上手にできている。
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