クルマのドライバーはもちろん、歩行者や自転車にも守るべきルールがあり、それを知らずに違反している人も多数。知らないうちに事故のリスクを高めているかもしれません。本記事では、クルマのドライバーも知っておくべき“歩行者・自転車側の交通違反”についてわかりやすく解説します。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stockトップ画像=moonrise@AdobeStock)
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「交通ルールを守るのはクルマだけ」——そう考えている人は意外と多いかもしれません。しかし実際の道路交通法では、歩行者も自転車も“立派な交通参加者”であり、当然ルールを守る義務があります。
特に昨今、自転車の高速化・電動化や、歩行中のスマートフォン使用(いわゆる“歩きスマホ”)の増加により、歩行者・自転車が関与する事故が年々増加。なかには加害者として刑事責任を問われるケースもあるのです。
では、具体的にどのような行為が違反となり、どのような危険を伴うのでしょうか。交通ルールを改めて見直し、安心・安全な道路利用を心がけましょう。
歩行者の違反で多いのが、次のようなケースです。
・信号無視:青信号での横断は当然のことですが、赤信号を無視して横断するのは重大な違反。仮にクルマが徐行していても、歩行者の責任が問われることもあります。
・横断禁止場所での横断:道路標識や標示で横断が禁止されている場所で道を渡るのも違反。特に幹線道路やトンネル内などでの違反は重大事故につながる恐れがあります。
・斜め横断・急な飛び出し:交差点以外での急な斜め横断や飛び出しは、ドライバーにとっては非常に危険。結果として過失割合の議論になることも多いです。
これらの違反は、刑罰対象とはなりにくいものの、「自らの命を危険にさらす行為」であり、クルマ側が事故を回避できたとしても、ヒヤリとさせる原因となります。
自転車の交通違反:運転者も“加害者”になりうる
自転車は軽車両として、車道を通行する義務があります(例外あり)。しかし実際には、次のような違反行為が頻繁に見受けられます。
・右側通行:自転車は「車道の左側通行」が原則です。右側通行は重大な違反であり、対向車との衝突事故のリスクも高まります。
・信号無視や一時不停止:信号や一時停止の標識は、自転車にも適用されます。無視して交差点に進入すれば、重大事故につながります。
・傘差し運転・スマホ操作・イヤホン装着:これらは「ながら運転」として都道府県の条例で禁止されていることが多く、事故時には過失を問われることに。イヤホン装着については、警察庁としては「イヤホンを装着して自転車を操縦したら違反」という見解は示していないようです。両耳でも片耳でも「周囲の音や音声が聞き取れない状態が違反」という方向性とのことです。
・2人乗り・並走:同乗者を乗せたり、並列で走行する行為も道路交通法違反。周囲の車両や歩行者に迷惑をかけるだけでなく、操作性も低下します。
最近では、自転車事故で高額な損害賠償を命じられるケースもあり、自転車保険への加入が義務づけられている自治体も増えています。
そのため、「相手の違反を知る=事故回避のヒント」として、ドライバーも歩行者・自転車の交通ルールを把握しておくことが必要なのです。
事故防止のためにできること
ドライバーとして事故を防ぐには、「想定力」が必要です。
・信号のない横断歩道では、歩行者が飛び出してくるかもしれない
・歩道を走る自転車が急に車道に出てくるかもしれない
・通学時間帯は小学生の集団登校があるかもしれない
こうした「かもしれない運転」が、事故を防ぎ、被害者にも加害者にもならないための最良の策です。交通違反をする人が悪い、で終わらせるのではなく、それを見越して対処できる「成熟したドライバー」であることが、これからのクルマ社会に求められる姿なのです。
自転車でも「赤切符」が交付されることがある!
一般に「赤切符」と聞くと、自動車やバイクの重大な交通違反に対して交付されるものというイメージがあります。たとえば、無免許運転や酒気帯び運転、スピード超過といった違反行為に対して交付されるのが赤切符です。しかし実は、自転車の交通違反に対しても赤切符が交付されることがあります。
自転車は道路交通法上「軽車両」に分類され、車両と同様に交通ルールを守る義務があります。つまり、信号無視や酒酔い運転、遮断機が下りた踏切への侵入といった行為は、自転車でも重大な違反として扱われる可能性があるのです。
特に赤切符の対象となるのは、酒酔い運転や悪質な信号無視・一時停止無視など、他者への危険性が高いと判断されるケースです。警察が「危険運転」や「悪質」と見なした場合、自転車利用者であってもその場で赤切符が交付され、刑事手続き(略式起訴や罰金など)に進むことがあります。
赤切符が交付されると、違反者は警察署や検察庁への出頭義務が発生し、反則金では済まされず、「前科」が付く可能性もあります。つまり、自転車に乗っているときの違反でも、場合によっては刑事罰を受ける可能性があるということです。
実際に起きた赤切符交付事例
たとえば、2022年には東京都新宿区で、酒に酔って自転車を運転していた男性(40代)に対し、警察が道路交通法違反(酒酔い運転)で赤切符を交付し、書類送検したという事例がありました。男性は自転車でフラフラと蛇行運転をしており、警察官の職務質問によりアルコールの影響が発覚。検査の結果、かなりの酩酊状態だったため、赤切符が切られたのです。
また、2021年には名古屋市内の交差点で、自転車が赤信号を無視して進入し、横断中の歩行者と接触して軽傷を負わせた事故が発生。このケースでも運転していた20代の男性に対し、警察は信号無視と安全運転義務違反の両面から赤切符を交付しました。さらに、男性は交通事故の加害者として民事賠償も求められ、最終的に数十万円規模の損害賠償金を支払うことになったと報じられています。
これらはほんの一例に過ぎませんが、いずれも「悪質」「危険性が高い」「事故や第三者被害につながった」という理由で、赤切符が交付されたケースです。つまり、自転車であっても、状況次第では刑事責任が問われ、略式起訴や罰金刑となることがあるのです。
青切符制度との違いと今後の動き
2024年6月17日、政府は「道路交通法施行令の一部を改正する政令」を閣議決定。これにより、自転車の交通違反に対しても「青切符」が導入され、反則金を科す制度が法的に正式に進められることとななりました。
施行は2026年4月1日から予定ですが、対象は16歳以上の自転車利用者となります。16歳未満については、交通ルールや交通反則通告制度に関する理解度について個人差が大きいと考えられるため、今回の制度では対象外とされています。
今回の青切符制度で対象となるのは、比較的軽微な違反で、刑事罰を回避できる“反則行為”。以下が主な対象行為と反則金額。
・携帯電話の使用(ながら運転):1万2000円
・信号無視:6000円
・通行区分違反(歩道走行や逆走など):6000円
・ブレーキ不良車の運転:5000円
・無灯火運転:5000円
・自転車同士の並進禁止違反(並走):3000円
・二人乗り:3000円
など
「自転車は安全」という思い込みを捨てよう
自転車は軽車両でれっきとした車両なので、事故を起こせば赤切符、つまり刑事手続きの対象となり、場合によっては前科がつくことさえあります。加えて、損害賠償請求や社会的信用の失墜といったリスクも大きく、決して「軽い違反」で済む話ではありません。
ドライバーとしても、自転車が赤切符対象となる違反をする可能性があることを知っておくことで、リスクを未然に察知し、事故を防ぐ対応がしやすくなります。歩行者や自転車が常に「被害者」とは限らないという現実を踏まえたうえで、慎重な運転を心がけることが、事故を防ぎ、安全な交通環境づくりにつながるのです。








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