なぜ、オデッセイはアルファード&ヴェルファイアに勝てないのか?

居住性はオデッセイの方が勝る

 一方、オデッセイは床と天井を低く抑える理論に忠実な商品開発を行ったから、機能はアルファード&ヴェルファイアよりも優れている。走行安定性だけでなく、居住性もオデッセイが勝る。

オデッセイのインテリア。居住性はアルファードよりもオデッセイの方が勝るという
オデッセイのインテリア。居住性はアルファードよりもオデッセイの方が勝るという

 アルファード&ヴェルファイアは床が高いこともあり、左右に跳ね上げる3列目シートは、床と座面の間隔が不足して膝を前側に投げ出す座り方になりやすい。

 2列目に比べて居住性が格段に下がるが、オデッセイの3列目は着座位置が相応に高めで快適だ。大人6名の移動を前提にすれば、アルファード&ヴェルファイアよりもオデッセイの方が優れた面が多い。

ステップ高は約30cmと低床化により優れた乗降性を獲得。階段のようなステップをなくすことで、フラットで広いフロアも実現。高齢者向けともいえる
ステップ高は約30cmと低床化により優れた乗降性を獲得。階段のようなステップをなくすことで、フラットで広いフロアも実現。高齢者向けともいえる

 また高齢者が階段を登る時、段差が30cmを超えると辛くなる。オデッセイのステップ部分は、この範囲内に抑えた。

 アルファード&ヴェルファイアは前述のように床が高いから、階段状のサイドステップが備わり、乗降性もオデッセイに見劣りする。

 以上のようにアルファード&ヴェルファイアと機能を比べると、オデッセイは優れた点が多い。それなのに売れ行きではボロボロに負けている。自動車ビジネスは難しい。

ホンダの販売店はN-BOXやフリードで手一杯

着座時の頭まわりが広くなるように工夫した形状など、オデッセイはいたずらに室内高を上げるのではなく、乗員それぞれが実感できる“広さ感”にこだわっているという
着座時の頭まわりが広くなるように工夫した形状など、オデッセイはいたずらに室内高を上げるのではなく、乗員それぞれが実感できる“広さ感”にこだわっているという

 オデッセイの敗因はほかにもある。今のホンダはオデッセイが好調に売れた時代と違って、全店が全車を扱う。

 この影響で売れ筋車種が低価格化した。特に今はN-BOXが絶好調に売れている。2019年1~10月の累計で見ると、国内で売られたホンダ全車の内、N-BOXが34%を占めた。軽自動車全体で見ると、ホンダ車の半数に達する。

 N-BOXに次いで売れているのもコンパクトなフリードやフィットだから「ホンダは小さなクルマのメーカー」というイメージが定着した。オデッセイの存在感は相対的に薄れている。

 そして今のホンダの国内販売台数は、好調な軽自動車に支えられてトヨタに次ぐ国内2位だ。1台のクルマを販売する時のセールスマンの手間は、軽自動車が届け出制とはいえ、小型/普通車とさほど変わらない。

 そうなると今のホンダの販売店は、N-BOXやフリードで手一杯だ。ホンダのセールスマンも「オデッセイやアコードは、来店して購入を希望するお客様に販売している。積極的に売り込むことはしていない」という。

 ホンダが販売系列を撤廃したことで小さなクルマが売れ筋になり、この傾向をN-BOXが加速させ、ホンダのブランドイメージと売り方も変化してオデッセイが落ち込んだ。

 その一方で、販売面におけるトヨタの強さも見逃せない。アルファードを扱うトヨペット店は、以前はコロナ(プレミオの前身)とマークII(マークXの前身)が主力商品で、法人相手の営業も強い。

 この法人需要を今ではアルファードが牽引している。トヨペット店によると「最近はTVのニュースなどで、政治家や企業のトップがアルファードから降りてくる映像が流され、社用車で使う法人のお客様が注目している。

 車内(2列目のシート)でパソコンなどを使った仕事もしやすいから、クラウンからアルファードに乗り替えるケースも目立つ」とのことだ。

 そしてアルファードはトヨペット店、ヴェルファイアはネッツトヨタ店の最上級車種に位置付けられ、両系列とも大切に販売している経緯がある。トヨタ店がクラウンを大切に売るのと同じようなことが当てはまる。

 それなのに2020年5月になると、トヨタの販売店は、全国的に全店が全車を扱う体制に移行する。取り扱いディーラーが専売車種を大切に売るスタイルが変わり、時間が経過するとアルファードとヴェルファイアのどちらかが廃止される。

 仮にそうなっても、Lサイズミニバンの販売1位は揺らがないだろうが、今の勢いを保てるとは限らない。クルマ業界の変革では、売れ筋車種の変化も激しくなるだろう。

【画像ギャラリー】アルファードよりオデッセイのほうが室内空間はいい?

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