こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】スバル史上もっとも美しいスタイルを持つ先進的なスペシャルティカー[アルシオーネSVX]

こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】スバル史上もっとも美しいスタイルを持つ先進的なスペシャルティカー[アルシオーネSVX]

 これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

 当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、水平対向エンジンを搭載した美しきGTクーペ、アルシオーネSVXを取り上げる。

文/フォッケウルフ、写真/スバル

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バブル景気に乗って誕生した本格グランドツアラー

 1980年代後半、バブル景気と呼ばれる未曾有の好況のなか、日本の自動車市場では、ハイソカーやスペシャルティカーといった高級モデルが人気を博しており、メーカーは潤沢な開発資金を投じて贅を尽くした新型車を輩出していた。

 そんな状況のなか、スバルは同社のアイデンティティを象徴する新たな4WDグランドツアラーの開発に着手した。

 当時の日本においてグランドツアラーは一般的に「GT」と呼ばれ、その呼称が車種のグレードを表わす言葉として多用されていたため、スポーツカーに近い、若者のクルマというイメージが強かった。

 しかしスバルでは、「ヨーロッパの貴族・富裕階級の子弟が、学業の仕上げに経験させられる都市巡遊旅行」という本来の意味に立ち返り、そうした目的に使うクルマをグランドツーリングカーと定義するなら、スタイリッシュなフォルムで、居心地のいい居住空間や長期間の旅行に十分なたっぷりとした荷物スペースを有し、天候に左右されることなく、長距離を快適に走れるパフォーマンスを持つクルマこそが理想だとする、独自のグランドツーリングカー像を提唱する。

 1991年9月、「500miles a day」というキャッチフレーズを掲げ、大人の豊かなパーソナルライフを演出する本格グランドツアラー「アルシオーネSVX」は華々しくデビューを果たす。

ボディ表面と一体化されたフロントマスク&ヘッドランプ、フロントフェンダー一体造形ミラー、エアロダイナミックホイールの採用などによって優れた空力特性を実現していた
ボディ表面と一体化されたフロントマスク&ヘッドランプ、フロントフェンダー一体造形ミラー、エアロダイナミックホイールの採用などによって優れた空力特性を実現していた

 大人の豊かなパーソナルライフを演出する本格グランドツアラーを具現化するにあたってスバルは、スポーツカーの楽しさとロングツーリングに求められる高度な安全・快適性能の両立がもたらす「走る歓び」、ロングツーリングでの充足感と疲労の低減を追求した上質かつ機能的な移動空間の実現によって感じる「乗る満足」、そして、高級パーソナルカーとしての高品質と、乗る人のパーツナリティを表現する豊かな個性がオーナに与える「持つ誇り」という、3つの要素について注力した開発を行っている。

 これら3つの要素を具現化するにあたってアルシオーネSVXは、国際水準の性能、機能や品質を求めるべくさまざまなハードウェアを採用していた。

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戦闘機を彷彿とさせるラウンドキャノピー

 外観は3ナンバー専用ボディをベースに、ロー&ワイドなフォルムや、グラスtoグラスのラウンドキャノピーによって個性的かつスポーティなイメージを表現。特にジェット戦闘機のキャノピーをイメージさせるミッドフレームウインドウ付きラウンドキャノピールックは、空力的にもデザイン的にも魅力的なモチーフで、アルシオーネSVXでもっとも注目されるポイントのひとつだ。

 フロントとサイド、リアのウインドに採用した3次曲面ガラスは、複雑かつ大きな曲率であるにもかかわらず、透視歪みがないよう作り込まれている。しかも高精度に仕上げるために、新たなガラス製法の開発をはじめ、コンピューター解析による最適形状の検討といったさまざまな技術開発の賜物と言える。

 さらに、ヒドゥンピラー(キャビン外面に出しないピラー)とするためには、ビラー自体を可能な限り細くする必要がある。そうするとピラーの強度不足が生じてボディ全体の剛性が低下し、操縦性をはじめあらゆる面に悪響を及ぼしてしまう。そこでアルシオーネSVXでは、視界を妨げることなく、しかも必要な強度を確保することが可能な構造としたのもラウンドキャノピーを実現できた要因のひとつだ。

 さらに、グラスtoグラスでグリーンハウスを構成した場合に懸念される、ガラス位置のわずかなずれを補正するエンキャップシュレイテッドモールという構造や、ガラス部分から連続する滑らかな面のつながりを保つために、サイドウインドウとリアクオーターウインドウに採用したミッドフレーム構造を採用。加えて、紫外線を大幅に吸収し、日射熱を半減させるUVガラスが全面に採用された。

 こうした技術を用いて、グラスtoグラスのラウンドキャノピーの採用に際して問題視されてきた課題を解決し、個性を主張しながら使い勝手や快適性にもしっかり配慮された、きわめて完成度の高いものとして実現している点は称賛に値すると言っていい。

ロー&ウェッジシェイプのフォルムを基本に、フラッシュサーフェス化を徹底したラウンドキャノピーやフロント&リヤエンドの絞り込みなどが特徴的なスタイル
ロー&ウェッジシェイプのフォルムを基本に、フラッシュサーフェス化を徹底したラウンドキャノピーやフロント&リヤエンドの絞り込みなどが特徴的なスタイル

 走りについては、長距離を速く、快適に、そしてハンドリングを存分に楽しめることを念頭において作り込まれている。パワーユニットは、3.3L BOXER-6 EG33を搭載。スバル1000以来蓄積してきた水平対向エンジンのノウハウをベースに開発された独創的なエンジンだ。

 水平対向エンジンは軽量、コンパクト、低重心、低振動、高剛性、といった資質を有しており、これがグランドツーリングカーを標榜するアルシオーネSVXにとっては大きいな優位点となった。

 過給器をもたない自然吸気としたことによって得られる、繊細でリニアなアクセルレスポンスと低回転からリニアでトルクフルな特性は、グランドツアラーに要求される資質をより際立たせるものだ。

 最高出力240ps、最大トルク31.5kgmという十分な動力性能によって実現した洗練された加速感と、精徴なメカニズムが生み出すフレキシビリティな感覚は、どんな場面でもこのうえない爽快感をもたらしてくれる。

 足まわりは4輪ストラット式サスペンションを採用し、サスペンション設計の基本となるホイールストロークと剛性に関して高い目標値を設定し、それをクリアするための理想的な構造が追求されている。

 225/50R16というロープロファイルタイヤの性能を引き出しながら、快適な乗り心地を確保することはグランドツーリングカーとしては必須の要件と捉え、足まわりからの振動、騒音を抑制するために前後サスペンションに高剛性サブフレームを装備している。

 常に安心感のある操縦性能が維持され、前後サスペンションともに接地力が無闇に変動せず、さらにホイールストロークによるトー変化、スカッフ変化を極力少なくするサスペンションジオメトリーが採用された。

 こうした技術によって、操舵に対して正確に応える回頭性とダイレクトな追従性、優れた振動騒音特性、直進安定性と高度な旋回性能を実現しながら、ふところの深いストローク感ある乗り心地と素直で揺り戻しのないロール感といった、両立が難しいとされる要素を高い次示でバランスさせている。

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