こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】スバル史上もっとも美しいスタイルを持つ先進的なスペシャルティカー[アルシオーネSVX]

先進の電子制御4WDシステムが抜群の操縦性を発揮

 駆動方式は4WDとなるが、4WDならではの安定性をベースに、グランドツアラーにふさわしい洗練されたスポーツ感覚を実現するために、新開発となる不等&可変トルク配分子制4WDである「VTD-4WDシステム」が採用された。

 センターデフによる前後輪へのトルク配分比を、一般的な駆動力確保を目的とする配分比ではなく、前輪側に35%、後輪側に65%の不等配分比率にして配分を変えることによって、スムースな旋回性や滑らかなハンドリングが味わえる。

 トルク配分比率は固定ではなく、電子制御油圧多板クラッチによるLSDの働きで走行状態に応じて配分され、前後輪へのトルク配分を35対65から直結4WDの間まで可変制御する。これにより限界域で高いコントロール性を実現しながら、必要に応じて瞬時に最大駆動力を引き出し、抜群の安定性を発揮することが可能となる。

 トランスミッションは7ポジション電子制御4速ATを搭載。コンピュータがアクセルの踏み込み量や車速といった運転状況に応じて、変速、変速タイミング、エンジンブレーキ、ロックアップなどを最適制御すると同時に、エンジンとの関連制御を行うことで、変速時に生じるショックを低減させる。

 3.3Lエンジンが発生するパフォーマンスを効果的に引き出すドライブトレーンの効果も、アルシオーネSVXが目指すグランドツーリングカーにふわしい走りを味わわせる要素となっている。

インテリアは、ゆるやかにラウンドしたメーターバイザー形状やセンターコンソールにより、すべてをソフトな曲線で構成。メーター、スイッチ類は人間工学に基づいたレイアウトとし、目視せずとも触れるだけで操作できるよう配慮されている
インテリアは、ゆるやかにラウンドしたメーターバイザー形状やセンターコンソールにより、すべてをソフトな曲線で構成。メーター、スイッチ類は人間工学に基づいたレイアウトとし、目視せずとも触れるだけで操作できるよう配慮されている

 このほかにも、低速から高速まであらゆる領域で、滑らかでドライバーの意志のままに動くハンドリングの実現に貢献する4WSが採用され、高速領域でも余裕を持って対応できる優れた制動能力と、剛性感や効きのリニア感などによるナチュラルなコントロール性を備えた信頼感のあるブレーキシステムを搭載した。

 パワフルなエンジン、優れた応答性と高い限界性能を備えたサスペンション、そして高機能4WDシステムの性能を最大限に発揮させるためにこだわって作り込まれたボディは、横剛性とねじれ剛性について本格スポーツカーと同等レベルにまで引き上げられている。技術的な観点から見ると、まさに国産車としてトップレベルの性能を実現できていることは明白だ。

 しかもこれほど多彩な技術が盛り込まれ、国産屈指の性能を実現していながら、価格は330万3000円から399万5000円というリーズナブルな設定だった。ジョルジェット・ジウジアーロが手掛けた先進的なスタイルを含めても、人気になる要素を多分に持ち合わせていた。

 バブル景気真っ只中なら、国内外の市場においてスペシャルティカーとして確たる地位を築いていただろう。しかし、登場したのが少しだけ遅すぎた。バブル景気が終焉を迎え、高級スペシャルティ市場は急速に冷え込み、日本市場ではRVブームが巻き起こった。

 スバルは販売の主力となるレガシィをはじめとした大衆ウケするクルマに注力し、アルシオーネSVXは1996年末に生産が終了となる。総生産台数は2万4379台。このうちの国内登録台数は、わずか5951台だった。

 バブル景気が終焉した影響もあって販売は振るわなかったものの、スバルのクルマづくりのアイデンティティと、4WDを核とした安全技術を受け継ぎながら熟成と進化を図り、スポーティクーペという形態のなかで「グランドツアラー」の理想像を具現化。その先進性と高性能は、スバルリストのみならず多くのクルマ好きから称賛されている。

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