大人4名が上質にくつろげる「独立4座」パッケージ
マークX ジオのシート設計は多人数乗車のための構成ではなく、「すべての乗員が対等に快適であること」を追求した空間思想に基づいている。その核となるのが、「独立4座」の考え方だ。乗車定員はG系グレードが6名、それ以外が7名となり、それぞれ特徴が異なる。
6人乗りモデルでは、2列目に左右独立のキャプテンシートを採用。後席においても単なる乗員配置ではなく、快適性とパーソナリティを重視した設計が徹底されている。
アームレスト付センターコンソールボックス、ドアトリム部の大型アームレスト、前後スライド&リクライニング機構といった機能を後席にも備えることで、運転席・助手席と同様に、ひとりひとりが自分の空間として寛げる設計が施されている。まさに「4席とも主役」という思想を体現した構成となっていた。
7人乗り仕様は、多人数でも快適性を妥協しない工夫が随所に見て取れる。2列目にベンチシートタイプを採用しつつ、中央部にシート組み込み式の大型アームレストを装備。使用時は3人掛けとして、アームレストを展開すれば6人乗りと同様のパーソナル性とホールド感を提供する。
このアームレストはただの仕切りではなく、身体の沈み込みや接触面の剛性まで考慮された構造となっており、センター席の利用がないシーンにおいては、2席分としての質感を確保している点がポイントだ。
6人乗り、7人乗りともに共通しているのは、乗員全員が対等に快適であること、多人数が乗っても各々が尊重されることを具現化していることで、それはプレミアムサルーンの名を冠するに相応しい空間哲学の表れと言えるだろう。
マークX ジオは、セダン、ワゴン、ミニバンという従来の車両ジャンルに内在する価値を1台のパッケージで自在に引き出すために「3モードキャビン」という可変空間構成を採用している。それぞれのモードは目的や人数、積載量に応じて、乗員のニーズに的確に応える空間最適化を可能にする。
3列目シートを床下に格納し、上下2枚構成のデュアルトノボードでラゲージスペースを完全に遮蔽するのがパーソナルモード(セダンモード)だ。これにより、後席乗員にとって視覚的にも音響的にも隔離された、静穏で落ち着いた空間が生まれ、まるで高級セダンに乗っているかのようなくつろぎを演出する。
デュアルトノボードを取り外すことで、荷室床面の形状や高さも最適化され、使い勝手の良さが際立つのがアクティブモード(ワゴンモード)。3列目シート格納時は、大容量かつフラットなラゲージスペースが出現し、荷室とキャビンの一体感が強調されたワゴンスタイルに変化させてアウトドアやショッピングなどアクティブな用途に対応できる。
荷室スペースに格納された3列目シートを引き起こすことで、最大7名乗車が可能なフルキャビンモードへと変化できるのがフレンドリーモード(ミニバンモード)だ。箱型ミニバンのような広さは望めないので移動は短時間に限定されるが、いざというときに多人数乗車ニーズに応えられる仕上がりとなっている。
ゆとりとダイナミズムを両立するパワートレインとシャシー構成
上質なドライビングフィールと優れた環境性能を追求すべく、2.4L直列4気筒と3.5L V型6気筒の2種類のパワーユニットを設定している。
上位グレードに搭載される2GR-FE型3.5L V6エンジンは、Dual VVT-i(吸排気連続可変バルブタイミング機構)を採用し、最大出力280PS、最大トルク346Nmを発揮。豊かな中低速トルクと高回転域の伸びを兼ね備えた特性によって、発進直後から高速域までスムースかつパワフルな加速が味わえる。
トランスミッションには、トルクコンバーター付きの電子制御6速ATを組み合わせ、ロックアップ領域の拡大と変速制御の最適化を図ることで、ドライバーの意図にリニアに応答する加速フィールと燃費性能を両立している。
売れ筋グレードとなる2.4L仕様には、2AZ-FE型 2.4L直列4気筒エンジンを搭載。VVT-i(可変バルブタイミング機構)により吸気効率を最適化することで、最高出力163PS、最大トルク221Nmという十分な動力性能を実現しながら、街乗りから郊外走行まで扱いやすいパワーカーブを描く。
組み合わされるトランスミッションはCVT-iで、トルク感を重視した変速プログラムの採用によって実用域での滑らかで自然な加速を実現。爽快な走りを実現しながら、燃費性能においても優れており、10・15モード燃費は12.0~12.8km/Lというクラストップレベルの水準を確保している。ちなみに3.5L仕様の燃費は10.2km/Lだ。
マークXの駆動方式はFRだったが、マークXジオではカムリ系のFFプラットフォームを用いている。サスペンションはフロントにマクファーソンストラット式、リアをダブルウィッシュボーン式として専用セッティングを施し、荷重変動に強く、上質な乗り心地と安定した操縦性を両立していた。
また、タイヤは215/60R16を基本としながら、上級グレードの3.5L仕様には225/45R18サイズという大径タイヤを装着。剛性に優れたボディ構造の組み合わせと相まって、走行時の横揺れやピッチングを効果的に抑制。直進安定性、コーナリング時の応答性ともに高いレベルに仕上がっている。
特に3.5L仕様では、前後サスペンションのスプリングレートやダンパー特性も専用チューニングが施され、パワーユニットの性能を的確に路面へ伝える設計が徹底されている。セダンの走行性能、ワゴンの積載性、ミニバンの居住性を一体化しながらも、「快適かつ意のままに操れる」ことを念頭に作り込まれた感があり、ドライバーズカーとしての完成度も高い。

斬新な作りで新たなジャンルの確立を狙ったマークXジオだったが、競合モデルが登場することもなく販売実績は伸び悩む。5人乗り仕様の追加、デザインの刷新などのテコ入れを行うものの、登場から6年が経過した2013年にひっそりと生産を終了した。多機能性が逆に「中途半端」と受け取られ、なおかつマークXの名を冠していながら、中身がまるで違うことも影響して明確なターゲット層を形成しきれなかったようだ。
しかし、マークXジオは、「セダンの高級感」「ワゴンの積載性」「ミニバンの多人数乗車」を1台で実現しようとした意欲的なモデルであり、話題性も十分だったことはたしかだ。静かで快適な移動空間でありながら、走れば応答性の高い「意のまま感」を提供してくれる、上質なサルーンとしての品格と、多用途車としての柔軟性を高度なバランスで成立させていたのは間違いない。

コメント
コメントの使い方ベースのマークX?マークXはFR、ジオはFF。丸っ切りベースが違う。しかもどれも中途半端。明らかな失敗作だと思う。
壊滅的に不細工、デザインが悪い、まるでオオサンショウウオのようなボテッとしたぬるんとした鈍重なデザインのどこにマークX要素が有るのだろうか?だったらジオだけで良かったではないか?あまりに本家とかけはなれた物体に付けるネーミングではない
HONDAジェイドよりも十年早くでた同一コンセプトのクルマですが、ジェイド同様に売れませんでしたね。
先入観無しに実車のサイドフォルムを見るとジェイド並みに攻めてるので、顔と名前がネックだったと思います。
名前はともかく、顔は後期型で化けましたし、前期でもオプションのメッキグリル付けると大幅に良くなるんですが、世間の認知度は激低ですね