トヨタ マークXジオは「セダン+ワゴン+ミニバン」で新ジャンルの確立に挑んだ意欲作【愛すべき日本の珍車と珍技術】

トヨタ マークXジオは「セダン+ワゴン+ミニバン」で新ジャンルの確立に挑んだ意欲作【愛すべき日本の珍車と珍技術】

 これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

 当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、他ジャンルの特徴を融合した画期的なクロスオーバーモデル、マーク Xジオを取り上げる。

文/フォッケウルフ、写真/トヨタ

【画像ギャラリー】3モードキャビンで用途に応じて自在に空間を操るクロスオーバーモデル、マークX ジオの写真をもっと見る!(8枚)画像ギャラリー

「Saloon’s Future」を具現化したプレミアム多用途車

 2007年9月に登場した「マークXジオ」は、「サルーンの未来像」をテーマに開発されたモデルで、ミニバンの高い実用性とセダンの上質感を融合させた新しいカテゴリーの提案に位置付けられていた。

 開発コンセプトとして「4+Free(フォー・プラス・フリー)」を掲げていた。これは4名が快適に乗車できることを前提としながら、2名から7名まで柔軟に対応可能な「3モードキャビン」構造によって、セダン/ワゴン/ミニバンの利便性を1台でカバーするというもの。

 見た目はステーションワゴン風だが、全高を1550mmとし、ベースのマークX(初代)より115mm高く設定し、立体駐車場への対応と広いキャビンスペースを両立している。乗車定員は6名または7名で、2列目にキャプテンシートを採用した「独立4座」仕様では、大人4人がゆとりをもってくつろげる室内空間を確保していた。

 なお、3列目シートは補助的な簡易構造とされており、必要に応じた使用が想定されている。クロスオーバーSUVが広く普及する以前に、セダンとワゴン、そしてミニバンの特徴を融合した画期的なモデルとして注目された。

セダンのような佇まいをもちつつ、ミニバンのようなシルエット。現代のフランス車にありそうスタイリングで、2007年から2013年まで販売された
セダンのような佇まいをもちつつ、ミニバンのようなシルエット。現代のフランス車にありそうスタイリングで、2007年から2013年まで販売された

 マークX ジオは、マークXシリーズに連なる高級感と走行性能を継承しつつ、従来のセダン/ワゴン/ミニバンの枠に収まらない新たなパッケージングを提案したが、そのスタイルはクロスオーバーモデルらしい、既存ジャンルの枠にハマらない斬新さを特徴としている。

 全高を抑えた伸びやかなプロポーションは、「セダン×3列シート車の新しい骨格」という新たなレイアウト思想を背景に設計され、流麗さと安定感を両立。セダンとミニバンの境界を超える独創的なフォルムは、ワイド&ローのシルエットの効果も相まって、ダイナミズムと高級感を兼ね備えた個性が際立つ、これまでになかった新しさを感じさせた。

 フロントセクションは、低い全高とフードの押し出しによってワイド&ローの精悍な表情を形成。ヘッドランプ周辺の処理は、視線誘導を意識したグラフィックが施され、スポーティかつ知性的な印象を与える。

 サイドビューでは、前出しされたフロントピラー、前傾のクォーターピラー、バックドアのノッチ形状を組み合わせることで、視覚的な流れを前方から後方へと一気に引き込む伸びやかなプロポーションが構築されている。

 その流れはリアセクションに受け継がれ、さらに絞り込まれたキャビンからバックドアへと繋がる面構成によって水平安定感と空力的洗練を表現し、重心の低さとワイド感を同時に演出している。

 ボディカラーはメタリック粒子の制御や層構成に工夫を施すことで、光の角度や強さによって多彩な表情を見せる塗膜仕上げとなっている。デザインとカラーリングを高いレベルで融合させることで、スタイルの完成度を際立たせている。

次ページは : 大人4名が上質にくつろげる「独立4座」パッケージ

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