ホンダ 自立バイクはなぜ立てる? 鍵は「アシモ」の技術

ホンダ 自立バイクはなぜ立てる? 鍵は「アシモ」の技術

 まずはメイン写真の自立したバイクを見てほしい。バイクといえば、渋滞などの際、バランス取りに神経を使うもの。

 ところが、このバイクは、ホンダ独自の自立システムにより、ライダー自らバランスを取る必要がなく、このように自立できてしまうというのだ。

 その自立技術「Honda Riding Assist(ホンダ・ライディング・アシスト)」とは、どのような仕組みなのか? 開発陣に聞き、その核心に迫る。

 文:ベストカー編集部 写真:Honda、ベストカー編集部


鍵はアシモやUNI-CAB βで培ったバランス制御技術

世界初の全方位駆動車輪機構を採用したUNI-CAB β。前後左右、自由自在に動き回ることができる
世界初の全方位駆動車輪機構を採用したUNI-CAB β。前後左右、自由自在に動き回ることができる

 そもそも「ホンダ・ライディング・アシスト」は何の目的で開発されたのだろうか?

 研究・開発を担当された中田博之さん、秋元一志さん、大田淳朗さんの3人に話を聞いた。

 「バイクを運転中、渋滞のノロノロ運転や取り回しの時など、ライダーはバランスを保つことに神経を遣うんです。そんな時の気遣いをなくしバランス取りを楽にすることで、バイクをより楽しいものにしたいと思いました。

 つまり、“自らバランスを取るバイク”という夢の技術を実現することで、バイクを楽しむ時のネガティブな要素を取り除きたい、これが目的ですね」

 バイクそのものが自立するために投入されたのが、アシモやユニカブなどにも搭載されているホンダ「ロボティクス技術」で、そこで培った“バランス制御技術”を活用。NC700という市販バイクのステアリングから先、前輪にかけて「ホンダ・ライディング・アシスト」を採用しているという。

ジャイロなど特殊な技術は使わず“自立”

 ここからは動画とともに自立のメカニズムを紐解いていこう。システムは、1.バイワイヤ式ステアリング、2.前輪を操舵させるための制御用モーター、3.可変式傾斜システムなどで構成されている(動画2:30付近)。

 次に、停止時から低速時(3〜4km/h)は3.によりフロントホークの傾きが変わり、前輪とステアリングを結ぶ角度が広くなる(動画1:30付近)。

 それに加え、バイク自身がステアリングの左右への操舵角でうまくバランスを取るなど、すべて電子制御により“自立”をおこなう仕組みだ。

 すでに世の中にはバイクを自立させるための「ジャイロフライホイール」などの技術はあるが……。

 「そういう特殊なモノ(要素)は使わず、先に述べた制御技術で自立します。タイヤも通常のタイヤで、中に特殊なものを取り入れているわけではありません。

 自転車に乗っている時、倒れないようにステアリングを細かく左右に動かしてバランスを取りますが、基本はその動きと同じといっていいです。アシモの場合も、二足歩行時には倒れそうになるともう一歩を踏み出してバランスを取っており、それにも近いですね」

今回、取材に答えていただいた開発陣。左から中田さん、大田さん、秋元さん
今回、取材に答えていただいた開発陣。左から中田さん、大田さん、秋元さん

 もう少し「自立するための制御部分」について聞いてみた。通常のバイクだとステアリングを切った方向へ車体が倒れる。

 いっぽう「ホンダ・ライディング・アシスト」は作動中、倒れようとする逆の方向へ車体を起こすようにコントロールする。この細かい動きを連続して行うことでバランスを保ち、自立するのだ。

 「そもそも二輪(バイク)が自立するというのは物理的メカニズムとしては成立する話で、その“計算上の自立”を電子制御により行っているということです。アシモやユニカブの技術を二輪へ……、これがひとつの答えですね。

 そして、キモの機械制御ですけど、バイクに乗せられている感覚ではなくライダーの意思との“協調性”を重視しました。この技術は“人とのハーモナイズの領域”に入っていると胸を張って言えます」

 自立するための技術には、ユーザー視点がたっぷり注入されていることがわかった。

この自立システムは2017年1月10日、米ラスベガスで開催された家電見本市「CES 2017」で世界初公開。市販二輪車のNC700に採用され、ベストイノベーション賞などを受賞した
この自立システムは2017年1月10日、米ラスベガスで開催された家電見本市「CES 2017」で世界初公開。市販二輪車のNC700に採用され、ベストイノベーション賞などを受賞した

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