■マツダ ボンゴフレンディ(1995年)
マツダ「ボンゴフレンディ」は、マツダの乗用1BOXではコンパクトなボンゴとハイエースやキャラバンと同等のサイズとなる「ボンゴブローニイ」を統合したモデルとして登場。ボンゴフレンディは「エンジンはフロントシート下だけど短いノーズがある」というミニバンで、クルマ自体はオーソドックスなものだった。
では何が個性的だったかといえば、ルーフに開閉可能なテントを設け、住宅で言えば屋根裏部屋のように使える「オートフリートップ」と呼ばれるポップアップルーフを設定したことに尽きる。オートフリートップは屋根裏部屋的な使い方に加え、オートフリートップを開けて室内高を拡大すれば着替えなどにも便利だった。ボンゴフレンディは、オートフリートップを大きなセールスポイントに根強い人気が続き、2006年まで11年間という長きにわたって販売された。
ボンゴフレンディの登場後は、キャンピングカー業界でポップアップルーフが珍しくなくなり、ホンダもそれぞれ初代モデルの「オデッセイ」と「ステップワゴン」にポップアップルーフを設定したほか、現行ベンツ「Vクラス」の本国仕様にはポップアップルーフがある(日本でも一時期販売された)など、ボンゴフレンディは日本車では珍しく外国車にも影響を与えた。
■スバル トラヴィック(2001年)
「トラヴィック」は、スバルにミニバンがなかったのもあり、当時結ばれていたGMとのアライアンスによりタイ国で生産される現在のトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」を少し大きくしたミニバンだったオペル「ザフィーラ」のスバル版として登場した。
トラヴィックは、単なるザフィーラのスバル版ではなく、1.8Lだったザフィーラに対し2.2Lに排気量を上げ、サスペンションはスバルがチューニングし、タイ国製ということもあり価格はザフィーラに対し50万円は安かった。
さらに走りはドイツ車がベースだけに、ミニバンながらレッドゾーンまでシッカリと気持ちよく回るエンジン、高いスタビリティ(安定性)を持ちながらシャープなハンドリング、よく効くだけでなくコントロールしやすく耐フェード性(ブレーキの温度上昇による性能低下)も強いブレーキなど、当時の日本車のミニバンを大きく上回っており、商品力はなかなかだった。
しかし、日本車のミニバンほど使い勝手がよくないことやトラブルの多さもザフィーラから引き継いでしまったためあまり売れず、残念ながら2005年に絶版となった。
■ホンダ 3代目オデッセイ(2003年)
ホンダ「初代オデッセイ」は、乗用車ベースの本格的なミニバンとして1994年に登場し、当時厳しかったホンダの経営立て直しに大きく貢献するほどの成功を収めた。1999年登場の2代目モデルは先代と現行の「N-BOX」のように、よく似たスタイルのキープコンセプトだったのも原因だったのか、完成度は高く十分売れたものの初代モデルほどのインパクトはなかった。
という経緯もあり、3代目モデルは「全高は立体駐車場に入り、ステーションワゴンに限りなく近い1550mmに抑えながら、低床化などにより7人がちゃんと乗れる室内空間をキープする」というコンセプトで登場。このコンセプトは新鮮かつ室内空間はコンセプト通りキープされたのに加え、走りもステーションワゴンのように乗用車並だったこともあり、同社の「アコードワゴン」のようなステーションワゴンの市場も荒らしながら登場からから3年後の2006年までは好調に売れた。
しかし2007年以降は全高の高いミニバンの台頭もあり、オデッセイの販売も下火になり始め、2008年登場の4代目モデルも2代目モデルのようなキープコンセプトで完成度を大きく高めたが、オデッセイの販売台数減少は止まらず「全高の低いミニバン」というコンセプトは幕を閉じた。
2013年登場の現行5代目オデッセイは4代目オデッセイとかつてホンダにあったラージミニバンのエリシオンを足して2で割ったようなミニバンとなり、現在あるミニバンの中では個性的な部類としてまずまずの販売をキープしている。
ミニバン市場が成熟した現代では名前を挙げたような個性派ミニバンをリリースしにくいのも分かるが、例えば「5ナンバーサイズで10人乗り」といった個性的なミニバンが1台くらいほしいところだ。
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