2020年夏の販売開始に向け、現在は「ファーストエディション」の事前予約を受け付けている「GRヤリス」だが、その先行予約が2020年6月30日までとなっている。
トヨタが次期WRCに投入する、ヤリスWRCのためのホモロゲーションを取得するためのコンペティションモデルなのだが、272ps/37.7kgmをマークする1.6L、直3DOHCターボの強心臓が搭載されている。もちろんシャシーについても徹底的に鍛え上げられている。
そんなホットなモデルが発売されるとあって注目を集めているが、過去にはGRヤリスにも負けないホットハッチが多数存在していた。今回は、自動車評論家の片岡英明氏に、そんな過激さを持っていた過去のクルマを5台選出してもらい、その横顔や過激さについて語ってもらう。
文/片岡英明
写真/TOYOTA、SUZUKI、SUBARU、HONDA、DAIHATSU、NISSAN
【画像ギャラリー】今の時代にはない過激さ!! 20世紀のホットハッチモデルたち
■20世紀の日本で高性能ホットハッチが花開いたワケ
1980年代になり、排ガス対策にめどがつくと日本の自動車メーカーは再びパワー競争に全力をあげるようになった。DOHCエンジンにすれば高回転まで回せるし、パワーも出せる。
だが、もっと手っ取り早い方法が技術革新によって見つかった。それが航空機の分野で効果を知られ、モータースポーツの世界でいち早く採用した過給機だ。ターボチャージャーとスーパーチャージャーは既存のエンジンを少し手直しするだけで装着できる。
排気量を拡大することなく最高出力と最大トルクを高めることができるのだ。トランスミッションのギア比などを工夫すれば燃費の悪化だって小さくできる。
運がいいことに、日本の税制は過給機にやさしかった。海外では高性能なターボエンジン搭載車には高い税金や保険料が課せられる。が、日本ではターボやスーパーチャージャーを装着しても、同じ排気量なら税区分は同じだ。
だからアッと言う間にターボ搭載車が増えた。さすがに最初は高級車にターボを装着したが、少しずつ排気量の小さいクルマに過給機を搭載するようになる。また、ターボと相性がいいから、ディーゼルエンジンにも好んで装着された。そして、ついには550ccの軽自動車にも過給機付きの高性能モデルが誕生するのだ。
暴れ馬の代名詞 スズキ アルトワークス
1987年2月、衝撃的なデビューを飾った軽自動車が、スズキの軽ボンネットバン「アルト」の2代目に加えられたホットハッチの「ワークス」である。発売されたのは1987年春だ。
543ccのF5A型 直列3気筒エンジンをDOHC4バルブに設計変更し、これにターボとインタークーラー、電子制御燃料噴射装置を追加した。
また、水冷式オイルクーラーや白金プラグなど、上級クラスを凌ぐ走りの装備をおごっている。スペックは強烈だ。最高出力はネット値で64ps/7500rpmとライバルを圧倒し、タコメーターの目盛りは1万2000rpmまで刻まれている。最大トルクは7.3kgm/4000rpmだった。
ターボで武装したF5A型エンジンは、レーシングエンジンのように高回転まで気持ちよく回り、ターボの過給も荒々しい。全幅は1395mmと狭いし、ホイールベースも短い、そしてボディも軽いからジャジャ馬だ。
とくにFF車は暴れ馬だった。スタビリティ能力の高いフルタイム4WDを設定したのもうなずける。刺激が強すぎたため、このワークス以降、軽自動車には上限64psのパワー規制が設けられた。
コメント
コメントの使い方