「暴れん坊」というとネガティブな印象が強いが、クルマというのは、ちょっとくらい暴れてくれないとつまらない。
そこで本稿では「暴れん坊」を、文字どおり暴れやすいという意味と、はっちゃけていて運転が楽しい! というニュアンスの両面から考察していく。
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※本稿は2020年5月のものです/文・写真:ベストカー編集部/初出:『ベストカー』 2020年6月10日号
■洗練された最新車だからこそ、暴れん坊は貴重なのだ!!!
まず日本車の暴れん坊を探してみると、令和のこの時代、暴れん坊はめっきり少なくなったことを思い知ったしだい。発売当初は悪い意味で暴れていたのに現在では改善されているクルマが大半だ。
そんななかで頭をひねりつつトップ10を独断で選んでみると、まず10位は、シビックのタイプRじゃなくてハッチバックとしたい。

タイプRのほうが断然パワフルだけど、空力の追求や電制ダンパーの採用が効いてスタビリティも凄く高いので、実は暴れん坊という感じじゃない。乗り心地も望外なほど快適だ。
一方のハッチバックはエンジン特性がちょっとピーキーで、足回りも引き締まっていて、基本は安定していながら適度にワイルドな面があって、そこが楽しい。おりこうさんだけどプチ暴れん坊だ。
9位は86/BRZ。ただし、誤解なきように述べると、最新版はかつてに比べると別物といえるくらい洗練されている。世に出た当初の両車は、超テールハッピーな86に対し、BRZも安定しているようで唐突にスピン挙動が出たりと、要するに味は違えど双方とも危なっかしかった。

それからするとマイナーチェンジ後の両車は隔世の感があり、時間の経過とともにだいぶ似てきて、出来のよいFRスポーツになった。とはいえ軽量で適度にパワーのあるFR車だから振り回して楽しめるところは変わらない。
8位はクラウンのRS。ほかのクラウンはこれまでどおり快適性重視だけど、RSだけは別物で、クラウンなのにここまでやるかと思うほどの刺激的な走りに仕上がっていて、ドライバーズカーを目指したことがヒシヒシと伝わってくる。クラウンRSにとって、“暴れん坊”は誉め言葉だ。

7位は日本のホットハッチのなかで最もヤンチャな香りのするマーチNISMO Sだ。低速トルクを重視した専用開発の1.5Lエンジンはパンチが効いた加速を示し、軽量な車体と強化された足回りの組み合わせにより、スパルタンな走りが印象的。

続く6位も日本のホットハッチの雄、スイフトスポーツとしたい。レスポンスがよく下からパワフルなターボエンジンがキモ。

ふつうに乗るぶんには快適性も操縦安定性も充分に高いのだが、ひとたびESPをOFFにして攻めると豹変して、けっこうなじゃじゃ馬になる。そのギャップがまた印象的だ。
■1~5位はハイパワー車が続々!
そしていよいよ5位から先は、ハイパワーなFR車が続々と出てくる。まずはスープラ。

俊敏な回頭性と針に糸を通すかのようにシャープな操縦性を味わえるのが醍醐味。ただし、狙ったラインからずれるとハンドリングはなかなかシビアで手にあまる面も。そこが微妙に暴れん坊だ。
4位はスカイライン400R。レスポンシブでパワフルなエンジンの吹き上がりは絶品! ハイブリッドには設定のない電子制御ダンパーが標準装備されるのもうれしい。

ただし、足回りは根本的にストロークが不足気味で路面の影響を受けやすく暴れがち、という気になる部分もあるが、とっても印象的な1台なので、よい意味での暴れん坊として上位に選んだ。
そしていよいよトップ3。ここでGT-Rの登場だ。

数年前までのGT-Rだったらおそらく1位に選んだはずだが、今の標準のGT-Rは洗練されて快適性が引き上げられている。それにGT-Rの場合はリアが暴れてもフロントで引っ張ってくれるので、攻めても安定している。
とはいえ570psものパワーを秘めた本当は暴れん坊将軍である素性は隠しきれず。ひとたびアクセルを踏みこむと、その片鱗がいやでも垣間見える。
2位は、これまた日産の長寿スポーツカーであるZだ。GT-Rが途中で大きく走り味が変わったのに対し、Zは基本的に出た当初とあまり変わっていないのがよくも悪くも持ち味。

ガサツだけど力強く吹き上がるV6エンジンや、ストロークが不足気味で路面にとられてあっちこっち行きたがる足回りなど、あまり走りは洗練されていないが、いかにも古典的なFRスポーツらしい豪快な走り味は、まさしく暴れん坊という言葉が似合う。
そして1位はレクサス RC Fだ。大排気量のV8エンジンは、荒々しくも上品な自然吸気ならではの絶品サウンドを放ちながら力強く加速してくれるし、独自のTVDによりグイグイ曲がるハンドリングも刺激的で楽しい。若い頃の凛々しい松平健のように、洗練された暴れん坊という感じだ。
