まさに「別格」 マツダの傾奇者 伝説のAZ-1はいまいくらで買えるのか?

 昭和の終わりから平成の初めに掛けて日本を覆っていた「バブル景気」。今年で、50歳を迎えた筆者は、バブルの恩恵はほとんど受けられなかったが、同期の多くは一流企業へ就職が内定するなど恩恵を受けていた。

 このバブル景気は功罪があるのは間違いないが、自動車業界にとって“功”だったのは、1989年が国産車のビンテージイヤーとなったこと。そして、後にA・B・Cと呼ばれる個性派軽自動車が登場したことは挙げられる。

 そこで、今回はバルブ景気のおかげで登場したA・B・Cと呼ばれる個性派軽自動車の中でも最も過激で個性的なマツダAZ-1とその兄弟車スズキキャラの中古車事情に迫ってみる。

文:萩原文博/写真:MAZDA、HONDA、SUZUKI

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AZ-1のスペシャル感は別格

A・B・CトリオのAことオートザムAZ-1。1992年4月にデビューした軽ミッドシップスポーツで、車両価格は149万8000円だった

 改めて、個性派軽自動車A・B・Cとはどんな車種だったのかというとAはマツダAZ-1、Bはホンダビート、Cはスズキカプチーノである。

 当時実用車中心だった軽自動車のラインアップに衝撃的なスポーツカーが一気に3台が登場したのだ。

 筆者はバブル崩壊直前に業界に入っていたため、就職面での恩恵はなかったが、この3モデルはリアルタイムで体験できたことは個人的にはバブルのおかげと感謝している。

 その中でもAZ-1は現在の安全性を含めた軽自動車の規格では到底販売することができないシロモノなのだ。

A・B・CトリオのBことホンダビート。1991年にデビューした軽ミッドシップオープンスポーツで、車両価格は138万8000円だった(ベースグレード)

ビートの中古車情報

A・B・CトリオのCことスズキカプチーノ。1991年にデビューした軽FRオープンスポーツで、車両価格は145万8000円だった(ベースグレード)

カプチーノの中古車情報

AZ-1はスズキ製エンジンを搭載するマツダ開発車

 オートザムという今は亡き販売チャンネルから発売されたAZ-1は1992年9月にデビュー。そして兄弟車(OEM車)のスズキキャラはちょっと遅れて1993年11月にデビューした。

 660ccのエンジンを運転席後方のミッドシップに搭載し、2枚のドアは上方へ開くガルウィングドアを採用するなど、まさに小さなスーパーカーという仕様なのだ。

ミッドシップレイアウト、大きく開くガルウイングドアを採用した2シータースポーツということで、スーパーカー的な非日常性があるAZ-1

 ミッドシップに搭載する直列3気筒ターボはスズキ製だが、開発はマツダのみで行っている。

 ボディの外装パーツには軽量化のため、FRPを採用。

 ルーフは当時流行したガラス張りのキャノピーデザインを採用。光の透過率を30%に抑えたセラミック処理を施したガラスをルーフ部に採用しているものの、運転中に直射日光が当たると頭頂部から汗が噴き出すほど暑かった。

 AZ-1のハンドリングは当時類を見ないほどソリッドかつリスキーだった。軽量ボディ+ミッドシップエンジン+ロックトゥロック2.2回転という仕様は荷重移動が機敏すぎて、コーナリング中に姿勢が乱れるケースが多かった。

ウェストラインの中間より下部分をブラックアウトすることでスポーティに見せた。ルーフはガラス張りのキャノピーデザイン。窓はほとんど開かない

 実際に運転していて、一番ビビった瞬間は、登り坂を走行中にハンドルの重さがどんどん軽くなり、操舵感が無くなったことだ。

 これは当初、フロントに搭載する予定だったスペアタイヤが衝突実験の際に変更された影響と考えられる。

 試乗したクルマにはフロントのトランク部分に布袋に入った砂が積んであったのにも関わらず、フロントがリフトしてしまうほどリア荷重のクルマだった。数多くのミッドシップ車を運転したが、こんな感覚はAZ-1しか感じられなかった。

AZ-1とキャラを合わせても5000台弱の希少車

 AZ-1は1994年10月に生産終了し総販売台数は4409台。そしてキャラは1995年12月まで生産され、531台が販売された。生産終了から約25年が経過した現在、AZ-1そしてキャラの中古車はどれくらい残っているのだろうか。

 現在、AZ-1の中古車の流通台数は約12台で、3カ月前が約13台だったので、ほぼ横這いで推移している。流通している中古車の平均走行距離は3カ月前が約7.6万kmで、一時は10万km近くまで行ったが現在は約8.4万kmまで延びている。

AZ-1は挙動が非常にセンシティブゆえに、乗り手を選ぶクルマと言える。誰にでも薦められるものではないが、熱狂的なファンが存在する

 そしてAZ-1の平均価格は3カ月前が約180万円で、今月は約173万円と値落ち傾向となっている。ちなみにAZ-1のデビュー時の新車価格は149万8000円ということで、新車価格を上回っている。

 いっぽうのキャラはもはや絶滅寸前で、流通台数は3カ月前の4台から現在は2台へと減少。平均走行距離はAZ-1より短く、現在は約6.3万km。

 そして平均価格の推移は3カ月前が約234万円で。今月は約150万円と大幅ダウン。しかしこれは価格の高い中古車が市場から消えたことによる影響で。現在の水準が適正価格とも言える。

AZ-1より約4カ月遅れでデビューしたスズキキャラ。AZ-1との違いは前後のエンブレムで、販売台数はAZ-1よりはるか少ない531台

AZ-1の中古車情報

キャラの中古車情報

数が少ないから相場が荒れる

 3カ月スパンでは値落ちしていたAZ-1そしてキャラだが、平均価格の推移を1年というスパンで見てみると、約1年前のAZ-1の中古車の平均価格は約155万円で、そこから徐々に値上がりして、2020年2月はピークの約184万円を記録。

 その後は値落ちして約173万円となっている。それでも1年前から比べると18万円も値上がりしているのだ。

A・B・Cトリオでは、カプチーノがレストアの先鞭をつけ、ビート、AZ-1にも波及。当然ながら程度に合わせて中古車価格はかなりアップしている

 いっぽうのキャラは中古車の流通台数が少ないこともあり、荒れ気味。1年前の平均価格は約200万円で、その後2020年2月のピーク時は約236万円まで上昇。その後は高価格車が市場から姿を消し約150万円まで下がった。

 一見、値落ちはしているものの、高価格の中古車が流通すると、一気に跳ね上がる可能性も含んでおり、ブレ幅が大きいのだ。

 AZ-1の中古車の価格帯は約138万~約255万円と非常に幅が広く、約25年前の軽自動車としては超プレミアム価格と言える。

 しかし、これら販売されている中古車の多くはエンジンをオーバーホールされているなどプチレストア車なのだ。

 先ほど紹介したビート、カプチーノも同様で、まず、カプチーノがレストア済中古車を販売し始めると、中古車相場が上昇した。

 その動きがビートに移行し、現在はAZ-1となっているのだ。

 しかし、3車種の中で圧倒的に販売台数の少ないAZ-1はカプチーノやビート以上にプレミアム価格となっているのだ。

  ジャパニーズスモールスーパーカーと称したいAZ-1。

 山椒は小粒でぴりりと辛いという風に、コンディションだけでなく、そのハードかつタフな走行性能も乗り手を選ぶため、軽い気持ちで手に入れることをオススメできないクルマだ。

1994年にはマツダスピードバージョン、M2-1015(写真)という2種類の限定車が販売された。

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