いまだ緊急事態宣言も解かれぬ4月-5月のこと。ベストカーでは取材先の選定に頭を悩ませていた。なにせ発表会も中止(または延期・オンラインでの実施)、試乗会も中止、広報車の貸し出しも中止……。どうすんだこれ。
だがそんな中だからこそ、というべきか、普段はあまり乗ることのないクルマたちに試乗して回ることができた。題して「珍グルマ試乗紀行」。今回はUK CLASSIC FACTORYの「ACコブラ427&ランチアストラトス編」をお届けしよう。
【画像ギャラリー】マニアも納得の出来!!! “ホンマモン”のレプリカ2台をギャラリーでチェック!!!
※本稿は2020年5月のものです
レポート:フェルディナント・ヤマグチ/撮影:平野 学/協力:UK CLASSIC FACTORY
初出:『ベストカー』 2020年6月10日号
■侮ってはいけない本物感満載の獰猛な2台 走りも超本格的!!!
いや恐ろしいですね、新型コロナウイルス。
その影響は各方面に出ておりまして、飲食小売に宿泊業は言うに及ばず、我が国の基幹産業たる自動車メーカーも生産を止めてしまい、サプライヤーである鉄鋼、ゴム、ガラスなどの関連産業も足元からグラグラと揺らいでいます。
クルマ界隈の物書きにとってもその影響は少なくありませんで、何より深刻なのが、「広報車の貸し出し停止」であります。
クルマに試乗しなければ評論もクソもありませんからね。
現在、国産メーカーも大手インポーターも右に習えの全社貸し出し停止状態。いやはや困りました。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。こんな時期でも、勇猛果敢に試乗車を提供してくださる会社はあるものです。
英国車を専門に扱う「UK CLASSIC FACTORY」。
オーナーの勝見祐幸氏が軽井沢の別荘用に、と中古のレンジローバーを購入したのが運の尽き。
以来ローバーの魅力にドップリとハマってしまい、ついには自らが輸入販売まで手がけるようになったという一風変わった経緯の会社です。
その勝見氏が、足繁く通っていた英国で見つけてきたのが今回ご紹介するACコブラ427とランチアストラトスのレプリカ車。
レプリカと聞いてナーンダと侮ってはいけません。
適当な車台に適当なガワを乗せた“適当レプリカ”とは根本から違う、イチからフレームを起こし、オリジナルをはるかに凌ぐ性能にまで仕立て上げたモンスターマシンなのであります。
まずはコブラ。レプリカ車のキットメーカーとしてその名も高い英AKスポーツカーズ社が自ら組んだ貴重な貴重な1台です。
キットを購入した顧客がコツコツと自分で組み上げていくのがキットカーの本来の姿であり、また醍醐味でもあるのですが、時間も場所も技術もないよ、という方が大半ではありますまいか。
そんなモノグサ顧客のために、キットカーの組み立てを専業で行うファクトリーもあるにはあるのですが、そこがまた玉石混交のビミョーな世界でありまして。
何か不具合が出ると「もともとのキットがクソだから悪い」「いや、組み立て方がヘボだから悪い」と責任の擦りつけ合いになるのですね。
こうなるとお客はお手上げで、ツテを辿ってどこかの修理工場に持ち込んで、徹底的にムシられることになるワケです。カモネギですもの。
ですが、このコブラはキットを作った張本人が組んでいるのだから安心。
軽量ボディに6.2Lスーパーチャージャー、635psの超強力エンジンを押し込んだ車体は暴力的とも言える加速でありまして、不用意にアクセルを踏むと簡単にホイールスピンを起こしてしまう。
よく強力な加速を表現するために「背中を蹴られるような」なんて言いますが、とてもそんなレベルではない。蝶野正洋選手にヤ●ザキックで背中をメッタ蹴りされたような衝撃です。
一方、ぶっといトルクは実に運転がしやすくてムチャさえしなければロードスターよりもラクチンに街乗りができる。ジキルとハイドのような両面を持ついいクルマです。
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