一口に「良いデザイン」といっても、様々なものがある。クルマひとつとってみても、流麗なモデル、武骨なモデルに感じる美しさ、はたまた機能美と、その物差しの当て方は様々、そして人それぞれだ。
ただ、そうした自分なりの「美しいもの」に接したときに湧き上がる「…いいなあ」という思いは、物差しは違えども、誰にでも等しく訪れるものかもしれない。
こと「カーデザイン」というと、欧州車がリードしているイメージがあるが、日本車にもこれまで秀逸なデザインのクルマが輩出されてきた。それこそ欧州メーカーの担い手を唸らせてきたモデルだってあるのだ。
そんなクルマ好きたちの心を捉えて離さない、秀逸なデザインのクルマたちを集めてみた。
【画像ギャラリー】キューブ ジムニー セリカ… 国産車のデザインの歴史を彩った10台+αをギャラリーでチェック!!!
※本稿は2020年5月のものです
選出と本文/清水草一
初出:『ベストカー』 2020年6月26日号
■21世紀から大きく進化したデザイン。だが、最近の日本車が優勢ではない!
日本車のデザインは、21世紀に入ってから長足の進歩を遂げた! 最大の理由はグローバリゼーション!
以前は国内の保守的なユーザーを重視した、毒にも薬にもならないデザインが多かったが、海外市場の重要性が高まるにつれ、デザインが国際基準に合うようになった、と考えております。
ただ、10ベストとなると、必ずしも新しいものが優勢、とはならない。昔から乾坤一擲的なデザインは数多く存在したからネ!
デザインに感動した日本車10台の筆頭は、なんといっても現行ロードスターだ。これはもうテッパン! あのコンパクトさであのグラマラス感!
初代ロードスターも大傑作だったが、あちらはサイズなりの親しみやすいデザインだった。ところが現行ロードスターは、サイズはほぼ同じでまるでスーパースポーツ!
すさまじいばかりの傑作だ。初代ロードスターも入れたいところだけど、現行モデルはその超絶正常進化形ということで、合併させていただきました。
続くは、軽自動車に革命をもたらした初代ワゴンR。
あのシンプルさ、あのユーティリティ。まさに究極の機能美。かのガンディーニ氏(編集部註:イタリアの工業デザイナー。アルファ、アウディ、フィアット、フェラーリなど、代表作を挙げればきりがない)も、世界で最も優れた自動車デザインと激賞したほどだ。
現在国内市場で主流を占めている軽ハイトワゴンや5ナンバー箱型ミニバンは、すべてワゴンRの発展形と言っていいだろう(ステップワゴンが出たのはワゴンRの3年後)。
忘れちゃならないのは初代フェアレディZだ。この単純明快なカッコよさ!
モチーフはフェラーリデイトナあたりだが、日本車の海外進出にあたって多大な貢献を果たした点も見逃せない。歴代日本車で一番単純明快にカッコいいクルマはコレ! と今でも思っている。
2代目キューブも革命的なコンパクトカーだった。それほど全高の高くない、ほぼ立方体というデザインは、結局このクルマだけ。
海外の識者からも「遅そうなデザイン革命」と絶賛された。キューブの命脈は最近絶たれてしまったけれど、歴史にはしっかり名を残したぜ!
現行ジムニーの、ウルトラ邪心のないそのまんまダイレクトなデザインにも心底感動した。
スケベ心がまったくない! たくらみがない! そのまんまです! これがクロカン4WDです! と目の前に突き付けられると、グゥの音も出ません!
ところでホンダデザインはどうなのか? と思い起こすと、一番輝いていたのは1980年代でしょうか。ワンダーシビックやグランドシビック、アコードエアロデッキなどの一連のシンプルで美しい砲弾型フォルムが最も秀逸だったのではないか。
そのなかから1台選ぶと、バラードスポーツCR-X!
あのコンパクトさ、あのシンプルさ。美しくも軽快すぎるデザインじゃないですか! 次のサイバースポーツCR-Xも素晴らしかったけど、シンプルさでは初代が上。
先代、つまり3代目デミオの前期型も最高だったなぁ。コンパクトながらシンプルで躍動感満点。後期型はちょっとデコでいまひとつだけど。
S660も大傑作だ。なにせあのサイズでカウンタックを作ったようなもんだから! よくバランス取ったもんですよ。スゲエ! こんなの絶対日本車でしかありえない!
個人的には、流面形セリカが忘れられない。あれもシンプルで本当に流麗だった。ダルマセリカより流面形!
地味ながら、先代スイフトの美しさも忘れちゃいけない。あんな美しく張りのあるおケツはありません! 今でも見るたびにホレボレ。
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こうして見ると、日本車の秀逸なデザインは、コンパクトカーとスポーツカーに集中しております。
セダンにもいいのはあったけど、インパクトがちょっと弱い。でもまあ日本車は、基本的には挑戦者。これでいいのだ!
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