いまからもう30年以上の話。軽自動車にありったけの技術を注ぎ込み、文字通り弾丸のような速さとパワーとを目指したモデルが次々に生まれ、クルマ好きたちを熱狂させた時代があった(名前に「DANGAN」と付けちゃったモデルまであるくらいだ)。
凶暴なまでのパワー・スピードを誇り、そしてそれが故にこの先二度と現れることはないであろう「小さな暴れん坊たち」の系譜を振り返ってみよう。
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※本稿は2020年6月のものです
文:片岡英明/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年7月26日号
■三菱ミニカエコノにターボ装着がパワー戦争の引き金を引いた
1980年代の軽自動車の主役は、税制面で優遇されている軽商用のボンネットバンだった。最初はベーシックに徹していたが、1983年に三菱ミニカがアミLターボを投入するとパワー戦争が勃発する。
1985年夏、ダイハツはすべてを一新したL70系ミラを送り出した。そして10月に52psの3気筒SOHCインタークーラーターボを積むターボTRをベースに、精悍なエアロパーツを装着し、イエローバルブのヘッドライトなどを採用した「ターボTR-XX」を設定している。
その走りは鮮烈で、足は4輪独立懸架だったが、それでもよく跳ねた。
ライバルのスズキは、1986年に軽自動車初のDOHC4バルブエンジンを積み、燃料噴射装置を装着したRSを送り込み、1987年2月には超過激なアルトワークスを投入する。
543ccの直列3気筒DOHC4バルブインタークーラーターボはネット64㎰のスペックだ。9500rpmまで瞬時に回り、FF車は暴れ馬だった。4WDモデルのほうがはるかに安心して操れた。
三菱も負けてはいない。ベビーギャングはクラス初の3気筒DOHC5バルブインタークーラーターボを積む「ダンガンZZ」だ。
こちらもジャジャ馬だったから遅れてフルタイム4WDを追加する。550ccのホットバージョンは、どのクルマも過激だったから64㎰の馬力規制が入った。
1990年春、排気量を660ccに拡大し、全長も10cm伸ばした。バブル景気に浮かれ、1991年にはスポーツカー的なベビーギャングも誕生している。
ホンダのビートはミドシップにフルオープンを組み合わせ、痛快な走りを楽しませてくれた。自然吸気の3気筒SOHCもパンチがある。
この直後にスズキはFRスポーツのカプチーノを、マツダはミドシップのAZ-1を送り出した。どちらもアルトワークスのパワフルなDOHCターボを積むから刺激的な加速を見せる。AZ-1はハンドリングもレーシングカーのようにシャープだ。
スバルのヴィヴィオにもベビーギャングがあった。4気筒DOHCにスーパーチャージャーを装着した「RX-RA」で、ラリー仕様まで設定した。
サーキットで鍛えたから、群を抜く運動性能を誇る。新規格になった1998年以降ではスズキのKeiワークスと復活した現行アルトワークスが強烈な速さだ。
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