モデリスタは長年にわたってトヨタ車やレクサス車をカスタマイズして、独自のモデルを世に登場させてきた。
2018年にTRD、トヨタテクノクラフト、ジータックスと統合され、ドレスアップに特化した感はあるが、精力的に開発を進めている。
20年以上の歴史があり、今では知名度も高くなっているが、モデリスタってどんなことやっているのか? という疑問を持つ人もいるだろう。
創業から現在までそのモデリスタの過去のモデル、最新モデルについて見ていき、どんな仕事をしてきたのかを考察していく。
文:大音安弘/写真:TOYOTA、MODELLISTA、池之平昌信、ベストカー編集部
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ドレスアップだけでなくコンプリートカーも販売
トヨタ車の後付けカスタマイズ用品を手掛けるモデリスタの歴史は、1997年2月、トヨタモデリスタインターナショナル、モデリスタ神戸、モデリスタ福岡の設立に始まる。
バブル崩壊後の新車市場の閉塞感の突破口として、カスタマイズ事業に取り組むことを目的としていた。
2002年には開発を主導する「トヨタモデリスタインターナショナル」に統合されるが、独立した組織であることに変わりはなかった。
モデリスタとは、イタリア語でデザイナーを意味する。そのため、当初よりドレスアップに重きを置いてきた。
設立後の初作品となるコンプリートカーは、1997年リリースの「サーフPX01」だ。
当時、人気の高かったハイラックスサーフをベースに、専用エクステリアを中心に、サスペンションやマフラーなどのチューニングを加えたモデルで、専用丸目4灯ヘッドライトやワイドフェンダーを与えるなど、凝った作りであった。
このPX-01を皮切りに、さまざまなコンプリートカーを投入。
初期作品である「PXシリーズ」は、VIVIOビストロなどのレトロデザインのブームを受けたクラシック路線のモデルも多かったが、度肝を抜くモデルも存在。
それが「ランクルダブルピックアップPX20」だ。なんとランドクルーザー80のラゲッジルームをくり抜いて、荷台を付けたアウトドアレジャービークルであった。
メーカー直系ながら、異なる価値を提供しようとしたモデリスタの意気込みをヒシヒシと感じるモデルである。
当時話題のアルテッツァを魅力的に変貌
1999年以降のモデリスタは、ドレスアップに主軸を置くのは同様だが、トータルバランスを追求したコンプリートカーの要素を強めていく。
その走りといえるのが、ハチロク的セダンとして脚光を浴びた「アルテッツァ」をベースとした1999年6月発売の「アルテッツァ クオリタート」だ。
アルテッツァの基本デザインを活かしたスポーティなエアロパーツを纏い、インテリアも赤を基調とした専用仕様へと変更。シビエ製フォグランプとフジツボ製スポーツマフラーが奢られていた。
さらにオプションに走行性能を高めるチューニングパーツを用意していた。因みにスーパーレッド外装色を採用した「クオリタート スーパーレッド」も翌年に追加された。
MR-Sベースの完全オリジナル車
ドレスアップにとどまらず、完全オリジナルカーにも挑戦した。
それがMR-Sをベースとしたモデリスタオリジナルモデル「カセルタ(2000年)」と「VM180ザガート(2001年)」である。
カセルタは、モデリスタ設立3周年を記念した限定車で、18世紀に建造されたイタリア南部の王宮の名が与えられているように、クラシックなイタリアンスポーツカーを意識した上品なスタリングが持ち味であった。
ボディパネルにはカーボンファイバーを多用した贅沢なもので、上級の「ラグジュアリー仕様」は、専用仕上げのレザー内装となり、その世界観を高めていた。
翌年投入された限定車「VM180ザガート」も贅沢な一台。
デザインは、ザガートの日本人デザイナー原田則彦氏によるもので、外板パーツをほぼ新設。スポーティな見た目に合わせて、TRDによるライトチューンが施されているのも特徴であった。
ザガートのコラボレーションは、ハリアーでも行われ、1998年の初代と2006年に2代目をベースに、専用エアロでドレスアップした限定車を送り出している。
モデリスタがレクサスLMにも影響を与えた!?
ドレスアップのイメージが強いモデリスタだが、独自の高級車の在り方にも挑戦。
その第1弾が、「エスティマハイブリッド “モバイルオフィス“」だ。ハイブリッドによる最大1500Wの電源供給機能を活かし、車内でパソコンやFAXなどの利用を可能とした動く社長室に仕立てた。
贅沢な作りのキャビネットで仕切られた後席スペースは、豪華な専用キャプテンシート2座だけとした4名乗車仕様であった。このモデルは当時、トヨタの張富士夫社長(当時)が専用車としても導入された。
その後、2006年6月発売の初代アルファード「ロイヤルラウンジ」へと発展。2代目アルファード/初代ヴェルファイアにも2008年に設定された。
そして、現行型となる3代目にも2015年に設定される人気モデルとなった。現在は、販売を終了しているが、そのコンセプトは、中国向けレクサスミニバン「LM」にも影響を与えたといわれている。
チューンナップモデルも精力的に登場させた
もうひとつモデリスタで忘れていけないのが、チューンナップモデルだ。グループ企業と連携し、数々のスポーツモデルを送り出してきた。
そのなかでも強烈な記憶を残すのが、2001年8月に、300台限定で投入された「クラウン・アスリートVX」だ。
マークIIツアラーV譲りの2.5L、直列6気筒ターボを積む「アスリートV」をベースに、ヤマハがトータルチューニングを手掛けたもの。
この知見は、2カ月後に投入された第2弾モデル「マークIIツアラーVフォーチュナー・ヤマハパワー」にも活かされた。
マークXとなっても、チューニングコンプリートカーの設定は続けられ、2006年4月に初代をベースとした「マークXスペシャルバージョン スーパーチャージャー」を100台限定でリリース。
3L、V6エンジンに、スーパーチャージャーを組み合わせることで、最高出力320ps、最大トルク412Nmまで性能を向上させたモンスターセダンであった。その後、一部仕様を変更し、まさかのカタログモデル化。
この流れは、最後のマークXとなった2代目にも受け継がれ、一部の人々を恐怖に陥れる!?羊の皮を被った狼「マークX +Mスーパーチャージャー」に進化した。
マークX仕様があまりにも有名過ぎて忘れられているが、「+Mスーパーチャージャー」は13代目クラウンが元祖である。
2018年以降はドレスアップに特化
現在、トヨタモデリスタインターナショナルは2018年4月の組織変更により、TRDや特殊車両などを手掛けた「トヨタテクノクラフト」と海外向け車の用品や特殊車両などを手掛けた「ジェータックス」を統合した「トヨタカスタマイジング&ディベロップメント」となった。
モデリスタは、そのなかのドレスアップを中心としたカスタマイズブランドである。
伝統のアグレッシブな商品開発の姿勢は今も息づいており、トヨタからレクサスまで幅広い乗用モデルのほとんどにドレスアップパーツを展開している。
最新モデルも芸の細かさが魅力
最新作を見ていくと、アルファード「タイプゴールド」とヴェルファイアの「ゴールデンアイ」のように、兄弟車でも個性が際立ち独自の世界観を提供。
もっと驚くのが、RAV4とRAV4PHV用のエアロデザインをそれぞれ作り変えるところだ。本当に、芸が細かい。このあたりは、モデリスタ伝統の職人魂を感じさせるところである。
個人的には、スタイリッシュSUV「C-HR」の「ブーストインパルススタイル」がオススメだ。大型フロントスポイラーが、低いシルエットを強調し、C-HRのクーペライクなスタイルが際立つからだ。
最近のセダンやハッチバックは、ベース車のデザインがかなりスポーティになっているが、やはり全高の高いSUVやミニバンとの組み合わせが、モデリスタの魅力が光るところだと思う。
ただ「GR」シリーズの誕生などで、モデリスタの役割も変化した。
今後、モデリスタの名を冠した羊の皮被った系のモデルが誕生する可能性が低いことは、少し残念だが、裏を返せばドレスアップに特化することで、これまで以上にエモーショナルなものが登場することに期待したい。
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