世界中の自動車会社でアライアンスなどとよばれる業務提携が進んでいる。日本でもトヨタがスバルとマツダと提携をおこない、EV事業などの効率化を図ろうとしている。
しかし、いったいトヨタからみてどちらが優等生なのか? 鈴木直也氏が技術的な面からも含めてレポート。
今、トヨタから見て優秀なメーカーはスバルか? それともマツダなのか?
文:鈴木直也/写真:フォルクスワーゲン
ベストカー2017年11月10日号「クルマの達人になる」
■なぜスバルやマツダがトヨタと協業をするのか!?
スバルやマツダがトヨタに期待しているのは、言うまでもなく「寄らば大樹の陰」という安心感。クルマの電動化や自動運転など、自動車業界は大きな変革期を迎えつつある。
年産100万台スケールのメーカーで、この荒波を乗り切る巨額の投資を賄うのは不可能。つい先日もトヨタ、マツダ、デンソーの3社共同でEV開発会社が設立されたが、こういう協業が今後も増えてゆくだろう。
また、次世代のクルマはEVにしても自動運転化にしても「標準化」が避けて通れない。
典型的なのがEVの充電コネクタ規格で、先行する日本がCHAdeMOを標準化しようとすれば、欧州はCOMBO、中国はGB/T、テスラに至っては独自のスーパーチャージャー規格で対抗してくる。標準化競争は規模の勝負。
オールジャパンを期待されているトヨタとしても、仲間は多いほうがいいのだ。
【トヨタの提携メリットは?】
いっぽう、トヨタ側から見た提携のメリットについてだが、豊田章男さんに聞かないと本当のことはわからないものの、少なくとも経済紙が書くような「トヨタが持っていない技術(例えば水平対向AWDとかSKYACTIVとか)が欲しかった」という低次元な話ではない。
トヨタほど巨大なメーカーになると、少なくとも試作研究レベルではありとあらゆることを試している。
だから、例えば水平対向エンジンにしても、作れないのではなく(コスト的に引き合わないから)やらないだけ。「ウチでは採算が取れないけど、スバルさんで作ればきちんと利益が出るならお任せしよう」。こういう経緯で86は生まれている。
つまり、トヨタ(あるいは豊田章男さん)が注目しているのは、トヨタだったらボツになるような技術や商品企画が、なぜスバルやマツダでは量産OKとなってビジネスとして回せるのか? その企業カルチャーの違いはいったい何に由来するのか? むしろ経営哲学に関する部分ではないかと思うのだ。
【スバルよりマツダのほうが高評価?】
そういう意味では、豊田章男さんはスバルよりマツダを評価しているように見える。先に「トヨタくらいになるとあらゆる技術を試してる」なんて書いたけど、マツダについてはちょっと例外だ。
マツダの開発陣は、エンジンにしてもシャシーにしてもトヨタが発想すらしないユニークなところを深掘りする。
ぼくらジャーナリストから見ても、とてもサラリーマンとは思えない人ばっかり。リスクをとって異常な熱意で技術開発に取り組むヲタク集団としかいいようがない。
この、マツダのユニークで熱い企業文化を、豊田章男さんは評価したんだと思う。象徴的なのが今年8月に合意した提携で、お互いの株を500億円ずつ持ち合う”相互出資”としたこと。
これまでトヨタの資本提携は数あれど、提携相手に自社株を渡すのはこれが初めて。日経新聞は「いまどき株の持ち合いは古い」とかトンチンカンなことを書いていたけど、ぼくに言わせればこれはトヨタが贈ったエンゲージリング。
むしろマツダへのラブコールそのものだ。いずれにしても、提携から生まれる魅力的なニューモデルに、大いに期待したいものであります。
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