日産の正念場はここから!! 無事に復活できるのか???

日産の正念場はここから!! 無事に復活できるのか???

 先日行われた、日産「フェアレディZ」のプロトタイプ発表会。海外からのアクセスも含めると数十万人がオンタイムで見ており、日産のエンジニアやデザイナーによるプレゼンテーションに胸を熱くしたのは、筆者だけではないだろう。クルマの評判も上々で、いま最も関心が高まっている、国産スポーツカーだ。

 日産に関しては、SNS上では批判的なコメントが多い。「日産になら何を言ってもいい」くらいの勢いさえ、感じられるほどだ。もちろん、ここ数年、良くないニュースばかりが取り沙汰されたこともあり、「自業自得」という面もあるのだろうが、それだけが理由ではないような気がする。

 なぜ日産は叩かれてしまうのだろうか。そして日産は、どういった道筋を辿れば、無事に復活を果せるのだろうか。

文:吉川賢一
写真:NISSAN

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日産ファンのイライラがつのった

 もちろん、日産を叩く理由は人それぞれだろう。SNS上でも「日産はすでに日本のメーカーじゃない」とか、「(海外へ逃亡した)元社長が気に入らない」等々の書き込みをよくみる。

 その理由としては、やはり、ここ数年の社内政治問題や、無資格者による完成車検査問題などで、日産という会社の信頼性が、地に落ちてしまった、ということがあるだろう。しかし筆者は、日産が叩かれる理由は、それだけではないと考える。

 もともと日産には熱狂的なファンが多い。ここ1~2年、日産は、国内市場に新型車は出さず、モデルチェンジさえも永らく行われず、ラインアップは放置状態。もはや日産は、国内市場を捨てているようにも思えた。

 加えて、社内政治などの不祥事が明らかとなったわけだ。日産に対して、業を煮やし、「裏切られた」と感じた日産ファンは多かっただろう。

 これら日産ファンの「裏切られた」という気持ちが、過剰な言動に繋がっている部分も多いのではないか、と感じる。しかし、叱ってくれるファンがいる、というのは、大きな日産の強みでもある。

自動車メーカーの威信をかけたモータースポーツへの参加も、国内スーパーGTを除いてなくなってしまった 以前はGT-R LMニスモでWECやルマン耐久に参戦していたが、昨年末取りやめると発表
自動車メーカーの威信をかけたモータースポーツへの参加も、国内スーパーGTを除いてなくなってしまった 以前はGT-R LMニスモでWECやルマン耐久に参戦していたが、昨年末取りやめると発表

風向きは変わりつつある

 2020年5月に行われた、2019年度決算/2020~2023年度事業構造改革計画。ここ数年の日産内部政治の体たらくに呆れた、日産株主達の怒りの矛先は、内田誠社長兼CEOへと向けられていた。株主への謝罪と、苦々しい言い訳に苦心する内田社長の痛々しい姿は、見ていられなくなるほどだった。

中央が内田社長兼CEO、最近はフェアレディZプロトタイプの発表会などで登壇する機会が増え、クルマ好きの一面をのぞかせてくれた
中央が内田社長兼CEO、最近はフェアレディZプロトタイプの発表会などで登壇する機会が増え、クルマ好きの一面をのぞかせてくれた

 そんな会の最後、あの動画が公開された。次期型Zを含む新型12車種のシルエットとイニシャルが公開された動画をみて、まず感じたのは、「いつもの日産とは違う!」だ。

フェアレディZがついに!?? 次の日産「AからZ」全12車種の正体を暴く

 これまでならば、電動化(EV含む)やコネクティッドを主体とした技術戦略を再掲示し、お茶を濁すのが日産の定番だが、今回は、イニシャルではあるが、具体的に車名を挙げての「宣言」だった。

 この事業構造改革計画の様子は、日産のYouTubeチャンネルにて、いまも視聴することができる。この動画のコメント欄は、批判的なコメントが多いと思いきや、意外にもそれなりに好意的な発言が多い。この様子からも、日産には根強いファンが多く、それらファンの方々の、日産に対しての熱い思いが、「裏切られた」という思いに繋がっていた、ということが読み取れると思う。

 さらに、そこから4か月後の2020年9月に行われた、Zプロトタイプの発表で、風向きは変わってきた。日産デザイントップのアルフォンソ・アルベイザ氏、車両製品企画トップの田村宏志氏など、作り手が前面に出てきての発表は、クルマの中身は殆ど明かされなかったのに、Zへの愛情に溢れていた。

アルフォンソ アルバイサ、専務執行役員 グローバルデザイン担当
アルフォンソ アルバイサ、専務執行役員 グローバルデザイン担当

 Zカーファン達の声(※実際には北米のZカーファンクラブの方達が鳴らしたホーンの音ではあったが)もあり、日産として、久々に血の通った発表会であるように感じられたのだ。

 ここ数年の日産に足りなかった「クルマメーカーとしての熱意」がようやく見ることができた。ファンはこれを待っていたのだ。

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