【ボルボXC40、CX-5…】いくらなんでもみんな褒めすぎ 褒められすぎなクルマたち

■過去にはあったぞ!! いまおもえば「褒められすぎ」な名車たち


このように、XC40は決して誉められすぎではないと正直者の私も断言いたしますが、過去、「あれは誉められすぎだったなぁ」というクルマはいろいろ存在した。

たとえば96年に登場した三菱ギャラン/レグナム。というよりGDIエンジンだ。確かにGDIエンジンのメカニズムは超画期的で、我々も説明を聞けば聞くほど感心し、「これはスゴイ! 三菱の技術はハンパじゃない!」と感服した。

なにしろ事実上の世界初である直噴ガソリン&リーンバーンを実現していたのだから! 登場当初は、各誌燃費テストを実施し、その低燃費を絶賛した。実際のところは、高速巡航ではそれなりに低燃費だったが、トータルでは大して燃費は良くなかった。

しかしあまりにも革新的な技術だったので、「これをホメなきゃしょーがないだろ!」みたいな空気になってしまった。デザインも、特に悪いところのないオーソドックスなセダン/ステーションワゴンで、王道を往くタイプだった。

ギャランなどに搭載されたGDIエンジン。超画期的な直噴エンジンだったのだが、まだ世に出すには早かったのかもしれない
ギャランなどに搭載されたGDIエンジン。超画期的な直噴エンジンだったのだが、まだ世に出すには早かったのかもしれない。ちなみに燃費は従来比35%減とうたっていたが……

96年登場のギャラン/レグナムは絶賛の嵐を受け、日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞したが、その後GDIエンジンそのものに不具合が多発。カーボンが蓄積してパワーも燃費も経年ごとに悪化し、最後には死んでしまうのでした!

そんなこと、長い期間乗らないとわかんないです~! いや~、参りました。なにせ三菱は、その後GDIエンジンそのものを廃止してしまいましたからねぇ。まさに絶賛倒れの極致でした。

98年に登場したトヨタ・アルテッツァも、絶賛されすぎたクルマだった。

比較的コンパクトなボディにFRレイアウト。実は自動車メディア関係者は、それだけで「これはイイ!」と思ってしまう。なにせカーマニアは保守的ですので、古典的なクルマを手放しで絶賛してしまいがちなのですよ。カーマニアの秘孔とでも申しましょうか。

私も、「このクルマは石原裕次郎だ!」と思いました。つまり誰からも愛される昭和のスターですね。石原裕次郎にケチつける気にならんでしょ? 裕ちゃんがいてくれるだけでありがたい、はぁ~裕ちゃん最高! そんな感じだったのです。

メーカーも試乗会をサーキットでやるなどやる気満々だった。「第二のAE86」なんてはやし立てたメディアも多かったが……
試乗会をサーキットでやるなどやる気満々だった。「第二のAE86」なんてはやし立てたメディアも多かったが……

これまた日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しております。しかし実際のアルテッツァは、そんなにいいクルマでもありませんでした。フツーに流してれば特に問題はなかったですが、ボディもエンジンもサスも特にいいところはなく、サーキットではアンダー/オーバーで操縦性が悪い。

アンダ/オーバーなんて言葉、最近まったく聞きませんが、まずアンダーステアが出て曲がらず、その後急激にオーバーステアになってケツが滑るという操縦特性です。初めてサーキットで乗った時は、「うわ、このクルマ、ダメじゃん!」と思いました……。

トヨタも、当初絶賛されまくったにもかかわらず、その後あまり愛をかけずに放置し、7年後、寂しくその生涯を終えました。登場当初の絶賛ぶりからすると、寂しすぎる死でございました。南無~。

■あの超高回転FRもいま思えば褒めすぎた?

もう一台あげますと、99年に登場したホンダS2000でしょうか。これまたFRの古典的オープンスポーツです。もうそれだけでカーマニアは誉めてしまうのですよ! なんか法則がわかってきたっしょ? ホメずにいられないのですよ!

エンジンは9000rpmまで回るしさぁ。当時、日本中がS2000に熱狂したと言っても過言ではありますまい。ただ私はこのクルマ、登場当初からイマイチだなと思っておりました。

オープンスポーツってのはこんなにギチギチに体育会的なもんじゃない、これでどこ走れば楽しいんだ、サーキットでしか楽しめないじゃないか! と。実際にはサーキットでも操縦性がピーキーであんまり楽しくないとか言われていたけど、私はサーキットでは乗ってないのでよくわかりません。

最後に、近年のモデルで一例を。2012年に登場したマツダの先代CX-5です。これは、スカイアクティブDエンジンのインパクトがあまりにもデカく、あまりにも画期的で、あまりにもトルクフルで、もうそれだけで恋は盲目状態。絶賛されまくりました。

クリーンディーゼルで走りもいい、という新たなコンセプトを掲げたCX-5。プロトタイプへの試乗などまでさせていたが乗り味はまだまだだった
クリーンディーゼルで走りもいい、という新たなコンセプトを掲げたCX-5。プロトタイプへの試乗などまでさせていたが乗り味はまだまだだった

しかし実はこのクルマ、初期モデルは乗り心地にとても問題があった。やたらピッチングがデカく、ハネて落ち着きがなかったのです。これを買った某カメラマン氏は、縦揺れが激しくて撮影できないということで、すぐ買い替えてしまいました。

その後足回りは改良されて、いいクルマになりましたが、こういう大きな技術的革新があった場合、誉められすぎる傾向がありますね。

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