トヨタ、マツダら国内メーカーの絶版車たちの引き際 6選

トヨタ、マツダら国内メーカーの絶版車たちの引き際  6選

基本的には、売れる見込みのある車種は、そのモデルが生産を終えてもフルモデルチェンジを行ったり後継車種を投入する。開発/製造/販売をすることで、メーカーや販売会社が儲かるからだ。
そうなるとつまり、生産を終えたクルマは「継続的に売っても十分に儲からない」と判断されたことになる。

車両の開発費用にはさまざまな計算の仕方があって一概にはいえないが、一般的にはエンジンやプラットフォームをほかの車種と共通化しても、80億〜100億円を要するといわれる。一定の台数を売って開発や金型の費用を償却する仕組みだから、売れなければその車種は赤字になり、これを避けるために長期間にわたって細々と売り続ける場合もある。

ここでは近年生産を終えたクルマの「引き際」が妥当だったのか、それとももう少し売り続けるべきだったのかを考えたい。
文:渡辺陽一郎


■ホンダCR-Z 2010〜2017年

ホンダCR-Z
ホンダ・CR-Z

2010年にホンダから発売されたコンパクトなスポーツクーペで、直列4気筒1.5Lエンジンをベースにするハイブリッドを搭載した。

ハイブリッド車は経済性が重要だから、小さくて軽く、空力特性も優れたボディに組み合わせると目的を達成しやすい。そこでホンダはクーペとハイブリッドを結び付けた。

CR-Zがデビューした時点で、クーペは売れ行きの乏しいカテゴリーになっていた。そこにハイブリッドを持ち込む柔軟な発想はホンダ的で注目され、発売直後の2011年には、クーペとしては堅調に売れた。

しかし1か月の登録台数は700台前後で、2016年は大半の月が1000台以下だ。海外でもクーペの市場は冷え込み、商売としては難しかった。

ホンダは時々「ウチはこういうクルマも開発できるのですよ」というアピールをする。大半がクーペで、NSXやS660もそこに含まれる。

ちなみに2009年には、3代目のトヨタプリウスが売れ行きを急増させ、同年に発売された2代目ホンダインサイトは伸び悩む中で、CR-Zが発売された。ハイブリッド車の本来のあり方を市場に問い掛け、同時にハイブリッド技術の可能性も訴求している。

その意味でCR-Zの引き際はちょうど良かった。今では価格は高いがレクサスRCなどハイブリッドのクーペがあり、趣味性の強いSUVのハイブリッド車も増えた。下手に中途半端なフルモデルチェンジを行って売れ行きが低迷すると、美しい思い出が汚されてしまう。

■スバルエクシーガクロスオーバー7 2008〜2018年

スバル・エクシーガクロスオーバー7
スバル・エクシーガクロスオーバー7

スバルエクシーガが、水平対向エンジンを搭載する3列シートミニバンとして発売されたのは2008年だ。この時点でミニバンの売れ筋は、全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた車種になり、横開きドアを備えたワゴン風のミニバンは人気を下げていた。堅調なのはトヨタウィッシュ程度で(これも後に登録台数を下げて廃止された)、エクシーガも2010年頃には1か月の売れ行きが背の高いヴォクシーの20%程度に下がっていた。

要はデビューが5年は遅かったのだ。「スバルの商品企画担当者は何を考えているんだ?」と思った。スバルはミニバンが嫌いで、同時に走りの要求レベルも高く、国内市場の変化に追い付けなかったのだろう。

それでも膨大な開発費を費やしたから、売り続けねばならず、大幅なマイナーチェンジを施してクロスオーバーに発展させた。

その一方でスバルはトヨタと業務提携を行い、軽自動車の開発や製造から撤退して、効率の優れた商売をするようになった。だからエクシーガクロスオーバーは当然に廃止された。

このようにエクシーガは失敗作だが、マツダのプレマシーと違って放置されることはなく、苦肉の策とはいえ、発売から7年も経過した2015年にクロスオーバー7にマイナーチェンジしたことは注目される。

さらに生産終了間近の2017年3月(発売は4月)にも、改良を施して割安な仕様まで用意した。最後まで大切に売り続ける姿勢は、スバルの自社商品に対する愛情の発露でもあるだろう。好感の持てる開発姿勢で、ほかのメーカーも見習うべきだ。引き際は良かった。

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