■トヨタサイノス 1991〜1999年
トヨタはバブル期の末期に、個性の強いスポーツクーペを積極的に開発し、1990年代に投入する。ガルウィングを持つセラに続いて1991年1月にベールを脱いだのがサイノスだ。ターセル/コルサ系に設定されていた3ドアのリトラの後継と位置付けられ、メカニズムもターセル/コルサ系から譲り受けた。が、デザインは専用だったし、車名もターセル/コルサ系と分からないようにサイノスを名乗っている。
エンジンは第2世代のハイメカツインカムを搭載し、駆動方式はFFだった。1.5Lエンジンは2種類のチューニングがあり、上級グレードのβは可変吸気システムやデュアル排気マニホールドを採用し、高性能化を図った5E-FHE型直列4気筒DOHCを積む。クラス初の電子制御4速ATも注目を集めた。
また、電子制御サスペンションの上下G感応TEMSもオプションで用意する。さらにチルトアップ機構付きガラスルーフも設定するなど、末っ子のクーペなのに超リッチだった。
1995年秋には2代目のサイノスが登場し、1年後にはフルオープンのコンバーチブルも仲間に加わる。が、北米を含め、ユーザーの嗜好が変わったため販売は伸び悩んだ。1999年7月、21世紀を前にサイノスは消滅した。
■ホンダCR-Xデルソル 1992〜1997年
今、クーペの世界では、高い剛性とオープンカーの爽快感を1台で味わえるクーペ・カブリオレやリトラクタブル・ハードトップが密かなブームになっている。その先駆けとなったのが、ホンダのCR-Xデルソルだ。
高性能スモールクーペとして一世を風靡したCR-Xからバトンを託され、1992年2月に登場した。先代モデルであるCR-Xも世間をアッと言わせたが、デルソルはそれ以上に翔んだスペシャルティカーであった。乗車定員は2名と割り切り、ルーフ部分は開放的なオープンのトランストップとした。
ルーフ部分をトランク内に収納でき、2人で粋なオープンエアモータリングを楽しむことができる。注目を集めたのは、手動タイプのほか、スイッチ操作でルーフを簡単に開け閉めでき、トランクに収納できる電動式のトランストップを主役としていたことだ。
エンジンは1.5Lと1.6Lの直列4気筒で、SiRは可変バルブタイミング&リフト機構のVTECで武装したB16A型DOHCを搭載する。SiRは痛快な走りを見せつけ、爽快感もライバルを圧倒した。が、全自動としたため車重はCR-Xより重かったし、デザインもクセが強かったので販売は伸び悩んだ。北米以外は売れなかったため1代だけで消えている。
■マツダ ユーノス・プレッソ/AZ-3 1991〜1998年
マツダはバブルの絶頂期に、背伸びして5チャネル体制を築き、一気にバリエーションを拡大した。スポーティモデルを得意とするメーカーだから、洒落たクーペも数多い。そのなかでも個性が際立っていたのが、ユーノスチャネルに投入したプレッソと2週間遅れてオートザム・チャネルに送り出された兄弟車のAZ-3である。イタ車のような塊感の強いフォルムとファニーフェイスが特徴の3ドアハッチバッククーペで、小型車サイズと思えないほど強いインパクトを放っていた。
エンジンも豪華だ。プレッソは、その当時、量産エンジンとしては世界最小の1.8L、V型6気筒DOHCを搭載する。
このクラスでは異例に滑らかで、静粛性も高い。これに対しAZ-3が積むのは、1.5Lの直列4気筒DOHCエンジンだ。が、発売から2年後の93年には、AZ-3も両方のエンジンが選べるようになる。
サスペンションは4輪ストラットだが、ハンドリングは軽快だ。
プレッソとAZ-3はヨーロッパではマツダMX-3の名で発売され、好評を博した。が、日本ではよさが認められず、今一歩の販売にとどまっている。両車は1998年に販売を打ち切り、ラインアップから消えた。
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