「トラクター」のイメージを逆手にとったランボルギーニ
さて、イタリアのスーパーカーブランドの中で、フェラーリに並ぶ人気を誇るのがランボルギーニである。
ランボルギーニは第二次世界大戦後、イタリアで不足していたトラックやトラクターの製造でビジネスを拡大。その後、1960年代の初頭に「フェラーリに対抗するスーパーカーを作る」というプロジェクトが立ち上がったという歴史がある。
このように農業機械の生産からビジネスを展開したランボルギーニのエンブレムには、「猛牛」が描かれている。
乗用車を作り始めた当初こそトラクター製造の出自を揶揄されたが、スペインの有名な闘牛牧場「ミウラ」をはじめ、ディアブロ、ムルシエラゴ、レヴェントン、ヴェネーノなど、闘牛にちなんだ名前と猛々しい排気音、独創的なデザインの車を次々と販売し、ファンを獲得していったのだ。
ランボルギーニのエンブレムの由来は「フェラーリ(馬)に対抗して牛」という単純な発想ではない。農作業で力強く活躍するトラクターの製造をルーツに持つランボルギーニが、そのイメージをスーパーカー・GTカー作りの個性に活かしたのだ。牛はまさにそのインスピレーションの象徴ということである。
元々は「最高品質の証」だったプジョーのライオン
フランスのプジョーは今でこそ自動車メーカーとしてのイメージが定着しているが、もともとは家族経営の製鉄業がルーツである。そのはじまりは1810年に遡る。当時プジョーは、最高品質を示す「ライオン」マークをつけた工具や傘、コーヒーミル、自転車といった製品を世に送り出していた。
もともと「ライオン」のマークは、ノコギリの最高品質の証として用いられていたもの。刃物の切れ味や固さ、しなやかさがライオンの歯や肉体、獲物に飛びかかる力強さと結び付けられていたのだ。これが次第に、最高品質の証として定着し、プジョーの他の製品にも用いられるようになっていったのだ。
当然のようにプジョーは、ライオンマークを自動車のエンブレムにも採用し、世界中の人々、特に庶民の生活を支えるヒット車を次々と誕生させる。これもひとえにライオンの威厳に満ちた存在感が、プジョーの品質の「証」となってきたからであろう。
近年、自動車産業の競争が激化する中で、プジョーはライオンの動物的な特徴を「個性」として、より積極的にブランディングに活用している。例えばライオンの牙を象ったシグネチャーランプや、鉤爪をモチーフにしたコンビネーションランプなど、プジョーがライオンをモチーフにしているからこそ成り立つディテールが見られる。
技術が進歩して「壊れない」クルマが当たり前の今、プジョーにおいてライオンマークが果たすべき役割も変わってきているのだ。
動物モチーフは「人間の憧れ」
ここで紹介したメーカー以外にも、ジャガーやポルシェ、アルファロメオ、アバルト、ダッジなど、動物をモチーフにしたロゴ・エンブレムはたくさんあり、それぞれに歴史と背景がある。また、メーカーエンブレムだけでなく、個々のクルマで動物エンブレムを採用しているクルマもある。
俊敏さや軽やかさ、しなやかさ、力強さなど、動物の持つ特徴に人間が憧れ、これらの動物のように、力強く生き、軽快に大地を駆け抜けるというイメージをクルマに持たせた。そう考えると、異常な動物率も納得できるであろう。
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