全国的には無名でもご近所ではそこそこ有名……。そんな、今でいう“映えない”んじゃないか?ってなスポットに、稀代のコラムニスト カーツ佐藤が無理矢理スポットライトを当ててまいります……(第12回)
※本稿は2022年7月のものです
文/カーツ佐藤、写真/Adobestock、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年8月26日号
■第12回「もう上を向かなきゃいられない」
皆様! 歌手の坂本九さんは、ご存知ですよね。
1985年、ジャンボ機墜落事故で亡くなられた昭和を代表する歌手ですよ。
なにしろ大ヒット曲『上を向いて歩こう』は『SUKIYAKI』のタイトルで、アメリカのビルボードでも1位を獲得。そんな日本人は、坂本九ただひとりなんですから。
そんな坂本九の『上を向いて歩こう』の歌碑が、出身地、神奈川県川崎市の川崎駅前に、ほぼ人に知られずありました……。
ワタクシも25年以上川崎市民をやっておりますが、その存在を知ったのは、つい一カ月前という体たらく……。
この“体たらく”というのは、ワタクシ自身の無知が体たらくなのか、それともその存在をPRしない川崎市が体たらくなのか……。
なにはともあれ見に行ってまいりました。
先ほど、“川崎駅前”と、その場所を書きましたが、本当に駅前も駅前! 人口100万都市川崎の超一等地にズ~ンと建てられておりました。
しかし、しばらく遠巻きに見ていたのですが、その存在に目を止める者、ひとりとしてなし!
いくらその歌が『上を向いて歩こう』だからって、上を向いて歌碑を見ていないワケじゃない。みなさんしっかり前を向いて、視界にその歌碑が入っているであろうにも関わらず、ただその横を素通りする者のみ!!
見に行く前、この歌碑が建立された2015年のスポニチの記事がネットに残っていたのを読んだら、そこに川崎市長のこんなコメントが。
「『九ちゃん前で待ち合わせ』と、市民に親しんでもらえれば」
市長のこの熱き想い、現状ではまるで届かず……。
「きゅ、きゅ、九ちゃん!」ワタクシ、居ても立ってもいられず歌碑に近寄りました。そこには、坂本九さんが、あの人懐っこい笑顔で歌う写真が、レリーフで石に刻んでありましたよ。
誰ひとり見もせず、誰ひとり近づきすらしないのに、永遠に変わることない石に刻まれた笑顔。
泣けてきましたよ。
そしてこの歌碑。上部が円形に窪んでるんですが、それが“涙がこぼれないように”という意味があるそうです。
断言する。
そんなくぼみ程度じゃ足りないくらい大量の涙を流してるぞ、天国の九ちゃん!
その帰路。ワタクシ、涙がこぼれないよう、本当に上を向いて歩いて帰りました。
うまく出来た話になっちゃったなァ……。
●『坂本九さんの歌碑』JR川崎駅東口駅前広場(神奈川県川崎市)
●映えない度…★★★(ここで待ち合わせしてほしい)
※「映えない度」は最高3つ★
●今回の出費(電車賃)…新丸子~武蔵小杉~川崎/東急線、JRで往復600円
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