■SUV戦国時代の今こそ復活を!
エンジンは、2.4Lのi-VTECを搭載。低中速から厚いトルクが獲得できるよう専用チューニングが施されたことで、3ナンバーボディや1560kgという車重に対して十分な動力性能を発揮した。
トランスミッションは4速ATだったが、街なかはもちろん山道でもスムースな走りを味わえた。高効率で安定した燃焼特性をはじめ、低回転時には吸気2バルブの片方を休止させるVTEC機構の恩恵により、高出力を発生しながら、10・15モード燃費は10.6km/Lを達成した。
駆動方式はSUVらしく4WDとなる。ただしクロカンモデルとは違い、舗装路での使用頻度が多いことを想定し、通常はほぼFF状態で走り、状況に応じて後輪にも適切な駆動力を配分するリアルタイム4WDを採用していた。
4WDシステムは、摩擦係数が低くて駆動力が十分に伝達されない状況で有効な機能だが、重量が増加したり、走行抵抗の増大、騒音や振動の増幅するといったウィークポイントを抱えていた。
また、エレメントに採用された4WDはデュアルポンプ式と呼ばれるシステムで、悪路走行に必要な能力を有しながら、走行抵抗、騒音や振動の低減を可能とした。
軽量であることから高い運動性能の実現にも貢献し、さらに低床、フラットフロアといったエレメントの特徴でもある合理的な車体レイアウトの具現化にも貢献していたのだ。
実用性に秀でた特徴を持つが、それを個性のひとつとして捉えて選択した人にとっては、無用の長物になる可能性が極めて高く、ニーズを限定していた感があるのは否めない。
たとえば悪路を走る機会を想定してSUVの購入を検討しているが、ランクルやジムニーほどの能力を必要としないと考える人がいるのと同じように、万能性を求めつつも実用性に振り切った過剰なほどの機能や装備に魅力を感じにくい。
他とは明らかに異なる個性や使い勝手を有していながら、販売が振るわなかった理由はそこにある。しかし、センターピラーレス構造や便利な上下分割のテールゲート、キャパシティの大きな荷室といった機能は、それらを求める人にとってはこのうえなく魅力的な選択であることは間違いない。
どれほどSUVクラスが群雄割拠だとしても、エレメントのようなクルマが現代に蘇る可能性は決して高くない。
とはいえ、時代はめぐるものだから、またいつかエレメントのようにユニークなセールスポイントを持ち、ワクワクした気持ちにさせるクルマが登場するかもしれない。
それが日々の生活だけでなく、自分が好きなこととかやりたいことにピッタリとハマるなら、そのときこそ満を持して相棒に選んでみたいものである。
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