こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 時代に翻弄された斬新過ぎるバタフライドアのセラ

■珍しすぎたゆえの時代の徒花

 しかし、登場時こそ注目されて話題となったが、販売面では苦戦を強いられる。ガラス張りのエクステリア、量産車では世界でも数少ないバタフライドアの採用といった特徴によって独自の個性を主張していたが、走行性能について非凡な才能は持ち合わせていなかった。

 セラが発売された1990年初頭といえば、国産スポーツカーの黄金期である。トヨタがターゲットとして定めた若者は、高性能なスポーツモデルやスペシャルティカーに興味を抱き、さらにアウトドアレジャーブームに乗ってクロカン4WDといったクルマが台頭したこともセラにとっては逆風となった。

 個性だけでは到底太刀打ちできず、細かな改良を施してテコ入れを図るが、それが人気再燃に直結することなく、バブル景気の終焉とともに1995年末に生産中止を余儀なくされる。約6年あまりで生産された台数は国内、海外向けを合わせて約1万6000台と、当時のトヨタ車としてはかなり少なかった。

全長3860mm、全幅1650mm、全高1265mmというコンパクトカーと同等のサイズで、取りまわしはしやすかった
全長3860mm、全幅1650mm、全高1265mmというコンパクトカーと同等のサイズで、取りまわしはしやすかった

 生産終了から28年を経た現在も、セラの後継と目されるクルマが登場することはない。しかし1990年当時、「80点主義」とか、どこで切っても同じように見える「金太郎飴」などと揶揄されていたトヨタ車のなかでも、際立った個性を主張したセラを世に送り出したトヨタの勇気あるチャレンジは敬意を払うべきだ。たとえ後に続くクルマがなくても、歴史にその名はしっかりと刻まれている。

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