こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 世界最小のスーパーカーとして歴史に名を刻んだAZ-1

■小さくても走りのパフォーマンスは本格派

 AZ-1のボディサイズは全長3295mm×全幅1395mm×全高1150mmで、ホイールベースは2235mm。エンジンは64ps/6500rpmの最高出力と8.7kgm/4000rpmの最大トルクを発生するスズキ製のF6A型660cc3気筒ターボを搭載。720kgという超軽量ボディの恩恵もあってパワーウエイトレシオは11.25kg/psという、当時の軽自動車ではトップクラスの能力を発揮した。

 トランスミッションは5速MTのみの設定でAT仕様の設定はない。また、ミッドシップレイアウトとしたことにより2名乗車時で前後重量配分は44対56を実現。超低重心であることやロックトゥロックが2.2という鋭いハンドリングも相まって、スーパーカーと呼ぶにふさわしい走りが味わえた。

モーターショー出展時はヘッドライトがリトラクタブル式だったが、安全基準をクリアするために円形の固定式に変更された
モーターショー出展時はヘッドライトがリトラクタブル式だったが、安全基準をクリアするために円形の固定式に変更された

 軽自動車という限定されたカテゴリーに属するクルマながら、本格的なスポーツカーとしての走りが楽しめるという点は、先に発売されていたホンダ ビートやスズキ カプチーノにも共通するが、AZ-1は技術的な部分においてライバルと明らかに異なる価値を有していた。

 なかでも一般的なモノコックボディとは異なる特徴を持つ、スケルトンモノコックボディの採用は注目すべき要素のひとつだ。ボディパネルに頼ることなく骨組み部分のみで車体の強度が確保できることから、ガルウィングドアやアウターパネルがオールプラスチックというAZ-1ならではの特徴をもたらした。

 ただし、スケルトンモノコックボディはサイドシル部分を太くする必要があるため乗降部が狭くなって一般的なヒンジドアでは乗り降りがしづらくなる。ガルウィングドアは乗降性における不利を補うという意味でも採用は必然だった。

 乗車定員は2名で、車内のスペースはかなりタイト。コクピットまわりは不要な加飾を廃したスパルタンなデザインで、MOMO製のステアリングや、真下が0指針の4連ホワイトメーターは、中央に大径のエンジン回転計が配置される。

 また、運転席はシートスライドが可能だったが、助手席は固定式でリクライニング機構も備わっておらず、エアコンを除く快適装備がオプション設定となるなど、スポーツカーとしてのこだわりが散見される。

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