■4つのスタイルを実現する特殊なルーフ機構
開発陣が目指したのは、ドライブによって心を開放してくれる「オープンマインド2シーター」である。カプチーノのルーフは、オープンカーにありがちなソフトトップではなく着脱できる分割式のアルミパネルを採用した「4ウェイオープントップ」としていた。
この4ウェイオープントップは、ルーフを閉じた状態ではスタイリッシュなクーペとなるが、左右と中央部分で分かれた3分割ルーフの左右を外せばTバールーフとなり、3分割ルーフをすべて外せばタルガトップになる。もちろん、フルオープンにすることもできる。1台で4タイプのスタイルを状況に応じて楽しめるという画期的な機構は、当時の量産車としては世界で初めて採用されたものだった。
カプチーノよりも5カ月前に登場していたホンダ ビートとはライバル関係にあり、なにかと比較されることも多かった。しかし、軽自動車規格で作られていることは共通だが、車両レイアウトや内外装の造形など、クルマのキャラクターはまったく異なっていた。
ビートは実用性を度外視したミッドシップスボーツカーであり、まるでフェラーリなどのスーパーカーの縮小版といった趣きで、走りの楽しさという点ではカプチーノよりも評価は高かった。しかし、カプチーノは極めてオーソドックスなスポーツカーではあったが、日常的な用途での使い勝手はしっかりと考慮されていたというところがビートに対する優位点だった。
価格は145万8000円で、ビートの138万円と比べると多少割高な感があったものの、重厚感に溢れたスタイリングやシンプルながらブラックで統一された上質なインテリアの作り込みは価格に見合ったもので、所有する満足感は十分に得られる。さらに、スポーツカーながら実用的であったことを鑑みると、総合力ではカプチーノに一日の長があると言っていいだろう。
バブル崩壊に伴い1998年に新車市場から姿を消したカプチーノだが、生産終了から25年を経た現在も多くのファンが存在し、中古車市場では高値で取引されている。新型モデルが復活するという噂もあるが、現代のクルマ市場における現況を鑑みると憶測の域を出ない。
スポーツカーを作るという点において技術的な問題はないが、内燃機関が廃れつつある昨今、本格スポーツカーにふさわしいユニットが見当たらないし、それを新規に開発する可能性も高くない。そもそも本格的なスポーツカーが市場で求められていないことなど、復活を後押しする要因は極めて少ない。
やはり、伝説は伝説のままであるべきなのかもしれない。そのほうが、カプチーノに関する人々の記憶は、廃れることなく永遠に残るのだから。
【画像ギャラリー】バブル期に伝説となった軽スポーツの珍車・カプチーノの写真をもっと見る!(5枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方