これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、今乗っていたら絶対にシブい! 日産ラシーンについて紹介していこう。
文/フォッケウルフ、写真/日産
■パイクカーの流れを汲んで開発された個性派SUV
1987年1月に日産から発売されたBe-1は、パイクカーと呼ばれるユニークなクルマの存在を世に知らしめ、その後も1989年1月にはパオとエスカルゴ、さら1991年2月にはフィガロを立て続けにリリース。そのいずれも限定生産だったにも関わらず、セールスにおいて大成功を収めていた。
そんなパイクカーブームがひと段落すると、市場には小型の4WD車がRVブームという新たな潮流が生まれ、市場をリードするようになる。
ブームの発端は本格派のクロカン4WDだったが、「ヨンク」を乗用車的に使う人が増えてくると、トヨタ RAV4やスズキ エスクードといった悪路走行をこなせる能力を有していながら、街なかを乗用車感覚でスマートに乗れるシティオフローダーに分類されるクルマがブームを牽引するようになる。
日産ラシーンは、遅ればせながらこのシティオフローダーの一角に名を連ねるモデルとして登場する。第30回東京モーターショーでお披露目されたラシーンは、翌1994年12月に発売された。
開発に際しては「都市生活と自然にやさしく調和する4WDプライベートビークル」をコンセプトに掲げ、シンプルでナチュラルな直線基調のデザインを採用するとともに、コンパクトで扱いやすいボディサイズ、快適で機能的な室内空間、高い信頼性を備えたメカニズムなど、シティオフローダーに必須の能力がしっかりと盛り込まれていた。
「未知なる旅の“水先案内役”をイメージした羅針盤(らしんばん)からの造語」という車名の由来。イメージキャラクターに起用されたドラえもんと「ボクたちのどこでもドア」というキャッチフレーズ。
そして日産が大ヒットさせたパイクカーの流れを汲んだタイムレスなデザインも相まって、ラシーンは既存のシティオフローダーとは一線を画す新感覚のクルマであることを広く知らしめることになる。
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