現在日本車のボディバリエーションは軽商用車を含め3ドアハッチバックすら選ばないという、合理化が進んだ状態である。
しかし20年ほど前までは主に北米でセクレタリーカー(現在の日本の軽自動車に近い感覚で、秘書をしている女性などが軽い気持ちで買うクルマ)として売れたこともあり、ライトなクーペを各社持っていた時代もあった。
実は1980年代までの日本にはクーペがたくさんラインアップされていて、トヨタでいえばレビン/トレノ、セリカ、日産ではシルビアといったスポーツクーペとは一線を画すライト感覚のクーペに注目してみた。
当記事ではコンパクトクラスでもいろいろなボディタイプが選べた華のある時代の象徴であり、現在の日本では販売されることがほぼ考えられないある意味名車であるそんなクルマたちを振り返る。
文:永田恵一/写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、MITSUBISHI、SUBARU、ISUZU
トヨタのベーシッククーペのサイノス
1991年に初代モデル、1995年に2代目モデルが登場したサイノスは北米ではパセオの車名で販売される、日本ではスターレットとカローラの中間に位置する当時のターセル/コルサ/カローラⅡをベースにした2ドアクーペである。
初代モデル、2代目モデルともに安価な割にはスタイリッシュなクルマで、走りもまずまずというモデルだった。
特に2代目モデルにはアメリカで架装するという過程で生産されたコンバーチブルも設定され、こちらは4人乗りということもありちょっと魅力あるモデルだった。
しかしサイノスはスターレットとターセル/コルサ/カローラⅡがヴィッツに統合されたのに伴い、1999年に絶版となった。
日産サニーから派生した RZ-1、NXクーペ、ルキノクーペ
かつてはカローラと双璧を成した大衆車であるサニーには歴代2ドアクーペがあった。
ここ30年では6代目サニーのクーペとなるRZ-1、NXクーペ、ルキノがある。1986年登場のRZ-1はベースのサニーのせいもあるのか妙に角張ったスタイルしかイメージに残る要素は残念ながらない。
1990年登場のNXクーペはデジタルメーターや当時のフェアレディZに通じるTバールーフの設定などによりスペシャリティな印象を高めた。
しかし1.5L、1.6L、1.8Lの3つが設定されたエンジンのうち、1.8Lが当時のNAエンジンを積むシルビアと価格帯がバッティングすることなどもあり全体的に振るわなかった。
続く1994年登場のルキノクーペは当時のサニーの2ドア版としかいいようのないクルマだったが、後にチューニングされた2Lエンジンを搭載したオーテックバージョンや1.6Lのスポーツエンジンを積むVZ-Rというスポーツモデルも追加。
しかし「だからどうなの?」というのがマーケットでの印象で、日産の奮闘も報われず1998年のサニーのフルモデルチェンジを期に姿を消した。
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