路面センシングは有望な技術
こういう油圧システムの欠点を克服して21世紀に復活したアクティブサスが、2013年にメルセデス・ベンツSクラス(W222)に装備された“マジックボディコントロール”だ。
このシステムは、金属バネ、小容量のハイドロニューマチック、そして可変ダンパーの組み合わせで構成されているが、カメラで路面を監視してその情報を制御パラメータに入れているのが新しいアイディアだ。
カメラからの情報を元にサスペンションが事前にスタンバイするからより、小容量のアクチュエータでも理想的なボディコントロールが可能だし、ポンプが消費する馬力も少ない。
さらに、フル油圧に比べればハイドロニューマチックは枯れた技術だから、コストや信頼性もベンツなら許容範囲に収められる。
Sクラスのユーサーにしてみれば、オプション価格54万6000円というのは格安といっていいレベル。100万円以上するAMGカーボンパッケージやセラミックブレーキより、よっぽど日常の快適性を向上させてくれる有意義なオプションだと思う。
ベンツが先鞭をつけたカメラを使った路面センシングは、サスペンション制御全般に有望な技術といえる。
今後新たなトレンドとなる可能性もある
ハイドロの元祖シトロエンは、新しいDS7クロスバックでカメラセンサーと可変ダンパーを組み合わせた“アクティブスキャンサスペンション”というシステムを導入。
これまでは、タイヤが突起を踏んでからGセンサーでそれを感知してダンパーを制御するというロジックだったが、突起が事前にわかっていれば圧倒的に有利。
制御レスポンスがよく減衰力変化の幅が広いKYB(カヤバ)製リニア可変ダンパーとあいまって、顕著な乗り心地向上効果をあげている。
このリニア可変ダンパーの利用はより低価格なセグメントにも広がっていて、国産ではカローラスポーツなどにもオプションで設定。
厳密にいえばアクティブサスではないが、それに近い効果を期待できる「コスパのいい」可変サスペンションシステムといえる。
もうひとつ、新しいアクティブサスペンションのトレンドとしては、48Vマイルドハイブリッドシステムとの組み合わせで急浮上してきた電動アクティブサスがあげられる。
48Vマイルドハイブリッドシステムは10kW程度の電気エネルギーが利用できる。これを電動スーパーチャージャーとして使ったり、あるいは電動可変スタビライザーとして使ったり、さまざまな用途が模索されているが、これをアクティブサスのパワー源として利用する動きが出てきたのだ。
先進的なのはアウディがA8で採用したモーター駆動によるアクティブサスで、減速機構によって1100Nmのトルクを出すモーターがエアサスペンションに介入し、油圧と同じロジックでボディのコントロールを行う。
ベースはエアサスペンションなので、何もしなければエネルギーロスはゼロ。制御の自由度は油圧の比ではなく、うまく使えばものすごいポテンシャルが期待できる。
また、ベンツは新しいGLEに“E-ACTIVE BODY CONTROL”と名付けた電動アクティブサスを導入している。
これは、基本的には“マジックボディコントロール”の油圧ポンプを電動化したもので、実績あるユニットを使いながら油圧ポンプのロスを減らして燃費効率の向上につなげる手堅い手法。コスト的にも、まだ電動よりだいぶ安価なようだ。
こうなると、かつて油圧フルアクティブサスで世界をリードした日本勢にも期待したいところ。ぜひ、国産各社には頑張ってもらいたいものでございます。
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