ラングレー ローレルスピリット ルキノVZ-R 50代のおじさんが若かった頃の「愛しのB級カー」

■成りは小さいが高級感いっぱいのローレルミニ:日産ローレルスピリット

ローレルスピリット。いまでいうデリカミニならぬローレルミニ!
ローレルスピリット。いまでいうデリカミニならぬローレルミニ!

 スカイラインの弟分がラングレーならば、ローレルの弟分は1982年1月に登場したローレルスピリットである。

 スピリット=精神とは言い得て妙な車名だが、非常にわかりやすい。今ならばローレル・ミニといったところだろうか。こちらもローレルの販売会社、日産モーター店のリクエストに応じて販売されたもの。

こちらが兄貴分のローレル。高級サルーンとして人気だった
こちらが兄貴分のローレル。高級サルーンとして人気だった

 ラングレーはパルサーベースだったが、ローレルスピリットはサニーベースで、当時販売されていた4代目ローレルと同じ格子型のフロントグリルや高級感たっぷりのツートンカラーを採用して、サイズは小さいながらもローレルの雰囲気たっぷりだった。

 サニーに搭載されていた1.3Lエンジンはラインナップされず、1.5Lエンジンのみの設定だった(後に1.7Lのディーゼルエンジンも追加)。

 奇しくもラングレー、ローレルスピリットともに、バブル期には絶版となってしまった。世の中が豊かになってくるとホンモノが欲しくなるということか。

■日産パルサーセリエとルキノのVZ-R

赤いルキノを覚えている人は多いのではないだろうか
赤いルキノを覚えている人は多いのではないだろうか

 1994年5月に当時の8代目B14型サニーをベースにクーペモデルとして仕上げられたカジュアルFFクーペがサニールキノ。

 江口洋介さんや田辺誠一さん、大塚寧々さんがCMに出ていて「ルキノっていいかも」というキャッチコピーが懐かしい。

 同じ車名を持つルキノハッチは5代目パルサーセリエがベースなので、そこが異なっている部分。当時、日産は系列販売店の関係から兄弟車を増やしていた。この車種数の多さが販売現場の混乱を招き、ルノーとの提携へと向かったのかもしれない。

 当初設定されたパワートレーンは直4の1.5Lと1.8Lのわりとおとなしめのエンジンだった。当時は若者向けとして安価なクーペをセクレタリーカーとして各社投入していたが、いずれもパワートレインに関しては価格を抑えるため普通のエンジンを採用していた。

1.6NAで175psという可変バルブタイミング&リフト機構「NEO VVL」を搭載したパルサーセリエ&ルキノVZ-R
1.6NAで175psという可変バルブタイミング&リフト機構「NEO VVL」を搭載したパルサーセリエ&ルキノVZ-R

 1997年9月のマイナーチェンジで、車名からサニーが取れてルキノに変更。そして今回の本題となるパルサーセリエVZ-R、ルキノVZ-Rの登場だ。

 2LターボのパルサーGTI-RはWRCへの挑戦が主目的だったが大した成績を残せなかった。

 そして1995年発売の5代目パルサーでは、1997年9月のマイナーチェンジ時に追加されたNAの1.6Lで175psというVZ-Rがパルサー、ルキノの最強グレードに設定された。

 日産はホンダVTECや三菱MIVECに負けないよう、可変バルブタイミング&リフト機構「NEO VVL」を採用したリッター100ps超えのNAエンジン、SR16VEを開発。

 最高出力175psの標準型(通称青ヘッド、限定200台)と、耐久レースへの参戦を視野に最高出力200psまでファインチューニングされたN1(通称赤ヘッド、限定300台)も用意していた。

1997年に発売されたパルサーセリエ/ルキノVZ-R N1は打倒シビックタイプRを目標に日産とオーテックジャパンが開発。1998年10月にはVersionII(限定300台)を発売
1997年に発売されたパルサーセリエ/ルキノVZ-R N1は打倒シビックタイプRを目標に日産とオーテックジャパンが開発。1998年10月にはVersionII(限定300台)を発売

 青ヘッドを搭載した通常のVZ-Rもかなり速かったが、日産はオーテックと共同で、N1耐久(スーパー耐久)に勝つことを目標として、赤ヘッドのパルサーセリエ/ルキノ VZ-R N1を限定発売。

 こちらのエンジンには専用のシリンダーヘッドが採用され、クランクシャフトとフライホイールのバランス取りが行われるとともに、ポートおよび燃焼室、吸排気マニフォールドの研磨などが行われた。

 一方のライバル、1997年当時のシビックタイプR(EK9型)といえば、1.6L、直4DOHC+VTECのスペシャルチューニング版「B16B 98 specR」を搭載、最高出力は185ps/8200rpm(リッターあたり116馬力)に到達していた。

 VZ-Rはリッターあたり125psだったから、シビックタイプR(EK9)の185psを、15psも越えていた。

 さらに、1998年にはパルサーセリエ/ルキノ VZ-R N1 VersionIIも発売。ステンレス製の大口径専用メインマフラー(フジツボ技研製)をはじめ、ダンパーの減衰力を見直すとともに15インチのENKEI製ホイール+205/50VR15サイズのダンロップ製FORMULA W-10を装着した。

 残念ながらN1耐久での実戦では善戦したものの、シリーズチャンピオンの座はシビックタイプRに持っていかれてしまった。

 現在でもテンロクスポーツのなかでは、シビックタイプRの人気は絶大で、パルサーセリエVZ-R/ルキノVZ-Rの数奇な運命を思うと泣けてくる。たしかに当時、パルサーセリエVZ-Rに試乗した際、曲がらないFFで、その差は歴然だっと記憶している。

 実際、現在の中古車相場を見ると、パルサーとルキノVZ-Rを合わせても流通台数は2台しかなく、VZ-R標準型が154万円、VZ-R N1が298万円。

 一方のシビックタイプRの中古車流通台数は50台、中古車相場は168万~498万円と圧倒する。ぜひもう一度、日産の200psホットハッチに乗りたいものだ。

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