1位のセレナと2位のヴォクシーの差は?
同じことがミドルサイズミニバンで1位のセレナと、2位のヴォクシーにも当てはまる。2位のヴォクシーは、低床設計を採用した。同じトヨタのミニバンでも、見栄えが重視されるLサイズのアルファード&ヴェルファイアと、ミドルサイズのヴォクシーでは開発手法が違うのだ。
対するセレナは、古いプラットフォームを使うから床が高い。そのためにセレナとヴォクシーの室内高は1400mmで等しいが、全高はヴォクシーが50mm低く抑えた。
機能的にはヴォクシーが進歩的で、走行安定性も優れているが、外観はセレナが堂々としていて車内も広そうに見える。見晴らしも良く、e-POWERの性能とCM効果もあってセレナが売れ行きを伸ばした。
ただし、ヴォクシーには、基本的に同じクルマとなる姉妹車のノア&エスクァイアがあり、この2車種を含めるとセレナとの販売競争は大きく変わる。
2019年度上半期(4~9月)の登録台数は、1カ月平均にするとセレナが7655台、ヴォクシーは7602台だが、ヴォクシー+ノア+エスクァイアの3姉妹車合計では1万5730台だ。
小型/普通車で1位となるプリウスの1万1105台を抜き、国内販売2位となるタントの1万4706台まで超えてしまう。
さすがに1位となるN-BOXの2万2675台には負けたが、ヴォクシー3姉妹車を合計した売れ行きは物凄い。いい換えればヴォクシーの登録台数は、姉妹車を構成したことで分散されているわけだ。
一方、セレナの日産にも事情がある。今の日産車には2010年以前に発売された車種が多く、堅調に売れるのは、セレナ+ノート+デイズ+デイズルークスに限られる。
2019年度上半期において、この4車種を合計すると、日産車の国内販売総数の67%に達するのだ。売れるクルマが限られることで、日産ディーラーの販売力がセレナに集まった。
ノートがここまで売れた理由は?
ノートが好調に売れる理由も同様だ。2012年に発売され、2016年にe-POWERを加えて効果的な宣伝を行った結果、売れ行きに弾みを付けた。
ノートは立体駐車場を使える全高で後席の居住性に余裕があり、e-POWERはアクセル操作で速度を自由に調節できるなどハイブリッドの低燃費と併せて独特の運転感覚も備える。この商品力に販売の集中も加わり、コンパクトカーの販売1位になった。
このような事情があるから、セレナとノートがカテゴリー別の国内販売1位でありながら、メーカー別の販売順位は、トヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位で低迷しているのだ。
フリードがシエンタに追いつけない理由
コンパクトミニバンの1位がシエンタ、2位がフリードという順列にも、販売事情が当てはまる。子育てを終えてミドルサイズミニバンが不要になったユーザーが、コンパクトな車種に乗り替えることも多い。
この時、シエンタは先に述べた保有台数の多いヴォクシー/ノア/エスクァイアが乗り替えの母体になるから、多くのユーザーが購入する。
シエンタを販売するトヨタの店舗数も4900店舗と多い。ホンダの2200店舗に比べると2倍以上だ。
この8月、9月には2カ月連続で全体の新車販売台数ナンバー1になるなど、絶好調のシエンタに対するのはフリード。
商品力はフリードも相応に高く、2019年10月のマイナーチェンジでクロスオーバースタイルのクロスターも追加するため、魅力は一長一短。しかし、販売力ではシエンタが圧倒的に有利になる。
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