今年から世界戦となったロードスターのワンメイクレース、グローバMX-5カップ。
スポーツランドSUGOでの開幕戦に、ベストカー号が参戦。「狙うは世界一!」と意気込んで、元本誌ベストカー編集部員にしてプロフェッショナルドライバーの大井貴之選手が登場。
出走台数は13台、予選は最低重量違反で記録抹消(つまり最後尾スタート)……。こんなんで大丈夫? しかし結果は最高にドラマチックだった。
文:大井貴之 写真:小宮岩男/池之平昌信
グローバルMX-5カップってどんなレース?
4月9日、スポーツランドSUGOで記念すべきマツダグローバルMX-5カップが日本でも始まった。世界統一規格による日本名ロードスターで、世界一決定戦にベストカーも行くぞ!
元上司の宇井編集局長(昔はそんなに偉くなかった)から誘っていただき記念すべき開幕戦に出場できるというチャンスが巡ってきた2017年のワタシ。これはもう、最高の恩返しをしなければならない。
っていうか、さすがは宇井編集局長。目のつけどころがすばらしい。なんでかって? ロードスターのワンメイクレースとなれば、ハッキリ言ってワタシ、無敵なんです。あ、根拠はありませんけどね。
ロードスターのワンメイクレースは、日本でも初期型のNA型から長く続いているが、今回のレースはNC型ロードスターの頃からアメリカでスタートしたもの。
日本で行われているワンメイクはパーティレースと呼ばれるナンバー付きのレースが主流。
対するアメリカのワンメイクはロールケージがガッチリ組み込まれたレーシングカー。これが凄い人気で、アメリカの西海岸から東海岸、カナダでも開催されているというのだ。新型のND型ではこれを世界戦にしようとなったのがグローバルMX-5カップ。
今年はまだアメリカと日本でしかシリーズ戦は開催されていないが、最終戦はアメリカと日本のシリーズ上位、そしてヨーロッパ、オーストラリアから選ばれたドライバーが一堂に会し、アメリカ西海岸のラグナ・セカ レースウェイで世界一を決めるというスーパー魅力的なコンテンツが待っている。
狙うは世界一! これは行くっきゃない。最大の悩みどころは、ラグナ・セカのポーディアムで受けるインタビューを英語でいくかどうか。非常に難しい問題である。

グローバルMX-5カップほど厳しい現実のレースはない
さて、このレースはなぜそんなに人気があるのか!? を説明しておかなければならない。
このレースの魅力は、同一条件でレースが行われること。ワンメイクレースだから当たり前でしょ!! と笑う人もいるだろうが、オレの知るかぎりここまでキッチリ管理されているワンメイクレースは、世界規模で開催されているポルシェカップなどごく少数。
国産車のワンメイクレースではチューニングパーツに選択肢が残されている場合が多く、ワンメイクレースのなかで最も厳しいのはナンバー付きロードスターで争われるパーティレース。それだってホイールの銘柄くらいは好みの物を選ぶことができる。
しかし、グローバルカップはホイールまでワンメイク。変更できるのはバケットシートとシートベルト、そしてエンジンオイルなどの油脂系のみ。
ドライバー重量を100㎏とし、ドライバーを含むトータル重量が1095㎏以上なければならないという、オッサンとして順調に育っているオレのためのレギュレーションと言っても過言ではない。勝負はドライバーの腕!!
そのなかには、車高、アライメント、ダンパーの減衰力、そしてタイヤの空気圧といった調整できるアイテムの能力を最大限に活かすセッティング能力も重要な要素。純粋に勝負ができるレースなのである。
【いよいよレース。そしてこちらが予選の様子】
予選の様子は本誌で楽しんでいただくとして、いきなり決勝
ここSUGOはコーナーが連続しているオーバーテイクが難しいサーキット。しかし、13台という出走台数の少なさ、そして45分の長丁場であることが救いだ。
予選で36秒台をマークしたのはポールポジションの山野哲也選手と今村大輔選手。37秒台には吉田綜一郎選手、壷林貴也選手、吉本晶哉選手、村上博幸選手と続いている。
7番手に沈んではいるものの、トップフォーミュラやGT500まで経験しているベテラン桧井保孝選手も侮れない存在だ。
スタートから数周、トップ集団のペースが上がらない混戦になってくれれば充分にチャンスはある。作戦名、「HY」。ヘルシンキで開催されたフィギュアスケートでみごと大逆転優勝を遂げた羽生結弦の頭文字をいただいて勝つ!
フォーメーションラップ開始。狙うは優勝a そのためには序盤が勝負になるのだが、リザルト以上に重要なことがある。
それは、美しいレースをすること。ライバルを蹴散らして抜くようなレースをしてはならないと自分に言い聞かせながらスタート!! ストレートで2台、1コーナーで1台、S字で1台…2周終了時点で7位。
しかし6位までの先頭集団は200mほど先。追いつけるか!? というタイミングで、ピットから「トップ集団より1秒以上速いペースで追い上げてます」と無線が入る。
ドライバーの気持ちを理解した無線のお陰で集中力を途切れさせることなく4周目にトップ集団を捉えることができた。あとは1台ずつ地道に行けばいい。と思ったところで雨。

ここからが大変だった。ズルズルの路面でアウト・アウト・アウトのコーナリング。
ひとつ間違えばコースオフとなるが、24周目にトップの山野選手を捉えた。しかし百戦錬磨の山野選手。何度か並びかけたものの、前に出ることはできなかった。
ということで、チェッカー時点では0.128秒差に迫ったのだが、結果、大活躍はしたものの記録は山野哲也選手のポール to フィニッシュ。ん~、これがオレの人生なのか。
【そんなわけで、2位表彰台を獲得した大井さんの激走は、以下の動画でじっくり楽しんでいただきたい】

【2017年4月9日 開幕戦 スポーツランドSUGO リザルト】
