WRC(世界ラリー選手権)第9戦ラリー・フィンランドで、トヨタがシーズン2勝目をマーク!!
若手のエサペッカ・ラッピが初優勝し、ベテランのユホ・ハンニネンが3位に入るなど、トヨタのフィンランド人選手ふたりが表彰台に立ったことで、現地は大変な盛りあがりだった。
トヨタの活躍でにわかに注目が集まるWRCってそもそも何が面白いのか? その根源はその“距離の近さ”にあった!!
文:古賀敬介 Keisuke Koga、編集部/写真:TOYOTA、Red bull
ドリフト、ジャンプ…レースにないビッグアクションが凄い!!
フィンランドでWRCは非常に人気が高いが、それもコースに行って実際に自分の目でラリーを見れば「なるほど」となる。
WRCの魅力をもし3つ挙げるとすると、それは「レースにはないビッグアクション」、「車や選手との距離の近さ」、「同時にアウトドアも楽しめる」といったところだろうか。
まず、レースにはないビッグアクションだが、ドリフト、ジャンプ、水しぶきはWRCの三大チャームポイント。例えばフィンランドでは、滑りやすい砂利道を、時速150キロぐらいでドリフトして走る。
道はサーキットのように平坦ではなく、すぐ両脇には木々が迫っているからエスケープゾーンは皆無。そんなおっかない道を、トップドライバーたちは針に糸を通すような精度の高いドリフトで駆け抜けていく。
しかも、WRCマシンのトップモデルであるWRカーは4WDで路面を捉える力が非常に高いため、ドリフトアングルが非常に深く、ドリフト中も高い速度が維持される。
「何でこんなに高い速度で砂利道を走れるのだろうか」と、初めて見た人は間違いなく驚くはずだ。
ジャンプもビックリ仰天だ。今年のラリー・フィンランドで、有名なオウニンポウヤのジャンプをもっとも長く飛んだ選手の飛距離は、なんと50mだった。
50mというとオリンピックのプール、あるいは新幹線2両分の長さに匹敵する距離。それをクルマが軽々と飛んでしまうのだから、ちょっとおかしい。
高さだってジャンプによっては3mぐらいまでいき、家の2階ぐらいのところをビューンと飛んでいく。とにかく、実際に見たら、そのあまりの迫力にポカンと口が開いたままになるだろう。
水しぶき=ウォータースプラッシュは、フィンランドではあまりお目にかかれないが、アルゼンチンなどのラリーでは、1本のコースの中で10回以不も川の中を突っ切る。
水深が深い川も多く、アクセル全開で川に突入すると派手に水しぶきが不がり、水圧でクルマのバンパーが外れることもあるぐらいだ。
そして、水しぶきで前が見えなくなっても、選手たちは構わずアクセルを踏み続ける。ドリフトしながら川を渡るようなシーンもあり、まるでボートレースみたいだ。
手を伸ばせば届く!? WRCの驚くべき距離の近さ
このように、WRCを頂点とするラリーでは、サーキットでまずお目にかかれないようなビッグアクションがそこらじゅうで楽しめる。
しかも、そのアクションを、開催国によっては非常に近い位置で見ることができるのがWRCならではの魅力。
例えば、フィンランドの件の50mジャンプでは、コースから10mも離れていないようなところでジャンプを見物できる。着地した瞬間は、大げさではなく地面が揺れるのが分かるほどだ。
そして、車がはね飛ばした砂利が飛んでくることだってある。未舗装路のラリーでは砂煙もすごくて、お相撲でいうところの砂かぶり席状態。
なかには、手を伸ばせば車に触れるぐらい近い距離で観戦できるラリーもあり、良くも悪くも車との距離は近い。安全性という意味ではサーキットよりも劣るが、その分だけ迫力は感じられる。
車だけでなく、選手と間近で触れ合えるのもWRCのよさだ。
F1などサーキットレースと比べると選手もみなフレンドリーで、車を整備するための、サービスパークと呼ばれる場所に行けば、ラリーの間でも一緒に写真を撮ったり、サインをもらったりすることができる。
見に来てくれたファンを大事にしようというホスピタリティ精神はWRCの伝統で、どんな偉大なチャンピオンだってお高くとまっていない。ヒトもまた、WRCというスポーツの魅力なのだ。