■レースコントロールの判断に疑問アリ
しかし野尻と牧野へのペナルティについては大いに疑問が残る。どちらも競り合っていて起きたレーシングインシデントで、それで誰かがケガをしたわけでもリタイアに追い込まれたわけでもない軽いバージョンだ。
モニター映像(と録画)で一部始終が確認できた野尻と大湯の場合、2台とも通常の走行ラインを通っていなかったが、これは競り合いの最中なのだから当然のこと。どちらもオーバースピード気味に感じられなくもなかったが、野尻が不注意やわざと大湯に当てた印象は微塵もなかった。
どちらも意地で引かなかったと見る人もいるが、「意地とかそんなんじゃなく、バトルしてただけだから」と順位を落とした大湯は、結果につながらなかったことを残念がってはいたが、野尻を責めたり悪く言うことはまったくなかった。
モニターでは当たったかどうかも確認しづらかったアレジと牧野の事件も、「牧野さんヒドい」とアレジが声を上げたわけでもレースコントロールにご注進したわけでもない。
どちらかというと筆者には「アレジさんヒドい」に見えなくもなかったが、いずれにせよF1でさえ問題視しないであろう競り合いの最中の「あれしき」の接触に、今回からいきなり使われだした5秒加算というペナルティを下した判断根拠と基準はいったいなんなのか。
あれがペナルティ対象になるのなら、前戦のもてぎでセーフティーカー明けに起きたアクシデント、山本尚貴(33、ナカジマ)がどうみても自身の不注意で後ろからきていた平川の前を塞ぐ格好で起きた事故にはなぜ何のペナルティも下されなかったのか。
曖昧にして不明瞭、一貫性のないペナルティの理由を尋ねようとレースコントロールに話を聞きたい旨を伝えたが、「正式結果に書かれています」というトンチンカンな回答が返されただけだった。
■来季そして『NEXT50』プロジェクトに向けて
F1を取材していた頃、些細な接触から死亡事故に至るような大アクシデントまでヤマほど見た。
FIAのF1技術専門責任者にしてレースディレクターを務めていた故チャーリー・ホワイティング氏(1952-2019)はその都度、公平に、公正に、だが必要以上に当事者を責めることなく、F1のレベルと品格の維持を心がけた判断と裁定を下していた。
チームやドライバーがホワイティング氏に寄せる絶大な信頼はF1を最高峰たらしめる大きな要素の一つになっていたし、ホワイティング氏の仕事とその影響に直に接することで、筆者はどれだけレースの勉強をさせてもらったかしれない。
そんなホワイティング氏のような人材は果たしてSFはじめ日本のレースコントロールにいるだろうか。
来季SFはさらなる飛躍を目指す『NEXT50』というプロジェクトを開始する。その目標の一つに『ドライバーズファースト』を掲げているが、接近戦で生ずる軽い接触さえペナルティになる、バトルのできないレースが今後SFの目指す『ドライバーズファースト』でないことを願っている。
【画像ギャラリー】スーパーフォーミュラ2021年シーズン最終戦は福住仁嶺が勝利!! インパルが11年ぶりチーム王座!!(10枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方