■実用性だけでなくリセールバリューの高さも魅力
またトヨタ店は、ハイエースが高値で売却できるメリットも指摘した。
「ハイエースは国内に加えて、海外でも中古車需要が多い。そのために中古車価格が高まり、売却時の金額も吊り上がった。耐久性が優れ、使い込みながら故障しにくいことも、中古車人気が高い理由だ。例えば15万kmを走った10年落ちの車両は、普通は金額が付かないが、ハイエースであれば相応の価格で買い取れる。法人によっては複数のハイエースを所有しており、資産価値を保つメリットも生じるので、人気がさらに高まっている」。
乗用車でも購入後に高く売れるか否かは大切な課題だが、複数の商用車を所有する法人にとっては一層重要だ。ハイエースでは高人気が資産価値を高め、さらに好調な売れ行きに繋がっている。
それだけにハイエースのフルモデルチェンジは気になるところ。機能を幅広く進化させ、なおかつ前述の好循環を妨げないクルマに仕上げねばならない。
■次期型ハイエースはいつ登場?
現行ハイエースは発売から既に17年を経過した。今までのハイエースで、最も長く造られたのは先代型だが、それでも発売から約15年でフルモデルチェンジされている。現行型はさらに長い。
フルモデルチェンジの周期が長い背景には2つの理由がある。まずはハイエースが2017年に衝突被害軽減ブレーキを設定して、2020年にはパーキングサポートブレーキも採用するなど、最近になって安全装備を充実させていることだ。国土交通省によると、2021年11月以降に新型車として登場する乗用車と商用車(車両総重量は3.5トン以下)では、衝突被害軽減ブレーキの装着が義務付けられた。ハイエースはこれを先取りしており、各種の法規対応も視野に入れて、フルモデルチェンジの時期を調節している。
2つ目の理由は、前述の通りハイエースの売れ行きが好調なことだ。小型/普通車の商用バンとしては、突出して高い売れ行きを誇るため、ライバル車の動向に応じてフルモデルチェンジを行う必要はない。
例えばコンパクトカーのヤリスは、ノートやフィットとライバル関係にあり、ノーマルエンジン車は同じ価格帯に属するN-BOXなどの軽自動車とも競い合う。その点でハイエースは、エブリイバンやハイゼットカーゴのような軽商用車とは、荷室容量が圧倒的に違う。実質的な競争相手は、ほぼ同じサイズのキャラバンだけで、売れ行きではハイエースが大差を付けているから販売面では競わない。
販売店にハイエースのモデルチェンジについて尋ねると以下のように返答した。
「ハイエースがフルモデルチェンジを行う予定は、今のところメーカーから聞いていない。ハイエースはほぼ毎年改良を行い、安全装備を充実させたり特別仕様車を追加している。しかも高値で販売できるため、乗り替えの提案をすると、快く応じてくださるお客様が多い。そのためにハイエースは売れ行きが安定して下がらず、フルモデルチェンジの必要性も感じない」。
それでもおそらく、2022年末までには、フルモデルチェンジを実施するだろう。ただし外観に大幅な変更を加えるのは難しい。ハイエースのロングボディ(標準ボディ)は、全長:4700mm、全幅:1700mm、全高:2000mmの4ナンバーサイズに収める必要があり、同時に荷室長は最大値で現行型の3000mmを確保せねばならないからだ。
上記の要件を満たすには、ピラー(柱)の角度や位置、ボディの基本スタイルまで決まってしまう。フロントマスクなどのデザインなどには自由度があるが、積載性に影響を与える部分は変えられない。歴代モデルが4ナンバーサイズの範囲で荷室容量を限界まで拡大したから、もはや手を加えられないのだ。
ちなみに海外で売られるハイエースは、グランエースの商用車版に位置付けられ、エンジンを前席の下ではなくボンネットの内部に収める。いわゆるミニバンスタイルだが、空間効率は日本で販売されるハイエースに比べて大幅に劣る。海外版では、全長が5265mmに達する長いボディでも、荷室長は2910mmだから、4ナンバーサイズのハイエースを下まわってしまう。国内版ハイエースと同じ3000mmの荷室長を確保するには、全長が5915mmのロングボディを選ばねばならない。
またボンネットの内部にエンジンを収めるミニバンスタイルでは、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が長くなり、走行安定性が向上する代わりに小回り性能は悪化する。ハイエースのロングボディであれば、ホイールベースは2570mmで、後輪駆動だから最小回転半径は5mに収まる。
その点でミニバンのノアは、ホイールベースが2850mmで、最小回転半径も5.5mだ。ハイエースはノアに比べると、大容量の荷室を備えながら小回りの利きも良い。ワンボックスボディは合理的なのだ。
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