トヨタがスバルと共同開発で「86」を世に送り出してから早6年。2012年のデビュー当初から度々伝えられてきたのが、そのオープンモデルの存在。
結局、86のオープンカーは市販化されることなく現在に至るが、開発主査の多田哲哉氏によると、なんと86のオープンモデルは市販化目前のところまで進んでいたという。
多田氏といえば、新型スープラの開発主査も務めているが、スープラにもオープンモデル設定の可能性はあるのか?
新型が発表された直後の6月上旬、幻の“86オープン”にまつわる秘話とともに聞いた。
取材・文/ベストカーWeb編集部
写真:編集部、TOYOTA
86オープンは「発売直前まで検討が進んでいた」
トヨタとスバルが共同開発した86/BRZは、ともにクローズドボディの2ドアクーペ。2012年2月に発表、4月に発売された。
MR-Sの販売終了以来トヨタとして5年ぶりのスポーツカー復活となったが、発表時に語られたのが「86は毎年進化します」という言葉だ。
その言葉通り、86はデビュー以来、改良や追加モデルの発売など毎年何らかの形で進化を遂げてきた。なかでも“何らかの形”として常に話題にあがっていたのが、オープンモデルについて。
『ベストカー』でも発売直後の2012年3月10日号で、「様々な派生モデルの計画で、最も可能性が高いのがオープン」と伝えたが、実際に2013年のジュネーヴモーターショーにはFT-86 オープンコンセプトが出展され、オープンモデル発売に向けた動きが具体化。
コンセプトモデルという位置づけではあったものの、その完成度は非常に高く、量産化を充分に予感させるものであったが、結局その後量産化することなく現在に至る。
時計の針を2019年に戻そう。
新型スープラの開発主査でもある多田氏は、同車の試乗会で、86のオープンモデルについて、次のようにコメントした。
「(オープン仕様の)86のコンセプトモデルをモーターショーに何回か出しているのはご存じかと思うのですが、あれはほとんど発売直前まで技術的には検討が進んでいたのです」
「それを一緒にやっていたのが『マグナシュタイア』なのです。だから随分付き合いがあって、BMWもマグナシュタイアといろいろ取引があったので、じゃあ(スープラの生産は)ここにしようと」
マグナシュタイアとは、新型スープラとBMW Z4を生産するオーストリアの自動車製造業者だが、なんと86オープンは実際に生産を見据え、製造業者と話し合いが行われるところまで具体化していたのだ!
スープラはオープンモデルも見据えて設計されている!?
そうなると気になるのは、新型スープラにオープンモデルが設定されるかどうか。
ご存じのとおり新型スープラはクローズドボディの2ドアクーペだが、共同開発車のBMW Z4は2ドアオープン。両車の関係性を考えると、その可能性は低くないようにも思える。
この疑問に対して多田氏は「屋根を交換しようか? というような話は当然(BMW側と)してますよ(笑)」と冗談交じりに言いながら非常に興味深い事実を明らかにした。
「(車の)基本的なところを決める時、最低限、屋根を取り換えた時に守っていなければいけないポイントって実はあるんですよ。それは(スープラとZ4で)結構合わせているんです」
車の開発は当然、発売時点だけでなく、その先の展開まで考えて行われている。そうしたなかで、スープラは“技術的には”屋根を取っ払った状態に、つまりオープン化も見据えて設計されているというのだ。
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