平ボディに特化したパブコ近畿工場
「ここ数年間、近畿工場ではウイングやバンの生産を相模工場に移管しつつ、平ボディに特化した生産工場にすべく、工場のレイアウトを改善し、建屋や施設の強化など積極的に設備投資をしてきました。それと同時に品質保証体制の拡充ということを進めました。
新車の状態で不具合を最小にすることが一番大切ですが、平ボディは鉄を使うクルマが多いので、いかに錆びないボディをつくるかということから、サプライヤーさんと組んで事前に材料に電着塗装を施したりしています。
また、修理に際してもいかに迅速に対応するかが肝心ですので、今年中にサービス専用工場を設立する予定です。
では、なぜ近畿工場を平ボディに特化した専用工場にしようとしたかですが、2017年以降に立てたビジョンとして、まずパブコ全体としてウイングやバンのみならず、もっと競争力のある分野で強みを発揮しようという方針がありました。
ちなみに現在のパブコの生産ボリュームは、ウイングやバンが約9割、平ボディが約1割になります。幸いにして近畿工場は、パブコ近畿の時代から平ボディの製造に関して50年におよぶノウハウがありますから、これが大きな強みになります。
また、市場背景を考えると、物流事業者さんの経営スタイルが大きく変化している、そのいっぽうで平ボディを手がけている地方の架装メーカーが1社、2社とだんだん減ってきています。
そうした中で、旧来のままでは平ボディの今日的ニーズに応えられないのではないかと考えました。では、いま平ボディに求められているニーズとは何か。
それは高品質・短納期・即戦力といった要素ではないかと考え、近畿工場をそういったニーズに即した平ボディ専用工場にしようと考えたわけです」。
平ボディ復権の目玉となる「ザ・ブロック」
パブコでは、民需の平ボディを特殊平ボディと呼んでいるが、近畿工場ではこの特殊平ボディとともに、もう1つのエポックメークな平ボディの生産が準備されていた。それが大型平ボディ「ザ・ブロック」だ。
ザ・ブロックは、いわば大型平ボディのメーカー完成車というべき存在で、パブコが有する実績と先端技術を融合し、堅牢で安全性に優れた高品質ボディを実現したもの。
さらに必要充分な装備を標準で採用し、充実した仕様とすることでユーザーニーズに応える短納期を実現。加えて積み荷・条件・用途に合わせて最適な仕様になるよう豊富なオプションも用意し、即戦力となる大型平ボディを目指しているという。
「ザ・ブロックの開発の経緯ですが、民需の大型平ボディの納期が非常に長くかかっている、少しでも早くユーザーさんにクルマをお届けするにはどうしたらいいかという話がそもそもの始まりでした。
そこで、1つ1つ問題と課題を洗い出し、短納期につなげるには、どういった生産体制を組めばいいかを考えました。
一般的な民需の平ボディのスケジュールの場合、営業担当から仕様書を発行してもらって、部品の手配、内容の確認をして、必要な図面を作成し、そこでさらに部品を手配し、部品製作、組み立て~完成までの生産、納車という流れになりますが、パブコでは従来からこの工程にかかる日数をできるだけ短縮してきました。
業界の中でもかなり競争力のあるリードタイムだと思いますが、ザ・ブロックの場合、仕様があらかじめ決まっているので、部品の手配や図面の作成などが大幅に短縮できますから、この製造にかかる日数を従来比で3分の2程度に縮め、短納期を実現しようと考えています」。
ライン生産が可能なウイングやバンと異なり、平ボディの製作はかなり複雑で、手のかかる工程が多い。一般的な平ボディメーカーでは工程数は7つくらいだというが、パブコ近畿工場の場合、これを19工程まで細かく分割しているという。
すなわちシャシー改造、シャシー配線、前処理、搭載、鳥居部品製作、アオリ製作、横根太加工、土台製作、根太組、艤装1、特装、木工、艤装2、ボディ塗装、キャブ塗装、キャブ配線、仕上げ、補修塗装、検査などで、細かく工程を分けることで、短納期化を実現。さらに工程の自動化なども取り入れながら今後とも各工程の強化を図っていく考えだ。
「ただ、自動化といっても、平ボディにはどうしても手づくりの部分が多く、従業員のスキルを必要とします。たとえば溶接などは技量を要しますし、その育成には時間がかかります。この部分をどう改善できるかが今後の課題になっています」。
(後編に続く)
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