バイアスタイヤの弱点
ではラジアルタイヤの前の構造はどうなのか?
実は現在でも製造され、使用されています。「バイアスタイヤ」と呼ばれているタイヤで、特殊車両や一部の二輪車用などに設定がございます。
バイアスとは英語で「斜め」の意味。これもカーカスが回転方向に対して斜めに配置(プラス60度とマイナス60度でカーカスコードが交差する形)されている事に由来します。
ラジアルタイヤとの違いはこのカーカスコードの配置の違いです。
現在でも製造されているのは、それなりに利点があるからでして、まず製造工程が単純で安価に製造できます。
「安価に」というと「特殊車両のタイヤは高いよ?」とおっしゃる方々もいらっしゃると思いますが、アレはアレで特殊なゴムを使用したり、構造も強く造るのでそれなりの価格となります。
現在は乗用車用、トラック用ともにほぼラジアル化していますが、特殊車両用にバイアスタイヤが使われることが多い理由に、外部に対する強度が高いため、頑丈なタイヤを作ることができる、という点があげられます。
コードを折り重ねる構造であるため、コードの量が多くなり、結果的に衝撃に強いということです。
また支えるべき過重が増える場合は、充填する空気圧を高めるのですが、その空気圧に耐える構造にしなければならないためカーカスコードの量を増やします。増やせば筋繊維が増えるようなモノでタイヤ本体は強くなります。
折り重なったコードは衝撃には強いものの、その反面、コード同士が擦れて熱を持ちやすいという特徴もあります。熱(高温)はタイヤにとって天敵でもあります。
ラジアルタイヤへの移行
道路整備や車両の進化により移動速度は高速化してきました。タイヤに求められる性能もシビアになり、高過重・高回転に耐えられるタイヤとなると、必然的にラジアルタイヤへの移行となってまいります。
また、強度を高めるためにコードを増やしたバイアスタイヤは路面からの突き上げをモロに受け、コードが増えた分、タイヤ本体の重量も増してしまいます。その結果、乗り心地と燃費が悪化します。
バイアスタイヤの欠点である走行により発生する熱を克服するため、強い内部構造を持ちながら、しかもしなやかなラジアルタイヤへと進化したものと考えて良いと思います。
これは、ラジアル配置による少ないカーカスコードと、それを締め上げて補強する役目をするベルトにより、軽量かつ高剛性のタイヤができるからです。
ラジアルタイヤは製造が複雑でコストもかかるタイヤですが、乗り心地もよく長持ち。さらにより安全で低燃費です。
抵床化でタイヤが薄くなっても荷重を支え、しっかり仕事をするラジアルタイヤは、例えるならアイドルが俳優やお笑いまでこなすようなパーツなのでございます。
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