人生は頑張れば意外となんとかなる! 鋼材トレーラ乗りになっためぐみさんの素顔の自叙伝【後編】

初めてのトレーラでいきなりの大阪行き

 教習所の小さいトレーラに乗っただけで、12mの台車を引っ張ったこともないのに……。そもそもこんな大きいの、車庫から道路に出るまでの入り口でさえ「これ、曲がって出られるの?」って思うくらいでした。

 でも、今まで何もやる前から「女だから無理」って言われ続けてきた私には、このチャンスを逃したら「やっぱり女には無理か」って思われるのが嫌なのと、いきなりトレーラに乗るというチャンスを与えてくれたこの会社と上司の期待に応えたくて、「わかりました。行きます」の一言で、乗ったこともないトレーラを運転して大阪に行って荷物を降ろし、和歌山で帰りの荷物を積んで千葉に帰ってきました。

 たぶん私よりも大変だったのが一緒に行ってくれた先輩だったと思います。ちょっと休憩するにも客先に着いても、とにかく停まるたびに先に自分のトラックを停めて、私のバックを毎回毎回誘導してくれました。

 それから1カ月、その先輩と2台で、毎日同じ行程で長距離を走っていました。バックが全然上達しない私にイラつくこともなく、停まるたびに誘導してくれて、励ましてくれました。先輩一人ならどこでも停まれるのに、まともにバックできない私でも停まれる広いところを探してくれて、いろいろ大変だったと思います。

苦手だったバックも取材時には見事に一発で決めてくれました
苦手だったバックも取材時には見事に一発で決めてくれました

 トレーラに乗り始めて2カ月くらいはバックが思うように行かなくても、慣れればそのうちできるだろうと軽く考えていましたが、全然思うように上達しなくて、「トレーラのバック、一生できるようにならないのかも」と、心が折れかけていました。

 焦りと不安と自分へのいら立ちと、くじけているのが人に知られるのが恥ずかしくて、心はしょんぼりしていても、そのしょんぼり感は外には出さないように……。

 私をこの会社に誘ってくれた上司は「まだそんなに下手くそなのか」と厳しく指導してくれました。でも、一番身近にいて、一番私の下手くそっぷりを知っていて、むしろ一番イライラしてもしょうがない先輩は、何も言わずに「大丈夫だよ。そのうちできるようになるから」と、あーだこーだ言うこともなく、私のペースに合わせて見守ってくれていました。

 あの時、先輩がいろいろ言ってくる人だったら、言われたこともできないと自己嫌悪に陥って、もっとくじけていたと思います。

 努力と根性でなんとでもなると思っていたけど、トレーラに乗るようになって、それだけじゃなんともならないこともあると感じるようになっていました。でも心が折れたらもうそれで終わりになってしまうので、「なんとしてでもこの業界でプロになりたい!」って気持ちで、全力で食らいついて行っています(笑)。

 今の仕事はコイルを積んだり、鉄骨を積んだり、いろいろと鉄鋼関係が多いです。シート掛けをしたり、ガッチャを何丁も使ったり、台木をたくさん使ったり、10tの時と比べて使う道具自体が重いので、40歳近いオバちゃんな私には大変な時もたくさんありますが、どんなに大変でも、積んで養生し終わった時の「できたー!」という達成感が大好きです。

 仕事の流れですが、たとえば月曜日の朝、荷物を降ろしたら、茨城の鹿島に行ってコイルを積んで関西に行き、火曜日の朝に関西で荷物を降ろしたら、倉敷に行って荷物を積んで、といったことの繰り返しですね。もちろん行先は全国各地になりますが、週末だけ営業所のある千葉に戻ることが多いですね。

 家に帰るのは月に1回くらい。旦那さんと高校1年の娘が仲良く家を守ってくれています。ですから、ふだんはトラックのキャビンが私のマイホーム。ご飯はどうしてもコンビニの食事が多いですね、しかも走りながら食べる……。

 お風呂は宇佐美なんかのガソリンスタンドでオジさんたちに混じってシャワー待ちです。中にはカビだらけの汚いシャワー室がありますが、気にもなりませんから、完全にオッサン化している(笑)。

 こういう生活がまったく苦にならないし、腰痛なんかもないから、この仕事は私に向いているんでしょう。

 箱車にはまったく興味がなくて、平ボディが大好きなんです。とにかく大きい荷物を運びたい。うちの会社には13~14台のクルマがあって、1台だけ10t車がありますが、あとはトレーラなんです。

 その中に8軸トレーラが1台あるんですが、いつも憧れの目で見ています(笑)。まだまだ未熟者ですが、いつかは「平乗り」(平ボディ乗り)の道を究めたいですね。

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