チューブレスタイヤはパンクしても空気の漏れが緩やかで、整備工場まで自走できることがありますが、その反面、走行中にパンクに気づくのが難しくなっています。商用車専門のプロタイヤマン・ハマダユキオさんも自身の経験からパンクの早期発見の重要性を痛感したようです。
(画像はイメージです)
文・写真/ハマダユキオ
走行中に違和感に気づくのは難しい?
パンク……。空気入りタイヤが何らかの事象により空気圧を保持できなくなった状態。
最も多いのは異物を踏み抜いてタイヤに風穴が空き、空気圧が低下するもの。空気圧が低下するスピードも、急激に減る場合や数日に渡って減る場合などがあります。
チューブレスタイヤはその構造上、異物を踏み抜いても穴が塞がっていれば空気の漏れ方が緩やかです。そのためパンクに気づいていれば整備工場やタイヤ屋まで自走でき、修理することも可能な事がメリットです。
そんなタイヤのパンクですが、私自身の運転歴と業界歴を足しても自分のクルマがパンクした回数は数える程度です。しかもタイヤを何気に見て「何か踏んでパンクしてる?」って感じなので、走行中の違和感でパンクに気づくってのはほぼ体験が無かったんですね。
過去に一度だけサーキットで四輪車を運転中に前のクルマがクラッシュしたことがあります。その破片を踏んだらしく「ヤケにリアのスライドが止まらないなぁ」なんて思ってタイヤを見ると、異物(パーツ破片)貫通によるパンク。
幸い練習用のタイヤでしたので、その流れで本番用のタイヤに履き替え問題はありませんでした。
二輪車で実際にパンクを体験
つい先日、二輪車でのリアパンクの体験をしました。私は250ccのバイクで片道35km程度の通勤をしていますが、走行中の一般道路でのパンクは初でした。
仕事終わりで会社を出て数kmの地点でリアタイヤが何かを弾いた音がして、その後定期的な路面を叩く音が聞こえたんですね。「何か踏んだな」とは思いましたがタイヤの溝に小さい石でも挟まったのかと思っていました。
やがてその定期的な路面を叩く打音が消えたので噛み込んた石が外れて飛んだのかと思ってたんですね。
そして通勤路の約半分を過ぎた頃からなんとなく「後ろが滑る感じがするなぁ~」って思っていたんですが、それが段々とハッキリしてきます。さらに信号待ちではいつもは両足は踵まで着かないのですが、膝を曲げてもベッタリ着くようになったんですね。
そして直進、特に発進時の不安定な違和感。
恐る恐る信号待ちでリアタイヤを見れば明らかにパンクです。見た事ないタイヤサイドのカタチで、これからガレ場を走るオフロード車のタイヤのような接地状態です。
この時点で家まで約10kmあります。250ccでタイヤサイズが140/70R17で、空気の量もそんなに多くないのですが、走行中にリアの違和感が増していくスピードがイメージより早く、完全に大気開放されています。
「ヤバいなぁ……、家まで保つかなぁ? 最後はエクストリーム系みたいにホイールで走らないかんかなぁ」なんて考える始末。最短距離を走るか、少し遠回りしてガソリンスタンドか系列店でエア補充するか? 超ギャンブルです。
先ず系列店ですが、私が帰宅しているって事は、当然何らかの事情がなければ店が開いているワケがありません。停車してメット脱いで電話する間にもエアはじゃんじゃん抜けていくワケで……、却下です。
ガソリンスタンドでエア補充かパンク修理。この場所から家まで通常の通勤路ではガソリンスタンドは無く、ガソリンスタンドに行くには信号、カーブの多い道を遠回りする必要があります。また、なんとか辿り着いてもそこはセルフスタンドなのでエアを補充できる設備があるのか?
それから応急的なパンク修理として、タイヤの外面から部材を刺して穴を塞ぐ修理。これをやってもらえる所があるでしょうか? 修理部材があれば自分でできるのに(笑)。でもタイヤの内部の点検をしたいので、その案も却下!
結局、家まで約10kmなので、最短距離でなるべく直線的な走行で帰る事を決意しました。
残り数km付近で妙な振動がリアから伝わるようになりましたが、なんとか完全にエアが抜け切る前に帰宅できました。タイヤがかなりフラットな状態で走行したので、タイヤ内部の損傷が心配です。
翌日はクルマで通勤することになるので、一旦車庫の手前でバイクを停めエンジンを切り、クルマを出してバイクを車庫の奥へ。その時バイクを手で押して、若干上り傾斜の車庫の奥まで移動しました。
わずか数メートルですが、低圧になったタイヤは転がり抵抗も大きく尋常じゃない重さでしたよ。リアブレーキが引きずってるのかと思うくらいです。
翌日、リアタイヤを車両から外してクルマに積み、会社にてパンク修理を行なうことにしました。タイヤ内面を点検するもダメージは無かったので、そのまま内面修理し、無事完了。タイヤが規定圧のエアを保持しているのはなんと素晴らしい事か、改めて感じましたね(笑)。