モノの見方や感じ方は人それぞれだろうが、実際問題として「ポルシェ=経済的成功の象徴」というのは確実にある。
要するにポルシェというクルマは、スポーツカーであると同時に「金持ちであることを表す記号」としても広く認知されている。
だが、ポルシェ=高額というのはあくまでも新車や正規ディーラーで売っているような高年式中古車についての話でしかない。
中古車販売店を覗いてみると、車両価格80万円ぐらいの初代ボクスターや、同じく車両価格190万円程度の水冷の996型911が数多く展示されている。
これらの激安ポルシェは、買っても大丈夫なのか? それとも手を出してはいけない禁断の泥沼なのか? 中古車事情に詳しい伊達軍曹が解説する。
文/伊達軍曹
写真/ボルシェ
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車両価格80万円! 中古の初代ボクスターは買っても維持できる?
80万円といえば先代ホンダN-BOXの中古車ぐらいの価格であり、190万円というのは、トヨタカローラフィールダーの低走行中古車を買うぐらいの予算。
ポルシェというのは、中古であれば「その程度」の予算でも、買おうと思えば買えるものなのだ。
しかし「買える」というのと「無事に維持できる」というのは、まったくの別問題である。
車両価格80万円で初代ポルシェボクスターを買ったはいいが、「その後の修理代で100万円かかりました」というのではまったく意味がない。
ということで以下、「格安予算で狙える中古ポルシェの現実」について、いろいろと検討してみることにしよう。
格安予算で狙えるポルシェといえば、まず最右翼となるのは初代ポルシェボクスター。水冷式の水平対向6気筒エンジンをミッドにマウントして後輪を駆動する、電動開閉式のソフトトップを備えたオープン2シーターだ。
発売は1996年で、当初のパワートレインは最高出力204psの2.5L水平対向6気筒に5速MTまたは5速ATを組み合わせている。
1999年10月発売の2000年モデルから標準車のエンジンは最高出力220psの2.7Lとなり、同時に3.2L+6速MTまたは5速ATの「ボクスターS」を追加。その後、さまざまな改良を重ねながら2004年12月まで販売された。
で、そんな初代ボクスターの一部モデルが「車両80万から120万円ぐらい」という、ほとんどホンダN-BOXの中古車を買うのと似たような予算で狙えてしまうのだ。
このあたりの価格帯に入る初代ボクスターに、年式やグレードなどの傾向は特にない。いや、「前期型ベースグレードのティプトロニックS(5速AT)が安い」という基本的な傾向はあるのだが、しかし2.7Lの後期型ベースグレードや3.2LのボクスターSが100万円前後で売られていることも、決して珍しくはないのである。
だが結論として「車両80万から120万円ぐらいのゾーン」にある初代ボクスターは、基本的にはスルー推奨だ。
もちろん物事に「絶対」というのはないため、なかには「車両価格90万円なのに中身はサイコー!」みたいな初代ボクスターが存在する可能性も0%ではないだろう。
だが筆者のこれまでのさまざまな取材によれば、このあたりの激安価格帯の初代ボクスターは、正直かなりボロいという場合が大半なのだ。
外装はあちこちがくすみ、内装のレザーや樹脂部品にはスレやキズが目立つだけでなく、車内全体に謎の臭気がこもっている……的な状態である。
そして内外装がボロいだけならまだいい(?)が、そういったボロい系初代ボクスターのエンジンはこれまた、たいていの場合、「謎のうねり音」を発していたりする。
謎のうねり音の原因は、エンジンをバラしてみないことにはわからない。インターミディエイトシャフトのベアリングか?
あるいは点火系が腐っているのか? はたまたシリンダー内部にキズが入っているのか? あるいはそのほかか?
だがいずれにせよ、そういった個体には近寄らないのが君子の心得である。もしも無理やり買ったとしても早晩、購入価格と同程度の修理代が必要となるか、もしくは二束三文で手放すハメになる可能性が大だからだ。
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