2007年12月にデビューしたR35GT-Rは登場から13年、現在も生産が続けられている現行モデルとなるが、2007年~2008年あたりの初期モデルの中古車相場を見ると、300万円台後半から400万円台で販売されている。
R35GT-Rが300万円台後半から買える、というのはある意味夢のような話。2007年12月当時の新車価格は777万~834万7500円だったので、13年あまり経って半額近くまで下がったことになる。
「GT-Rが300万円台後半! 今だったら買えるかも……」と、思う人も多いのではないだろうか。
そこで、300万円台後半から買えるR35GT-Rは買っても大丈夫なのか? 中古車相場からウイークポイント、購入の際に気を付けたいチェックポイントなどをGT-Rに強い専門店に徹底取材した。
文/伊達軍曹
写真/伊達軍曹 日産自動車
【画像ギャラリー】300万円台から狙える初期型GT-R 2007年12月デビュー当時の写真をチェック!
300万円台後半からの中古GT-Rはおっかない?
2007年12月、まずは車両本体価格777万~834万7500円にて堂々デビューしたR35型日産 GT-R。そのモデル概要やヒストリー、パフォーマンスに関しては、今さら改めて触れる必要もないだろう。
注目すべきは「中古車相場」である。
ニュルブルクリンク北コースで当時の最速ラップタイムを記録した「R35GT-R NISMO」の中古車価格はおおむね1400万円以上となっており、2017年モデル以降の「Black Edition」、「Premium Edition」あたりも軒並み1000万円オーバーとなる。
しかし2007年式から2008年式あたりの初期型であれば、300万円台後半から400万円台半ばぐらいという「ちょっと頑張れば手が届かないこともない車両価格」で販売されているのだ。
ならば今こそ我もGT-Rオーナーにならん……と胸踊るわけだが、それと同時に「そういった底値系の中古GT-Rはおっかないんじゃないか?(=買ってもすぐに壊れて、その修理に大金がかかるのではないか?)」とビビる、小心な自分もいる。
300万円台後半から400万円台ぐらいの初期型GT-Rの中古車の「実際のところ」はどうなのか? それを知るため、日産GT-Rを中心とするスポーツカー専門店GTNET埼玉を訪ねた。
――ということでGTNET 埼玉の川本雄一店長、いきなり結論からお尋ねしますが、400万円台ぐらいの中古GT-Rって、買っても大丈夫なものなんでしょうか?
川本店長 クルマというのは機械製品ですし、中古車というのは「中古の機械製品」です。それゆえ「絶対にこうですよ」みたいな言い方はできません。
しかし基本的には、前期型のGT-Rというのはさほど心配せずご購入いただける中古車だと思っています。
――そうなんですか? GT-Rって、いかにもあちこちの作りが繊細そうですし、部品は高いし、一時はDCT(デュアルクラッチトランスミッション)が抜けちゃう的なトラブルが続発したなんて話も聞いているので、なかなかそうは思えないのですが?
川本店長 もちろん、前期型のGT-Rといえばもはや10年以上前のクルマですので、「10年以上前のクルマなりの劣化箇所」というのは当然あります。
――ですよね。
川本店長 しかし「GT-R特有のトラブルや弱点」については、もはや出尽くしているというか、10年以上にわたってさまざまな知見が貯まっていますので、実はあんまり問題にならないのですよ。
今流通している前期型GT-Rのほとんどは、いわゆる定番的な弱点についてはほぼ必ず、一度は手が入っているはずですから。
――R35型GT-R特有の弱点って、例えばどういった箇所なんですか?
川本店長 いろいろありますが、有名なところでは「DCTが奇数ギア(1速、3速、5速)にしか入らなくなる」というトラブルがありましたね。
あとはフライホイールハウジングのガタは5万kmほど走ると必ず発生します。そのほかではエアコンのスイッチがダメになり、それに伴ってオーディオに不具合が出たりもします。
――ふむう。
川本店長 そしてメーター回りのLEDがダメになりますし、マルチファンクションディスプレイが赤茶色に焼けてきてしまうのもお約束です。
さらには、BOSEサウンドシステムが付いている個体に関しては、そのスピーカーが鳴らなくなるというトラブルもありますね。
――で、そういった定番トラブルというのはたいていの場合……?
川本店長 たいていの前期型がすでに経験しています。そのため、一度は直しているんですよ。
――なるほど。まぁ「ずいぶん昔に直しました」という個体だとまたそこが壊れるかもしれませんが、「比較的直近に直しました」という個体であれば、そのポイントに関しては逆に安心できる……ということですね?
川本店長 おっしゃるとおりです。例えばあちらに置いてある、下取りで入ってきた走行15万kmの前期型ですが、下取った際にはすでにDCTに不具合が出ていて、例によって奇数段にしか入らない状態でした。
そして当然、そこは弊社にてきっちり直しましたので、DCTに関しては、この走行15万kmの前期型GT-Rは間違いなくご安心いただけます。
――ううむ、そうなんですね。あとお話を聞いていて思ったのは、クルマとしての基幹となる部分のウィークポイントはDCTとフライホイールハウジングぐらいで、あとはエアコンやらマルチファンクションディスプレイやらという、どうでもいいと言っては語弊がありますが、まぁ「基幹」とは言い難い箇所が弱点の中心なんですか?
川本 そうなんですよ。GT-Rはエンジン本体やその補機類は非常に頑丈ですし、ゴムブッシュもすぐにちぎれたりはしません。
もちろん、先ほど申し上げたとおり「10年以上前のクルマなりの劣化箇所」というのは当然ありますが、それでも「そう簡単に壊れるクルマではない」とは言えると思います。
――なるほど。であるならば、御社で400万円台半ばぐらいの前期型GT-Rを見つけて、カツカツのフルローンを組めば、私も明日からGT-Rオーナーになれますね!
川本店長 うーん。「前期型であってもそう簡単に壊れるわけではない」というのは事実ですが、決して「お金がかからないクルマ」ではありませんので、あまりにもカツカツの経済状態で買われるのは、いかがなものかと……。
――そ、そうなんですか?
川本店長 そうなんですよ。まず例えばタイヤは、サーキットへは行かずに街乗り中心であっても2万kmぐらいで必ず終わってしまいますので、そのたびに交換しなければなりません。
――タイヤ交換するぐらいぐらいのおカネは持ってます~。
川本店長 しかしですね、GT-R専用タイヤはディーラーさんで交換すると50万円ほどかかります。
弊社ではディーラーさんとまったく同じタイヤをもっと安くご提供することができますが、それでも4輪で30万円台のご予算になりますし……。
――あ、そうなんですか。安くても30万円台ですか……。
川本店長 そうなんですよ。あとは4万~5万kmごとぐらいに必要となるブレーキパッド交換も、社外品を使っても工賃込みで20万円ぐらいにはなってしまいます。
――げっ、高っ。
川本店長 ちなみにディーラーさんで純正パッドに交換なさる場合は、100万円近くになると聞いております。
――げげっ。
川本店長 あとは先ほどお伝えしたフライホイールハウジングのガタですが、これも5万kmぐらいで必ず発生しますので、それの修理というか交換に20万円ほどかかってしまいます。
――げげげっ……って、「げ」はもういいですね。失礼しました。まぁそのあたりはさすがに高精度な高性能車ということで、覚悟しておくしかないのでしょうね。
川本店長 おっしゃるとおりかと思います。
――ところで、同じ400万円台ぐらいの前期型GT-Rでも「良し悪し」はあると思うのですが、なるべくいい感じの個体を選ぶためには、どこをどう見ればいいでしょうか?
川本店長 まずは「GT-Rのメンテナンスに精通している販売店で買う」というのが大前提になると思います。
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