「“燃費とパワーが両立しない”なんていうのは真っ赤なウソです。そんなエンジンは燃料を大量に燃やしてパワーを出しているだけだから燃費が悪い出来損ないです。
本来パワーのあるエンジンというのは燃料を最低限だけ効率よく爆発させているからパワーが出るので、パワーと燃費は両立するのです。世の中で起きる爆発事故って、そのガスや液体が薄い時に起きるでしょ」とは、日産GT-Rの元開発責任者、水野和敏さんがよくおっしゃる言葉だ。
かつて、スポーティな車のエンジンといえば、燃費リッター10km未満が当たり前だった。しかし、今や性能を売りにするスポーツ車でも、望外に燃費が良いスポーツエンジンを搭載するモデルは少なくない。
本記事で紹介する5台の車に載るエンジンは、まさに性能と望外な燃費の良さを両立した“二刀流”スポーツエンジンだ。
文:永田恵一/写真:編集部
国産、自然吸気のスポーツエンジンなら……
■マツダ 1.5L、2L NAエンジン/ロードスター
ロードスターの1.5L、NAエンジンは最高出力132馬力/最大トルク15.5kgmと、速さ自体は、ある意味ロードスターらしく大したものではないが、レッドゾーンの7500回転まで気持ちいい共鳴音を奏でながら淀みなく回る点など、まごうかたなきスポーツエンジンである。
加えて太い低速トルクや扱いやすいクラッチフィールも含め、常用域でも非常に扱いやすい。
さらに直噴エンジンということで、アイドリングストップなしで16.8km/LというJC08モード燃費以上に、実用燃費も高速巡航なら20km/L近く、郊外の道ならJC08モード程度と、運転する楽しさを考えれば文句ない。
また、RFの2L、NAエンジンも実用燃費はソフトトップの1km/L落ちといったところでさほど変わらず、フィーリングも排気量が増えていながら高回転域の回り方など1.5L、NAに近いうえ、マイナーチェンジで大幅にパワーアップされており、このエンジンのソフトトップへの搭載も熱望する。
国産ターボ勢で燃費も良い3台
■ホンダ 2Lターボエンジン/シビックタイプR
FF車のニュル最速レコードホルダーだけに、全域で溢れるばかりのパワーと太いトルク感。これだけパワーがあると公道では動力性能を余裕と感じられ「金持ち喧嘩せず」のように飛ばす気がなくなるほど。
高回転まで回したフィーリングもVTECターボということで、ターボエンジンらしい爆発的な中間トルクとVTECらしい高回転の伸びを備えており、エンジンを楽しめる。
燃費も高速巡航なら16km/L、郊外なら12km/Lほどと、これは筆者が乗っている前期型のトヨタ 86と同等。
86も燃費のいいスポーツカーだと思うが、ロードスターの絶対値やシビックタイプRの速さやユーティリティの前では完敗なくらい、シビックタイプRは燃費も望外にいい。
■スバル 2Lターボエンジン/WRX S4
いずれはWRX STIに積まれ、30年近く頑張ったEJ20型エンジンの後継となるWRX S4などに搭載されるFA20エンジン。
このエンジンは車体への搭載要件もありストロークを稼げず、低速トルクの細さが弱点だったEJエンジンとは対照的に86mmという標準的なストロークを持つ。加えて、直噴ターボゆえ中低速トルクが太いので運転しやすく、高回転の爆発的な伸びこそないものの実戦的に速い。
また、エンジンの回転フィールもEJ20に対し劇的にスムースだ。スポーツモデルでは嫌われがちなCVTもアクセル操作にダイレクトな上、多段ATのようにも変速するなど、完成度は高い。
さらに、余裕ある動力性能、アイサイトに加え、高速巡航なら回転数を下げられるCVTの強みもあり、4WDながら燃費もシビックタイプRに近い15km/Lほどと望外なくらいで、総合的なGT性能も優秀だ。
つまり、今買う新車に求めたい要素が高次元でバランスされており、登場から4年が経ちながら堅実に売れているのもよくわかる。
■スズキ 1.4Lターボエンジン/スイフトスポーツ
140馬力という最高出力はそれほどでもないが、トルクは2.4L級であるため、日本車のコンパクトホットハッチでは車重1t切りという軽さもありスペック以上の圧倒的な速さを誇る。
さらに、ターボラグは皆無でアクセルを含むと即座にトルクが立ち上がるので、どこでも速いというのも魅力ではある。
その反面レッドゾーンが6000回転と低いのも含め「速いけど面白いエンジンではない」というのも事実。
そういった性格のエンジンのためスイフトスポーツ本来のキャラクターとは違う感じもあるが、6ATとの相性が非常にいいので、ATをGTカー的に使うのも向く(停止までは対応しないがアダプティブクルーズコントロールも設定される)。
燃費もロードスターの1.5L、NAエンジンと同等と文句ない。
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