2017年にはシビックとハイラックス、今後2018年から2019年にかけてはカローラハッチバック、RAV4、CR-Vなど日本で一度消滅した車たちが今、続々復活を迎えようとしている。なぜ今になって、国内で一度廃止した車種をわざわざ復活させるのか。“復活車”が次々と登場する背景には「建て前」と「本音」の理由がある。
文:渡辺陽一郎
写真:編集部、TOYOTA
復活車の背景にある「建て前」
シビックやハイラックスの商品企画担当者や開発者から聞き出せるのは、「建て前」と考えていいだろう。
両車ともに「やむを得ない事情で国内販売を中断したが、スグにでも再開したいと考えていた。しかしいろいろな難題が次々に生じて、販売の再開が遅れてしまった」と言う。
8代目シビックが国内販売を終えたのは2010年で、9代目は売られず、10代目が2017年に復活。7年ぶりの国内販売再開となった。ハイラックスは、13年ぶりの復活だ。いろいろな難題が生じて復活が遅れたというが、不在の期間が長すぎる。
そして、ハイラックスは、国内で売らなくなった7代目でボディを大型化した。ピックアップのハイラックス、ミニバンのイノーバ、SUVのフォーチュナーを、同じプラットフォームで開発する「IMVプロジェクト」を立ち上げたからだ。
これらの車種はタイ/インドネシア/南アフリカ/アルゼンチンで生産され、表現を変えれば4ナンバーサイズを重視する日本のニーズよりも、大柄なボディを求める新興国の需要を優先させたことになる。
そのために現在国内で売られるハイラックスも、タイ製の輸入車だ。全長は5335mm、最小回転半径は6.4mときわめて大回りだ。
販売目標は1年間に2000台だから、1か月平均に換算すると167台。プリウスは1か月平均で1万3400台が登録されたから(2017年暦年平均)、ハイラックスの比率はわずか1.2%に留まる。
シビックはタイプRも含めた1か月あたりの計画台数が2000台だから、ハイラックスに比べると圧倒的に多く、オデッセイの販売実績と同程度になる。
それでも同じホンダのフィットは1か月平均で8160台、N-BOXは1万8200台を販売したから、この2車種に比べればシビックは大幅に少ない。
「スグにでも販売を再開したいと考えていた」車種としては、販売の取り組み方、実績ともに、いまひとつ伸び悩む。
復活車を売りたいメーカーの「本音」
そこで本音の話に移る。シビック、ハイラックス、CR-V、カローラハッチバックといった「復活車種」のすべてに共通するのは、趣味性の強い価格が高めの車であることだ。これは今の売れ筋傾向に逆行している。
今の販売上位車種は、ホンダであればN-BOX、フィット、フリード。トヨタならプリウス、アクア、シエンタという具合に趣味性の弱い実用車だ。価格も全般的に低い。「復活車種」の背景には、この売れ筋動向を覆す狙いがある。
今は新車として売られる車の35%が軽自動車で、日常生活のツールになった。従って実用的で価格の安い車種が売れ筋になるのは当たり前だが、メーカーや販売会社は困る。
安価な車種が数多く売れたら儲からず、商品のイメージが実用指向になると、乗り替える周期も伸びてしまう。
メーカーは趣味性の強い価格が高い車を、比較的短期間で乗り替えて欲しいから、シビックやハイラックスを復活させた。
過去を振り返ると、30年近く前のバブル経済期には、日産 シーマのような高価格車も含めて、短期間で乗り替えるユーザーが多く、国内販売台数は今の約1.5倍に達していた。
乗用車の平均車齢も1990年の4.6年に対し、今は8.5年まで伸びた。平均使用年数も、1990年の9.3年に対し、今は13年に達する。
車が実用指向になって耐久性も高まれば、乗り替える周期が長くなって、売れ行きが下がる。メーカーはこの状況を、かつて日本で売られていた海外専用車で打開したいと考えている。
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