そんなにたくさん売れたわけじゃない。でも、何年経ってもみんなが覚えている……そんなクルマを取り上げるこの企画。今回は、当時のホンダらしさ全開!! ありそうでなかった“ワゴンの高級車”、ホンダ アヴァンシアが登場!!
※本稿は2024年10月のものです
文:小沢コージ/写真:茂呂幸正
初出:『ベストカー』2024年11月10日号
■アコードエアロデッキの再来か?
つくづくこの時代のホンダは面白くも泣ける。周囲が「ホンダらしさ」を期待するから、ついほかにないもの、時代を創るものを狙っては失敗ばかり。ミニバンのストリームは当たったけどキャパに軽のザッツと連続ハズシ。どっちも面白かったんだけどね。
そして1999年、懲りずに生み出されたのがアヴァンシア。不調でも4年作られたのが凄いし、狙いはユニーク。要はそれまでありそうでなかった攻めたワゴンの高級車なのだ。
バブル期の美しすぎるワゴン、アコードエアロデッキの再来を狙ったかは定かではないが、それまでの高級車=セダンの常識を見事に覆した。
ステーションワゴンは見ようによっては空力的にカッコよく、人も荷物も積めて、ボディをしっかり作れば走りも悪くない。問題は「後ろがハッチだと貨物車みたい」の呪縛から脱却できるかだ。
結果はほぼ4年間でトータル販売2万台強と惨敗だったが、意欲的デザインがモリモリに盛り込まれた。まず4ドアクラブデッキもしくはアーチキャビンフォルムと呼ぶ新感覚エクステリアだ。
レガシィのようなエッジの効いたものではなく、ノッペリフェイスに仏壇のごとき段付きのリア。ほかにない優美さで魅せたが正直インパクトは薄かった。
内装もチャレンジング。インパネはかつてないフラットパネルでホンダ初のゲート式インパネシフトに5速AT、IHCC(インテリジェントハイウェイクルーズコントロール)も導入。
面白いのはワゴンボディにあえて独特なリムジンコンセプトを導入したこと。
シートは本革も選べるが、今回借りたVタイプは質感の高い合成皮革カブロンとファブリックのコンビタイプ。表皮にシボが入りタッチよろしく、座面とサイドで硬さの違う厚みあるウレタンが配され、座り心地も上々。2000年式の距離8.6万kmだったがヘタりも少なく表皮もキレイ。
なにより全長4.7mと大柄なのでリアスペースは広大で、前席は後席に移動しやすいウォークスルー式。さらに後席専用のBピラーのエアコン吹き出し口や天井ボックス、Vタイプは上質なウッド調パネルや背もたれに大型シートバックグリップが奢られた。
またオプションのGパッケージを付けると後席はリクライニングとスライド連動の2ウェイラウンジシートになり、センターは座面格納式センターテーブル付き。
ほか運転席に4ウェイパワーシートや前後ともにカップホルダー付きの大型アームレストが付けられ、まさに後席ダンナ仕様。今乗ってもオモシロ快適だ。
【画像ギャラリー】滑らかでパワフルな3L・V6!! 4ドアクラブデッキが懐かしいホンダ アヴァンシア(32枚)画像ギャラリー■オデッセイ譲りの3L・V6がイイ!
走りもベースは4代目インスパイアなのでボディはそれなりにしっかり。なによりも150psの2.3L直4もいいが、オデッセイ譲りの215psの3L・V6がイイ。
今回もチョイ乗りしてみたが、下から厚みあるトルクが湧き出るだけでなく、ホンダエンジンらしく回しても爽快。このワゴン&リムジンコンセプトに組み合わせるなら絶対コイツだ。
ただちょっと悩みが、2001年のマイナーチェンジ後に追加されたスポーツグレードのヌーベルバーグ。2.3Lエンジン車限定で、車高が15mm低い硬めのスポーツサスペンションに16インチアルミ装着。微妙にスポーティだが途中の趣旨変えは悩ましい。小沢はやはり前期の3Lイチオシで!
【画像ギャラリー】滑らかでパワフルな3L・V6!! 4ドアクラブデッキが懐かしいホンダ アヴァンシア(32枚)画像ギャラリー
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